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  • 医療型療養病棟での褥瘡対策の実際と看護師の役割 〜ランチョンセミナー8〜

公開日:2020/6/8

第27回日本慢性期医療学会
“令和”時代の慢性期医療 -スキルとエビデンスの融合を目指して-

医療型療養病棟での褥瘡対策の実際と看護師の役割

〜ランチョンセミナー8〜
座長
金沢医科大学
名誉教授
川上 重彦 先生
演者
AOI国際病院 看護部 看護師長 
皮膚・排泄ケア認定看護師
石黒 幸子 先生
開催・会場
2019年12月4日(水)
大阪国際会議場 第6会場

Introduction

国の医療政策が在宅医療推進に舵を切り、病院から在宅復帰に繋ぐ療養病棟では、医療的ケアを必要とする患者の早期退院を目指す取り組みが進められています。この早期退院を阻む問題の一つとして褥瘡が挙げられます。一方、褥瘡対策は、今や「治す」から「発生を予防する」にその中心が変化しており、病院全体で取り組む姿勢や経費対応の意識が不可欠です。今回のランチョンセミナーでは、AOI国際病院看護部の皮膚・排泄ケア認定看護師石黒幸子先生に、医療型療養病棟を取り巻く状況をふり返りながら、同院における褥瘡発生ゼロへの取り組みについてご講演いただきました。より良い褥瘡対策に欠かせない収益確保のための工夫や、効果的な褥瘡ケア製品使用時のポイントについてご紹介します。

Lecture 医療型療養病棟での褥瘡対策の実際と看護師の役割

AOI国際病院 看護部 看護師長 皮膚・排泄ケア認定看護師 
石黒 幸子 先生

療養病棟における褥瘡対策の現状

2年ごとに改定される診療報酬改定において、2002年、日本初の減算システムとして褥瘡対策未実施減算が新設されました。これを機に、その算定要件でもある褥瘡対策チームの稼働は全国各地で広がりを見せ、2004年以降は、褥瘡患者管理加算の新設、未実施減算の廃止、褥瘡ハイリスク患者ケア加算や褥瘡評価実施加算(2018年診療報酬改定で褥瘡対策加算に名称変更)の新設などに見られるように、褥瘡対策を行なうことが当たり前の時代となりました。2012年には、感染対策、医療安全と共に褥瘡対策が入院基本料に包括され、今や褥瘡対策はいかに「予防するか」に焦点が当てられています。
しかし、褥瘡保有者のケアは医療費も人件費もかかるため、介護老人保健施設では受け入れがたい上、高齢夫婦のみの家庭や独居高齢者は在宅移行が困難です。そのような患者の受け皿となる療養病棟の需要は高まるばかりです。
療養病棟を持つ一般病院では、急性期治療後、褥瘡を持ったまま療養病棟に移っていく、もしくは、7:1、10:1看護から20:1看護というマンパワーの落ちた療養病棟に移ることで褥瘡を発生させてしまう事態も起こりやすく、療養病棟での褥瘡の保有率・発生率を高めています。
実際、2013年に中医協が発表したデータでは、一般病棟に対して療養病棟の褥瘡の発生率・保有率というのは、非常に高くなっています。私は2013年に開院した当院に翌2014年に就職しておりますが、その2014年の当院全体の褥瘡の発生率・保有率は、まさにこのデータと同じ状態でした(図1)。
しかしその4年後である2018年、当院の療養病棟での褥瘡発生率・保有率は、当時の一般病棟と同じ数値にまで下げることができています。さらに注目していただきたいのは、療養病棟での褥瘡発生ゼロを達成したことです。当院で、どのような褥瘡対策に取り組んできたのかを紹介します。

図1:2013年中央社会保険医療協議会報告と当院

病院全体で取り組んだ褥瘡予防対策

2014年、まず褥瘡対策リンクナース委員会を立ち上げました。これは看護部のリンクナース委員会ではなく、院内褥瘡対策委員会の下部組織という位置づけです。看護師を中心とした実働部隊を病院全体で強化しようということで、患者を取り巻く褥瘡予防環境整備として以下の4つに取り組みました。

①体圧分散寝具(高機能エアマットレス)の活用

高機能エアマットレスは褥瘡予防に大変有効です。高額ではありますが、日常生活自立度ランクに応じて導入することで褥瘡発生を抑えることができます。それは褥瘡ケアに付随する業務を削減でき、私達看護師が本来やるべき看護業務時間の確保に繋げることができています(図2)。

