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ストーマのセルフケア
[ストーマ周囲のスキンケア]
A.皮膚の構造と機能

2015年5月公開

皮膚の構造(図1)

皮膚は人体最大の臓器であり、皮下脂肪組織を加えると体重の15~16%を占めている。

表皮、真皮、皮下組織そして皮膚付属器(毛器管、汗腺、脂腺、爪)の4つの組織から構成されている。

図1 皮膚の構造

図1 皮膚の構造

1.表皮の構造(図2)

表皮は基底層、有棘層、顆粒層、角質層の4種の表皮細胞で構成されている。

1)基底層

表皮の一番下層にある。真皮とは基底膜で隔てられているが、真皮の毛細血管から酸素や栄養素を補給し分裂をする。表皮細胞の中で唯一細胞分裂能がある。

2)有棘層

5~10層からなり、表皮の大部分を占める。有棘細胞上層でセラミドが合成される。

3)顆粒層

2~3層の扁平な細胞からなる。脂質に富んだ内容物を放出して、表皮細胞由来の角質細胞間脂質となる。紫外線を吸収して体内を保護する役割がある。

4)角質層(角層)

人体の最外層の細胞であり、15~25層からなり、手掌や足底では200層以上になる。

手洗いや入浴、運動などにより毎日剥がれる。

角質細胞はヒトの生体内外の境界としての重要な役割がある。1つは外部からの化学物質や紫外線、細菌などの侵入を防ぐ役割であり、もう1つは体内からの水分などの体液成分などが体外へ逃げるのを防ぐ役割である。これを角質層のバリア機能と呼ぶ。

図2 表皮の構造

図2 表皮の構造

2.真皮の構造(図3)

真皮は膠原繊維(コラーゲンなど)を多量に含む組織であり、厚さは約1.8㎜である。

乳頭層、乳頭下層、網状層の3層から構成される。

1)乳頭層

表皮突起間に食い込む部分であり、毛細血管、知覚神経末端、細胞成分に富んでいる。

2)乳頭下層

乳頭層直下の部分。

3)網状層

真皮の大部分を占め繊維成分が多い。

図3 真皮の構造

図3 真皮の構造

坂井建雄,河原克雅編:人体の正常構造と機能.日本医事新報社,東京,2008.を参考に作成

3.皮下組織(図4)

真皮と筋肉、骨格との間にあり、大部分は脂肪組織で占められている。

この皮下脂肪により体温維持やエネルギー代謝といった重要な働きがなされる。また、外力に対しクッションの役割もある。

図4 皮下組織の構造

図4 皮下組織の構造

坂井建雄,河原克雅編:人体の正常構造と機能.日本医事新報社,東京,2008.を参考に作成

4.皮膚付属器(図5)

1)毛器管

毛とそれを取り囲む毛包から形成される。口唇、手、足底、粘膜を除く全身に分布する。

毛包にはアポクリン汗腺、脂腺が開口している。

2)汗腺

エクリン汗腺

全身にくまなく分布しており、真皮と皮下組織の境から発している。

交感神経支配を受けている。

汗本体のpHは5.7~6.5の弱酸性で皮膚表面を弱酸性に保ち、細菌の繁殖を抑制する。

アポクリン汗腺

腋窩、乳頭、外陰部、肛門周囲といった限られた部位のみに存在する。弱アルカリ性であるため、細菌感染を起こしやすい傾向にある。

3)皮脂腺

毛孔を経て皮脂を表皮に分泌する。この皮脂の主成分は(ワックスエステル、トリグリセリド、スクワレン)で、表皮の皮脂となって、皮脂膜を形成する。

4)爪

表皮の角質層が特に硬く特殊に変形してできたもの。

図5 皮膚附属器

図5 皮膚付属器

皮膚の機能

1.角質層のバリア機能(図6)

1)水分喪失防止

角質層は角質細胞がブロックを積み上げたように並んでいる。そのブロックの間を埋めているのが顆粒細胞由来の角質細胞間脂質である。

角質細胞間脂質はセラミド、飽和脂肪酸、コレステロールが主成分である。この角質細胞間脂質と皮膚表面に分泌された皮脂・汗が混ざり皮脂膜を形成する。この皮脂膜により水分の蒸発を予防し肌の水分を保つことができる。

2)保湿機能

皮膚のなめらかさや柔軟性は、皮脂・天然保湿因子(NMF)・角質細胞間脂質の3つの因子によって一定に保たれている。

図6 皮膚のバリア機能

図6 皮膚のバリア機能

2.温度調節機能

環境の温度変化により皮膚は温度調整を行う。

暑いときには、エクリン腺が活動して汗を分泌させて、熱を放散することで体温の上昇を防いでいる。

寒いときは、毛孔の熱放出を防いで、血管は収縮して、熱放出を抑制する。

3.静菌・緩衝作用

角質細胞間脂質、皮脂、汗、垢などが混じり皮脂膜を形成する。皮脂膜はpH4~6に保たれており、酸外套とも呼ばれる。pH4~6の弱酸性の状態は有毒物質の侵入を防ぎ細菌が繁殖しにくい状態で、これを静菌作用という。

pH4~6の状態ではアルカリ中和能を発揮する。これは、皮膚に酸やアルカリ溶液が付着しても、一定時間で弱酸性のpHに戻るというものである。これを緩衝作用という(図7)。

図7 静菌・緩衝作用

図7 静菌・緩衝作用

4.経皮吸収作用

皮膚の吸収経路には表皮経路や毛孔経路がある。多くは表皮経路で吸収される。

5.免疫機構としての役割

皮膚の特異な免疫担当細胞はランゲルハンス細胞と表皮細胞がある。表皮細胞は種々のサイトカインを産生、分泌し免疫反応に関与する。

6.ボディイメージをつくる役割

皮膚は全身の健康状態を表すとともに身体の美しさを表現する。

7.排泄作用

汗腺からは汗、水分、食塩、尿素、乳酸が排泄される。また、皮膚表面からは不感蒸泄として水分が排泄されている。

参考文献

1.日本看護協会認定看護師制度委員会創傷ケア基準検討会編著:スキンケアガイダンス.日本看護協会出版会,東京,2002:25-37

2.内藤亜由美,安部正敏編:スキントラブルケアパーフェクトガイド.学研メディカル秀潤社,東京,2013:2-11.

3.伊藤美智子:皮膚の解剖生理と皮膚障害.月刊ナーシング2010;30(2):8-14.