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公開日:2024/2/7
オカモト株式会社
(※本記事は、「第32回日本形成外科学会基礎学術集会 ランチョンセミナー1」の内容を再構成したものです。)
創傷被覆材ATK®︎パッドの開発のきっかけは、ある医師が、滲出液の多い褥瘡に干物づくり用の脱水シートをあててみたら褥瘡が治ったため、そのシートを製造販売する「オカモト」に医療用のものがないか、相談したことだったといいます。
その相談を受けて医療用に開発されたものがATK®︎パッドです。ATK®︎パッドは、ポリビニルアルコール製の半透膜フィルムの中に水飴(吸収体:還元澱粉糖化物とアルギン酸ナトリウムのゲル状混合物)を内包する構造をとり、フィルム内外の浸透圧差を利用して濃度勾配により濃い水飴のほうに滲出液を吸い取る仕組みになっています。これは、簡単にいうと「浸透圧を利用して滲出液を吸い出す創傷被覆材」ということです。
ATK®︎パッドには、特徴的な基本性能が3つあります。1つ目が「吸収量が多い」、2つ目が「臭いを吸収する」、3つ目が「視認性が高い」ことです。
1つ目の「吸収量が多い」について説明します。吸収量がなぜ多くなるのか、そのメカニズムは以下の通りです。
創部の滲出液が、浸透圧差によりフィルム内の水飴側に吸い取られると、パッド内が滲出液で膨らみます。この吸い取られた滲出液の水分は、パッドの背面側から蒸散されます。それによりパッド内の濃度はより高まり、濃度勾配により滲出液がさらに吸収されます。このように「吸水」と「蒸散」が繰り返し行われます。
一般的な二次治癒ハイドロゲル創傷被覆・保護材も吸水はしますが、翌日には吸水できなくなるということがほとんどです。一方で、ATK®︎パッドは翌日以降も吸水します。吸水と蒸散を繰り返し、半永久的に総液体処理をします(図1)。
前述のように、ATK®︎パッドの前身は干物づくり用の脱水シートです。そのシートを使って干物をつくったときに、魚の生臭さや肉の嫌な臭いが抑えられていました。臭いがシートに吸収されていたのです。これはシートの素材であるポリビニルアルコールフィルムが、タンパク質などの大きな分子は透過させず、「臭いの成分」である小さな分子を選択的に透過させるという特性によるものです(図2)。透過した臭い成分はフィルム内の水飴に溶け込むため、臭いは完全にはなくなりませんが、軽減します。
この「臭いの軽減」は、褥瘡治療・ケアにかかわる医療従事者や患者さんのQOLの向上などに非常に役立つと思います。
創傷被覆材を貼っていて創部が見えず、感染しているのに気づかなかったということはないでしょうか。
ATK®︎パッドの特長の3つ目が「視認性の高さ」です。透明なので視認性が高く、貼った状態でも創部がよく見えます(図3)。そのため感染徴候や発赤がある場合にも早く気づくことができます。
これら3つの特長以外に、ATK®︎パッドでは安全性にかかわる検証もしています。
干物をつくるものを人間の皮膚に使って「安全性は大丈夫か」と懐疑的な人もいると思います。そのため、ATK®︎パッドでは、生物学的安全性、製品強度(耐荷重強度)、薬剤併用時の影響についても検証しました。生物学的安全性については、細胞毒性、皮内反応、皮膚感作、エンドトキシン、急性全身毒性、亜急性全身毒性のすべてにおいて、リスクは許容されています(つまり、問題ないということです)。製品強度(耐荷重強度)についても、想定される使用条件下で十分な製品強度を確認しています。薬剤併用時の影響については、薬剤併用による製品強度への影響は認められませんでしたが、油脂性基剤や油中水型(W/O型)の乳剤性基剤の場合、吸水力は60%ほど低下しました。
今後は、外来で管理する褥瘡が増えると思っています。ただ、そのときの褥瘡の保存的治療として、陰圧閉鎖療法(NPWT)を選択するのは財源的・方法的にもなかなか難しい。それに代わるものとして、ATK®︎パッドが有力な選択肢になるのではないかと思います。浸透圧を利用して吸収した滲出液を、再利用して濃縮させて、創傷治癒を促進するという新しいコンセプトも良いと思います。
臭いをとる、視認性が高いということも含め、在宅で褥瘡ケアを行う訪問看護師や介護者にとっても、ATK®︎パッドは活用しやすい創傷被覆材だといえます。
在宅での使用を考えると、おむつとATK®︎パッドが一体化されているとよいと考えています。一体化していれば、交換する際にも、洗浄しながらおむつで吸水し、新しいおむつに取り替えればよいので、ケアの負担も少なくなります。褥瘡ケアにかかわる看護師の皆さんに、一体化のデバイスの開発や使用法などについての考案・研究を期待します。
実際にATK®︎パッドを使ってみて手応えとして感じたのは、早くよく治るだけでなく、患者さんの「疼痛を軽減させる」ということです。私は褥瘡が治っても、その間に痛みなどで患者さんにつらい思いさせるのは良くないと思っています。つらい思いをせずによくなることが大事です。
超高齢社会で、今後はますます在宅ケアが重要になります。患者さんも入院して治療する方ばかりでなく、通院できなくなっているような方もたくさんいます。そういう方たちに対しても、自宅で安楽なケアを提供していくといった視点をもつことが、私たち医療者により求められると思います。
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