図2:分散寝具(高機能エアマットレス)の活用

②褥瘡予防具(ポジショニングピロー)の活用

褥瘡が発生しやすい療養病棟の患者は、拘縮が強い方や同じ体位を維持できない方が多く、高機能エアマットレスにポジショニングピローという褥瘡予防具をプラスしないと、良い体位の保持はできません。
委員会立ち上げ以前、拘縮の強い患者数に対して褥瘡予防具は明らかに足りませんでした。その時私たちは、布団を丸めてクッション代わりにして体圧分散を行っていましたが、医療施設で布団というわけにもいきません。そこで2014年、調査票を作成し院内褥瘡予防具の必要度調査を行ない、当院の入院患者の特徴や現在ある予防具とその充足率を明らかにしました。患者200人ほどに対して、リンクナースが一人ひとりの状態を調べて入力するため、当然1日がかりとなりますが、病院の褥瘡対策委員会による調査なので、病棟師長らがリンクナースにこの業務時間を確保してくださいました。本調査により何がどのくらい足りないのか、それらを導入することのメリットなどを稟議書に添え、スネーククッション®を30本購入できました。
しかし、道具は正しく使えなければその効果を発揮することができません。繰り返し使用方法の研修を行い、ベッドサイドにはピローの当て方を画像掲示しました。
その結果、半年後に褥瘡発生ゼロを達成でき、1年後には導入した病棟と導入しない病棟で明らかな有意差が出ました。効果が明らかになったことより、2年後、療養病棟120床では、経年劣化に対してトータル80本を追加購入していただきました(図3)。

図3:褥瘡予防具(ポジショニングピロー)の活用

③スキンケアの重視

脆弱な高齢者の皮膚を保護し褥瘡が発生しづらい皮膚を作るためには、保湿も欠かせません。エアマットレス導入によって生まれたちょっとした時間を、保湿剤の塗布にあてられるようになりました。
当院では、全身にセラミド入りの保湿剤を使っています。オムツの使用で過浸軟になりやすい部位には、撥水効果のあるスキンケアクリームを使用すると、オムツかぶれを予防することもできます。撥水効果は傷口やその周囲の皮膚の浸軟も予防できるので、気切孔や胃瘻周囲の皮膚の保護にも使用できますし、日々何度もアルコール消毒で傷められている私たち看護師のハンドクリームとしても役立っています。
私は、ご家族に撥水効果のあるスキンケアクリームでケアをしていただきたいとき、自分が普段持っている撥水効果のあるスキンケアクリームをハンドクリームの代わりに塗ってもらい、その場で手を洗って撥水効果を実感していただいています(図4)。必要なものを買ってもらうためには、時にこういうアピールも大事なのではないかと思います。

図4:スキンケアの重視

④NST(栄養サポートチーム)との協働

当院では、持続高カロリー輸液や経腸栄養等の栄養管理を行っているケースにはNSTが介入しています。特に褥瘡保有患者は必要エネルギー量が通常の1.2~1.3倍となるので、これらの摂取カロリーを確保するため個々の対応が求められます。そのようなケースに対し、ただ「食べなさい」というのではなく、その方の食べられるものや好きなものという個別食対応、栄養補助食品の採用など、NSTがその専門性を発揮して指導してくれるのです。
また、仙骨部の褥瘡は排便コントロールが治癒に影響するため、下痢を生じにくい形状や成分の栄養剤に変更するというアプローチを検討する際もNSTと共に取り組んでいます。

効果的な商品選択と使用時の工夫

効果的な褥瘡対策のためには、効果的な商品を取り入れることもあります。そこでは経費対応が重要になってきます。介護量や医療処置の多い入院料A(医療区分3/ADL区分3)と褥瘡対策加算15点の「1」を目指して収益を上げていく必要があります。
当院の場合、98%の患者が褥瘡対策加算の対象になり1ヶ月で約59万円、一般急性期の褥瘡ハイリスク患者ケア加算で約30万円、これらの加算が安定した収益になると考えています(図5)。

図5:商品を新規購入・追加購入して貰うために何ができるか?

