ストーマケア・ナーシング メニュー

日常生活指導のポイント
入浴

2015年5月公開

入浴は身体の清潔保持や疲労の回復、リラクゼーション効果などがあり、日常生活に欠かせないものと考えている人が多い。

ストーマ造設によって大きく入浴習慣が変わることがないように、また誤った知識を持つことがないように支援することが重要となる。

ストーマ造設前の入浴の習慣を維持することが基本である。高齢になると毎日入浴しない人もいるため、装具交換日と入浴が同時にできるとよい。小児は発汗量が多いため毎日入浴し、清潔行動の習慣も身につける。

ストーマ造設後、「装具が剥がれそう」といったイメージや「パウチに水が入ってしまわないか」という誤った知識のために、入浴を避ける患者がいる。また、浴槽に入らなくなるなど、入浴スタイルを変えてしまう患者もいる。

ストーマ造設直後は、未知の体験に対する患者の不安を察知し、以前と比べて不便な点はあるかもしれないが、工夫することで快適に入浴できることを伝える。入院中に入浴体験をケア支援の一つとして必ず組み入れる。

排便が規則的な場合は、装具を剥がして浴槽に入ることができる。ただし、公共の浴場では、必ず装具を装着して入浴する。

入浴によって装具が剥がれるリスクが高い場合は、入浴用シート(図1)を活用する。

入浴用シート

図1 入浴用シート

入浴直前に排泄物やガスを破棄してからストーマ袋を折りたたみテープで留める

入浴用シート

入浴シート(有限会社ピースケア)

洗浄剤は弱酸性のものが望ましいが、よく泡立てれば普段から使い慣れている洗浄剤でよい。ストーマ周囲の皮膚だけ特別な洗浄剤を用いる必要はまったくない。昔ながらに固形石鹸を愛用している人もいる。いずれの洗浄剤でも洗浄成分が皮膚に残らないよう、十分に洗い流す。

「よく洗う」と説明すると「ゴシゴシ擦る」ととらえる人もいるため、「ストーマ周囲皮膚は常に閉鎖環境にある脆い状態であることから角質層のバリア機能の維持が重要であり、皮膚の清潔保持と外的刺激を最小限にとどめるケア」を伝える。

入浴中の順序は、以下のようになる。

(装具交換日の場合)交換する装具一式およびストーマ周囲皮膚を拭う専用のタオルやガーゼ等を準備する。

面板の外周が剥がれ浮いた箇所がないか確認する。

入浴前にストーマ袋内の排泄物と貯留したガスをしっかりと出しきり、排出口をきれいに拭き取る。

浴槽でストーマ袋が浮かないようテープやクリップ等を用いて、ストーマ袋を小さく折りたたみまとめる(図2)。

ストーマ袋を小さく折りたたみまとめる方法

図2 ストーマ袋を小さく折りたたみまとめる方法

浴室または脱衣室の浴室扉の近くに、封ができる大きさのゴミ袋を置く。剥がした装具を速やかに破棄し封ができる状態に設置する。

身体を洗い、浴槽で温まり、浴室を出る直前に装具を剥がしてストーマ周囲皮膚を洗浄する。

ストーマ周囲皮膚を擦らないように拭き取り、ストーマをガーゼ等で押さえながら、まず下着(パンツ)を着用し、ビニール袋を下着に挟んで排泄物をキャッチするとよい。

装具を装着する。

*不用意に排泄物が出ると患者は慌てて装具を装着してしまいがちである。十分に皮膚を乾かさないと、装具装着位置がずれるなどの原因となる。

ワンポイント
アドバイス

退院前に自宅の浴室・脱衣室の状況を聞き取り、患者とともに入浴の一連の流れを確認しながら、交換する装具の置き場所を決めるなどのアドバイスをする。患者がストーマを保有しながら生活するイメージが持て、入浴に対する不安の軽減や社会復帰意欲を高めることにつながる。

高齢者単体の世帯が増加しており、在宅では訪問入浴を受ける場合もある。入浴日に合わせて装具交換が可能となるようにストーマ装具を選択することもある。

状況や状態によっては、やむを得ず入浴できない場合の皮膚の洗浄方法も指導する。水を要さず拭き取りできる洗浄剤などが活用できる(図3)。

リモイスクレンズ(アルケア株式会社)

図3 リモイスクレンズ(アルケア株式会社)

ポンプ、チューブ、ハンディタイプがある