公開日:2024/9/18

第33回日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会
煌めくWOCNの力

異色WOCナースが挑戦する
訪問看護の新たな展開

~スイーツセミナー~

【開催】2024年5月25日(土)、26日(日)海峡メッセ下関
【共催】株式会社照林社、アルケア株式会社 メディア事業部
※アルケア株式会社メディア事業部は2024年7月1日よりディアケア株式会社となっています。
【取材・編集】株式会社照林社

本セミナーでは、「異色WOCナースが挑戦する訪問看護の新たな展開」というテーマで、渡辺知弘先生にご講演いただきました。国家公務員からプロのダンサーを経て、看護の道へ。現在は訪問看護の現場でケアに携わりながら、静岡県と神奈川県で訪問看護ステーションを運営する経営者でもあります。
訪問看護ステーションの運営では、よりよい看護の追求はもちろん、人材の確保・マネジメントも重要なファクターとなります。人材育成における「動画教育コンテンツ」を活用した教育事例についても語っていただきました。

演者

株式会社T’s PROJECT 代表取締役、訪問看護ステーションAPOLLO/暁訪問看護ステーション 所長、皮膚・排泄ケア認定看護師
渡辺知弘先生

座長

東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 老年看護学/創傷看護学分野 教授
仲上豪二朗先生

渡辺先生とは、2023年4月にオーストラリアで開催されたAPETNA(Asia Pacific Enterostomal Therapy Nurses Association、アジア太平洋地域におけるストーマケア看護の学会)ではじめてお会いしました。
以来、本学大学院でも訪問看護ステーション経営を通した日本の在宅医療のビジョンについてご講演いただくなど、交流を深めています。今回はご自身の経験から、訪問看護ステーション経営・運営のポイントやICT・動画の活用、そしてこれからの訪問看護の展望についてお話しいただきます。

偶然の出会いをチャンスに変え続け、「異色キャリア」を経てWOC ナースになるまで

私は高校卒業後、まず国税調査官として就職しました。国税が適切に申告され、支払われているかを調査する仕事です。仕事をしていくなかで、どうしてもストレスはたまっていきました。そんな私のストレス解消法は、とにかく踊ることでした。
当時、通勤途中に社交ダンススクールがありました。時々、通りすがりに中をのぞいていたのですが、そのうちにダンスの先生から声をかけられ、そのスクールに入会することになります。憧れの先輩とカップル(社交ダンスにおけるペアのこと)を組んで練習に励み、1年後にはプロとして試合に出ることができました。プロの選手になることを機に、国税調査官も退職しました。
しかし、ダンスのほうでも両膝を痛めてしまい、25歳でプロを引退することになります。「これから何をしようか」と考えていたときに、膝の治療のため通っていた病院で看護師募集のポスターが目に留まりました。当時、まだ男性ナースは少なかったのですが、そのポスターに男性が描かれているのを見て、「めざしてみよう」と思い立ち、ナースになりました。
静岡県立静岡がんセンターで勤務していたナース2年目のときに、忘れもしないできごとが起こります。ある日の夜勤明け、当時の副院長であった青木和惠先生に「患者さんを交えたクリスマス会で社交ダンスを踊りませんか」と声をかけられたのです。その際、ダンス出演の「報酬」としてもちかけられたのが、青木先生の創傷ケアの講義でした。この講義が本当におもしろくて、創傷ケアに運命を感じた瞬間になりました。
その後、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)になり、独立することになりますが、静岡がんセンターでの時間は非常に貴重なものでした。

決して順風満帆ではなかった起業。少しずつ信頼をつかみ、安定経営へ

WOCナースとして仕事をしていくなかで、自分自身の看取りの価値観が変化したり、「自分の力を試してみたい」という考えができたことから、2021年4月に株式会社T's PROJECTを創業しました。7月には訪問看護ステーションAPOLLOを開業します。「既存の枠にとらわれず、自分がよいと思う看護を患者さんに提供したい」という思いで開業しました。
しかし、初月の利用件数はたったの1件。営業経験の少なさと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行による面会制限に加え、人脈・母体・基盤の大切さを痛感しました。ただ、地道に活動を続け、少しずつ信頼が得られたのか、12月ごろからは利用者数・利用件数が伸び始め、2年目に向けて利益が見込めるようになりました。
創業期の営業で苦戦した理由は、自分の考える地域医療モデルと、実際に地域で求められている地域医療モデルに相違があったことだと考えています。営業で大切なことには①コミュニケーション能力、②知識、③情報収集力の3点がありますが、ここで一番大切なのが③情報収集力です。さらに情報収集には、図1のような4つのポイントがあります。資金が減ってくる焦りなどもあり、こうした情報収集が不十分になっていたところが反省点でした。