局所陰圧閉鎖処置は医療型療養病棟で算定できる非常に高い診療報酬ですし、処置回数の減少や治癒期間の短縮が可能になります。しかし、褥瘡の60−70%を占めるという仙骨部に、持続灌流-局所陰圧閉鎖処置を行おうとすると、排泄物の汚染のリスクや臀裂部の凹凸によるリークなどの問題があるため、処置時の工夫が必要です。
当院では、灌流の浸漬時間に側臥位とする、体位変換計画を予定通り行う、実施中の体位が苦しくないよう十分体圧分散できるポジショニング技術を駆使する、食品による排便コントロールを検討する、入浴日に合わせて浣腸処置をすませるなど、看護師はリハビリ科や栄養科と連携・協働して、確実にこの報酬を得られるようにしています。
効果的な医療材料を使用する際も、以下のような工夫をしています。誰でもできることですので、皆さんもぜひ試してみてください。

①創縁の浸軟予防

局所陰圧閉鎖処置料を算定できる28日を過ぎてもまだ壊死組織も残っている時、水分量の多いゲーベン®クリームで、自己融解させることがあると思います。しかしこの方法では、ゲーベン®クリームと壊死組織からの滲出液で創部を覆っていたガーゼが湿った状態になり、創縁が浸軟して収縮が遅れてしまいます。この場合は、撥水効果のあるスキンケアクリームで創縁を保護すると、浸軟を予防した状態で創を収縮させることができます(図6)。

図6:仙骨部 持続灌流・局所陰圧閉鎖処置後の工夫

②創閉鎖促進

創を引き寄せ収縮・閉鎖させる創傷管理には、伸縮性医療用テープを使用します。緊張性水疱を予防するために端は引っ張らずに乗せるだけですが、創部は引き寄せたいので引っ張って貼付します。表面にはマジックで円を描き、その形の変化で貼付時の引っ張り具合を目で見てわかるようにしています(図7・8)。
不要な引っ張りを防ぎ、皮膚障害も起こさず綺麗に創だけ修復することができたケースを図9に示します。局所陰圧閉鎖処置まで当院で行い、その後、施設に移ってからも同じ方法で貼付してもらい、外来通院した4ヶ月半で綺麗に創が閉鎖しました。

図7:効果的な医療材料の活用(伸縮性医療用テープ)
図8:伸縮性医療用テープを用いた創傷管理
図9:伸縮性医療用テープを用いた創傷管理の継続

③スキン-テア対応

療養病棟の高齢者に多いスキン-テアは、深層真皮が削れてしまう、皮膚を欠損してしまうような創傷です。創部をしっかり洗った後、ステリストリップTMなどで皮弁を戻して固定します。その上を保護材で覆いますが、エスアイエイド®は粘着面が全面シリコーンのためズレが少なく、剥離刺激がやさしいという特長があります。
貼付時は半分に折り、傷が中心にくるようにあて、剥がすときに皮弁がめくれないよう、日付と皮弁方向の矢印を書き込みます。エスアイエイド®で保護して11日目、創および創周囲は綺麗に改善し、皮弁も確実に生着しています。さらに保護を継続するため、エスアイエイド®を半分、つまり三角形にカットして使っています。今まで週に2枚使っていたところが1枚で済むわけです(図10)。

図10:スキン-テア対応の工夫

<エスアイエイド® 三角形の応用>

創だけでなく創周囲の状況も考え、何が剥がれるリスクになるのかをアセスメントすることで、三角形を効果的に応用することができます(図11)。

図11:エスアイエイド®三角形の応用例

褥瘡ケアをトータルコストから考える

コストは単純に材料の単価だけにとらわれるのではなく、処置の時間、人件費、回数といったものを全てトータルで考えます。効果的な医療材料を使用することによって褥瘡ケアにかかる時間が短縮されれば、浮いた時間は他の看護業務に充てられます。褥瘡ケアに効果的な商品の新規・追加購入する際は、病院に今あるものをどう使うか、新規購入するのであればどのように使っていくのか、入院患者の現状調査の元に商品を選ぶことが重要です。そして誰もが適切に使用できるようになる教育を重ねていきます。これが達成できると治療も予防も良好な状態を保つことができ、褥瘡を作らない病棟としてスタッフのモチベーションも上がっていくでしょう。褥瘡ケアの質が向上すれば重度患者を受け入れられるようになりますので、地域からの信頼獲得、さらなる加算や収益獲得といった、よりよい褥瘡ケアの循環が生まれます(図12)。

図12:より良い褥瘡ケアの循環

エスアイエイド®を例に挙げてスキン-テアの処置コストを見てみましょう。材料の単価が高いものを使う時には、トータルコストで収支を考えることです。
ガーゼでは、交換1回あたりの材料費は15円、作業時間15分で人件費を含めると合計645円、この1回15分というのは、創洗浄を丁寧に行い新しい外用薬を塗るという作業の全工程を含めます。
エスアイエイド®ですと、材料費は260円とガーゼに比べ圧倒的に高額ですが、ライナーを剥がすだけで貼付できるので作業時間は3分です。これを1週目の作業コストで比較すると、ガーゼ4,515円に対しエスアイエイド®は1,158円です。3週間処置を継続することが多いため、3週間の合計で計算してみると、エスアイエイド®は交換回数で14回分、作業時間全てを含めると294分、つまり約5時間削減することができます。コストは10,843円も削減できました(図13)。

