新たなカテーテル固定専用キットの導入により 患者さんと看護師の負担を軽減
皮膚・排泄ケア認定看護師 嘉数智子さん(社会医療法人かりゆし会 ハートライフ病院)
医療安全管理者 看護師長 外間真紀子さん(社会医療法人かりゆし会 ハートライフ病院)

日々、医療とともに進化する医療材料。
しかし、その導入には、コスト面などさまざまな壁があります。
そして導入後には、想定していないトラブルが起こるものです。
さまざまな課題を解決し、カテーテル固定専用キットの導入により成果をあげているハートライフ病院。
今回は、その取り組みの中心を担った皮膚・排泄ケア認定看護師と医療安全対策の看護師に話を聞きました。

末梢静脈カテーテル交換頻度の改善

沖縄県中南部東海岸に位置し、地域医療支援病院としての役割を担うハートライフ病院。308床の病室はほとんどが個室で、プライベート空間が保たれた快適な療養環境を提供しています。
医療安全対策にも力を入れており、医療安全対策の看護師と専門領域の看護師が連携しながら、患者さんの安全・安楽を守っています。その一例として、2年ほど前に閉鎖式の点滴ルートと針刺し事故予防機構付きの留置針を導入しました。これを機に、米国疾病管理予防センター(CDC)の「血管カテーテル関連感染予防のためのガイドライン 2011」に沿い、末梢静脈カテーテルの交換を3~4日に1回から7日に1回の頻度に変更することにしました。
「そもそもガイドラインが改訂されたときから、カテーテルの交換頻度を変えたいと考えていました。しかし、これまで使用していたフィルム材ではどうしても固定力が弱く7日間固定できず、フィルム材の交換のタイミングと同じ3~4日に1回の頻度でカテーテル交換を行わざるを得ない状況でした。また、フィルム材を固定するためのテープによる皮膚トラブルも発生していました」と皮膚・排泄ケア認定看護師の嘉数智子さんが当時を振り返ります。
「皮膚トラブルのリスク、カテーテル交換による感染の危険性、そして何度も穿刺されるという患者さんの負担を考えると、カテーテルを固定する材料についても見直す必要がありました」と医療安全管理者で看護師長の外間真紀子さんは話します。そこで導入を検討したのが、カテーテル固定専用キットの「フィックスキット・PV」でした。皮膚にやさしく固定力があり、オールインワンキットのため、手技も統一しやすいというのがメリットでした。また、フィルムドレッシングの吸収パッド部分に亜鉛イオンが含まれているため、より衛生的な環境を維持できることも評価した点です。

カテーテル固定専用キットの導入

導入にあたっては、病院の稟議を通す必要があり、サンプル品を試しながら、コスト面でも詳細なリサーチを行いました。1枚単価としては、これまで使っていたフィルム材とテープよりも確かに高いものの、3日に1回の交換から7日に1回の交換になれば、ランニングコストは変わらないという試算に至りました。
何よりも大切なのは、患者さんに安全な医療を提供すること。導入によって、感染予防や患者さんへの穿刺、テープ剥離による苦痛緩和が期待できました。カテーテルの交換には20分ほど要することもあり、交換回数が減れば、看護師の業務負担も軽減します。時給計算して、人件費の削減になることも示しました。
病院側にリサーチ結果をまとめた文書を提出したところ、病棟での導入が決定。各病棟の医療安全や褥瘡ケアのリンクナースと協力し、導入を進めていきました。

適切な固定方法の周知徹底

フィックスキット・PVの導入後、皮膚トラブルがまったくなくなったわけではありません。
原因を調べてみると、留置針の突起部分を下にして固定していたり、延長チューブのロックを外さずに固定したりすることにより、皮膚が圧迫されて潰瘍ができていたことがわかりました。つまり、固定方法に問題があったのです。刺入部位に貼付したフィルム材の上から不織布のテープを貼ってしまい、刺入部が見えないという例もありました。スタッフによっては、適切な固定方法で貼付できておらず、嘉数さんや外間さんが思いもよらない使い方をしていることがあり、驚いたといいます。
そこで作成したのが、固定方法のマニュアルです。手順とポイントを写真付きでわかりやすく説明し、電子カルテのシステム上で、いつでも閲覧できるようにしました。ポイントは、延長チューブのロック部分を外すこと、留置針が見える位置で留置針の突起部分を上にして固定すること、接続部を太いテープでしっかりと固定することです。
マニュアルを作成してからは、適切な固定方法がかなり浸透してきました。こうした経験を活かし、新人教育でも固定方法の技術習得をカリキュラムに取り入れています。外間さんは「操作方法だけを習得させるのではなく、“なぜ刺入部が見えないといけないのか”など、根拠も含めて説明することが大切」と考えています。

カテーテル固定専用キット導入の成果

これまでのフィルム材では、めくれそうな部分の補強にテープを追加で貼り足しても、7日間貼り続けることは難しい状況でしたが、フィックスキット・PVはキット内にセットされているフィルム材とテープだけでもしっかりとした固定力が続くため、7日に1回の交換が可能になりました。フィックスキット・PVの導入と適切な固定方法の周知徹底により7日間固定を継続できることで、交換の際の穿刺回数を抑えることができ、患者さんの苦痛・負担を減らすことができました。
また、現場スタッフからはテープを用意する手間が減り、使いやすいという声が聞かれます。ハートライフ病院では、適切な固定方法の周知徹底を今後も継続して行うことにより、安全な医療の提供に日々努めています。

手技を統一するために作成した末梢静脈カテーテル固定法のマニュアル。
マニュアル作成後は、固定方法は統一されつつある。

HOSPITAL DATA

社会医療法人かりゆし会 ハートライフ病院
「わたしたちは心と心を結ぶ信頼される医療をめざします」を理念とし、その実現に取り組んでいる。2007年より地域医療支援病院に認定。現在は、24時間救急医療を行うと同時に、各課の専門性をたかめより安全な医療、より質の高い医療を提供している

〒901-2492 沖縄県中頭郡中城村字伊集208番地
■ 開 設/ 1988年8月22日
■ 病床数/ 308床
■ 職員数/ 886人(2017年4月現在)

ALMovie「予防的スキンケアのポイント」