おしゃれなカフェを思わせる創業当時の内装。事務所の空間づくりはDIY(do it yourself)で実施した

図1 営業における情報収集の4つのポイント

次なる課題は人材の確保・マネジメント。ICTの活用で質の高い看護を担保

売り上げが伸びてきたころ、次の課題として現れたのが「人材の確保・マネジメント」でした。人材の確保・マネジメントでは、①キャリア構築モデル、②訪問看護の質の担保、③教育の充実の3点が重要です。
このうち②訪問看護の質の担保にあたっては、他施設や医療機関との連携を限られたリソースのなかで効率的に行わなければならない、という課題がありました。従来の電話やメールを使った連携では、医師とのコミュニケーションにおける情報の伝え漏れなどの不安や、再連絡に時間がかかるといった問題がありました。
そこで弊社では、チャットツール「Join」を活用しています。会話に近い形でコミュニケーションがとれ、履歴も見やすくなっています。実際に、患者さんの下肢潰瘍についてチャットツールを用いて介入し、患者さんの意思をふまえたケアの方針を決定できた事例もありました(図2)。

図2 チャットツールを活用した訪問での介入の例

統一した教育プログラムづくりが難しい状況を、動画教育コンテンツで解決

③教育の充実については、動画教育コンテンツを導入しました。これまでに、「ケアやアセスメントに自信がもてなかった」といった理由から離職者も出ました。原因として、スタッフのキャリア・入職時期によって知識・技術の熟練度がばらばらであること、基本的に直行・直帰で訪問するため頻回な集合研修の実施が困難なこと、教育プログラムが教育担当者によってまちまちであることなどが考えられました。また、教育者・対象者ともに評価もしづらい状況でした。そういった課題の解決に向け、動画教育コンテンツの導入に踏み切った経緯があります。
動画教育コンテンツの選択にあたって設定した条件は、表1のようなものでした。これに合致するものとして、選ばれたのが「ディアケア プレミアム」です。
「ディアケア プレミアム」は汎用性が高く、さまざまな活用のしかたができます。現在、弊社で力を入れているのは新入職者研修の教材としての活用です。対象となるスタッフには、訪問看護の経験の有無に応じて必須の視聴動画を指定し、学習してもらいます。次に、視聴が済んだ項目に応じて訪問先を選定し、実際に訪問してもらいます。そして、2週目と4週目の終了後に、視聴済みリストとアンケートをもとに振り返りを行い、ひとり立ちの時期を決めていきます。
また、法定研修についても教育担当者が主導となり、「ディアケア プレミアム」を使って研修内容を構築しています。弊社では2023年12月に、サービス提供体制強化加算*1(Ⅰ)を取得することができました。研修後のアンケートを読むと、長く訪問看護に携わっているベテランナースにとっても新しい発見があったり、「介護する家族に対しても情報提供していきたい」というコメントがあったりして、「ディアケア プレミアム」を導入して非常によかったと感じています。

表1 動画教育コンテンツに求める条件

●在宅ケアを想定して作成されたものであること
●訪問前や訪問の合間に、スマートフォンで手軽に動画やテキストを確認できること
●継続的な学習習慣につなげられること
●「サービス提供体制強化加算」の加算要件として教育プログラムがあるため、そこに該当してくること
●安価であること

(*1)サービス提供体制強化加算:介護報酬における加算の1つで、訪問看護ステーションなどにおけるサービスの質向上のための取り組みを評価するもの。事業所のすべての従業者に対し、従業者ごとに研修計画を作成し、それに従って研修を実施(または予定)していることなどが要件に含まれる。

これからの訪問看護ステーションを取りまく課題と展望

地域医療構想のシナリオのもとでは、訪問看護師は約5万人不足しているといわれています。訪問看護師への関心は高まっており、その人数は今後増えていくでしょう。一方で、訪問看護ステーションについては、資金力のある一般企業も含む多様な営利法人が参入してきており、資金力の小さな訪問看護ステーションの経営は難しくなっていく面もあると思っています。そこでは、やはり差別化が図れる訪問看護ステーションが生き残っていくと考えます。
小規模であっても、看護師が主体となっている訪問看護ステーションにこそ、高い看護の質にこだわったケアが提供できると私は考えています。WOCナースのスキルを活かしたベンチャーの訪問看護ステーション運営企業として、弊社もしっかりと残っていかなければならないと自戒しています。
今年、横浜市に新しく開設した暁訪問看護ステーションも、褥瘡やフットケア、ストーマなど、WOCナースの専門性に特化した訪問看護ステーションとして、APOLLO開業時の経験をふまえて営業を推進しているところです。

*本取材記事は、エキスパートナース2024年10月号にも掲載予定です

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