図13:エスアイエイド®の導入による効果

療養病棟は今非常に注目されており、需要も高くなっています。こういった病院全体を巻き込む褥瘡対策、より良い褥瘡ケアを提供するためには、ケアの循環のポイントをどれも欠かすことはできません。皆さんにも、できることから現場で役立てていただければと思います。
本日はありがとうございました。

Q&A 百人会議

回答:石黒 幸子 先生

本セミナーでは「百人会議」というシステムを使用し、講演中から質問を受け付けました。セミナー後に寄せられた質問も合わせ、石黒先生からのご回答を紹介します。看護現場での課題を皆さんで共有し、よりよい褥瘡ケアを!

発表症例について

Q

褥瘡発生件数ゼロとのことですが、KTU※も予防出来ますか?

A

当院でも、緩和ケア病棟がありますので、KTU※の発生はありますし、療養病棟でも避けられない状況はあります。しかし、褥瘡予防としてできる体圧分散の方法を見直し工夫したり、スキンケアの実施のために観察回数を増やしたりして、改善できる症例もあります。
少しの体動でもバイタル変動をきたすような方もおられますので、当院では、病棟ごとに入院患者の特徴に合わせた褥瘡対策重点課題を決め、今自分たちでできる事を検討してもらい、実施に結び付ける努力を続けています。
※KTU=Kennedy terminal ulcer(ケネディ潰瘍):圧迫やずれに加えて、終末期の低循環・低酸素血症・多臓器不全による皮膚血流不全に伴って生じる「皮膚の脆弱性」に起因する防ぎきれない褥瘡

Q

発表された症例でも完治できますか?

A

療養病棟で完治させています。その他、褥瘡を治癒させ施設転院になった事例、在宅ケアに継続して訪問看護の同行訪問を実施する事例もあります。

院内の取り組みについて

Q

褥瘡を看護師任せにする医者はどうすればいいですか?

A

任せていただける環境を活かしてください。看護師が褥瘡に関するスキルを上げる最高のチャンスです。看護部で褥瘡を担当するリーダーを中心に、積極的に褥瘡の学習をし、ご自身の施設の褥瘡患者の特徴を分析してください。施設の特徴にあった解決策を見出すことができれば、達成感も上がりますし、さらに褥瘡を作らない環境作りにも配慮できるようになると思います。
ただし、薬剤の処方には医師の力が必要です。「〇〇の状態には、このような治療が効くそうです。先生試してみたいです。処方してください」と、エビデンスを添えて依頼しましょう。「看護師に任せておけば大丈夫!」という実績を積んでください。

Q

先生が決まったガーゼ、軟膏しか使ってくれません。どのようにアプローチすればいいですか?

A

先生が決まったドレッシング材や外用薬しか選択しない理由が、院内採用の縛りによるものか、他の有効な製品をご存知ないのかを確認してください。施設ごとに種々の事情があります。
もし、新しいものをご存知ないのであれば、その有効性を自施設で発揮できるという予測データを揃えて、褥瘡対策委員会で検討していただくのはいかがでしょうか。褥瘡担当の先生、院内でのパワーバランスなど複雑な事情はあると思います。しかし、看護師として患者さんの為に提案し、病院収入に結び付くことを提示して、皆さんの努力と熱意を伝えることは大切です。「先生、患者さんよくなるんです、これで」、と言い続けましょう。“患者さんがよくなる”というワードは殺し文句ではないでしょうか。
褥瘡対策は、入院基本料の必須条件です。やらないわけにはいかないのです。院内委員会の活気が病院管理者に届くことを願っています。

ワンポイントアドバイス
「従来品を使用すると材料費以外の人件費・作業時間がこの程度かかりますが、新製品の導入で削減できた作業時間をこのような業務に回すことができるようになります。購入時は費用がかかりますが、トータルコストで考えるとコスト削減になります」また、次の購入に繋がるように「褥瘡の発生率が低下しました。成果もしっかりでています」と、理由と結果を数字に置き換えてデータで示すことが大事です(図5参照)。

 

Q

ポジショニングでリハビリと連携することはありますか?

A

勿論です。ポジショニングのプロは療法士です。看護師にはない知識と技術を習得しています。院内の連携ルールを作ると連携がスムーズになります。リハビリテーション科からの情報発信方法、受け手の看護部(病棟)の体制整備を試みてください。

Q

当院でも医療療養病棟がありますが、褥瘡対策加算の算定件数が多くありません。貴院では発表の中でかなりたくさんの患者様に加算されているようですが、褥瘡の評価や記録について工夫されていることがありますか?

A

褥瘡評価で大変なのは、別紙様式46のDESIGN-R®を毎日作成する業務負担の軽減ではないでしょうか。前回の記録を引用するシステムやDESIGN-R®のチェックをすると自動計算できる書式にするなど、SEさんの協力は欠かせません。褥瘡評価については、毎週定期評価日を設け、毎週実施している褥瘡回診の評価をプライマリーナースが責任をもって記録しています。
これらを全スタッフが正しく記録できるように、リンクナースが個別指導を繰り返しました。リンクナース教育は、リンクナース委員会が毎月各病棟で出張学習会を定期的に開催して進めています。帳票の入力方法はじめ褥瘡治療に関する17項目の中から、その病棟で希望した内容で30分程度の学習会を実施しています。

実際の褥瘡ケアについて

Q

感染した褥瘡があります。何から始めればいいですか?

A

感染している褥瘡は、粘稠度の高い多量の滲出液があります。細菌数を減らすために、十分な洗浄と滲出液を含んだドレッシング材(ガーゼ等)による創周囲皮膚障害を予防することから始めます。
外用薬は、イソジンシュガーなど滲出液を吸収し、細菌を減らす薬効のある外用薬を選択します。ポケットなど創底の確認しにくい創傷の場合は、ポケット切開も検討していただきます。
確実に洗浄し、汚れた液体を創底に残さない処置をひたすら続けます。徐々に滲出液が減少したら、処置回数を減らすことができます。
薬を塗布したら治るわけではありません。その薬効を十分発揮できる状況を作るのは、看護師の役割です。褥瘡治療に必要な栄養管理にも配慮してください。

Q

在宅で動けるのに、両腸骨に難治性の褥瘡を1ヶ月治療中。テープ負けもあり、d1褥瘡なのに治りません。基本洗い、ゲーベン®クリーム。一喜一憂です。

A

d1褥瘡というのは、発赤で皮膚欠損のない褥瘡です。ゲーベン®クリームの適応ではないと思います。部位から予測して、体動時の擦れにより瘢痕治癒部の表皮剥離を繰り返すD3褥瘡ではないかと思われます。
テープ負けの要因は、皮膚の浸軟が関与します。ゲーベン®クリームによる創周囲皮膚の過浸軟状況はありませんか?ガーゼのズレは表皮剥離を起こしやすいため、思い切って全面シリコーン粘着剤のドレッシング材を選択する方法もあります。
在宅療養指導管理料は取れませんか? D3褥瘡であれば、皮膚欠損用創傷被覆材が処方できます。処方できない場合は、一般医療機器のエスアイエイド®、ふぉーむらいと、ハイドロ ジェントルエイドなどを利用してはいかがでしょうか。

Q

エアマットレスを使用している方の体位変換の頻度はどのくらいがベストでしょうか?

A

国内のガイドラインでは、4時間を超えない範囲で実施することが望ましいとされていますが、海外では、患者の状態をアセスメントし、個々に適した間隔でも良いとしています。
適切に反応性充血の起きない間隔での体位変換が実施できるように、スタッフの観察スキルを上げると良いと思います。エアマットレスと一言で言っても、機種によってその機能は違います。ご使用されている機種の特徴を把握して、患者状態と合わせてアセスメントする、数字にとらわれることなく、患者さんを見て決めることが大切です。

Q

エアマットレスの定期清掃は行っていますか?

A

入浴やシーツ交換などの際に、上部を環境クロスで清拭しています。利用者が変わる場合は、全面清拭です。
エアマットレスのクリーニング方法については院内基準を作成し、感染症患者使用後の取り扱い方法も感染管理委員会で承認を得た方法を決めています。
レンタルマットレスはクリーニングの必要がなく、エアを抜いてビニールに入れるだけなので簡単です。

Q

エスアイエイド®は何号を使っていますか?

A

当院では、コストパフォーマンスの良い11号(30㎝×55㎝)を切り分けて使用しています。

Q

伸縮性医療用テープはどのくらいの交換頻度ですか?

A

滲出液汚染の状況により様々です。創部に当てるガーゼの代わりにアクアセル®Agなどの吸収力の高いドレッシング材を使用することで、数日継続使用することもありますし、毎日十分洗浄した方が良いと思われる場合は、毎日になることもあります。
基本は自然にはがれるまでとしています。テープを装着したまま水圧をかけて洗浄し、ガーゼは隙間から洗浄後に挿入しています。

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