本ページの情報は、医療従事者の方へご提供することを目的としております。
一般のお客様への情報提供を目的としたものではありませんので、あらかじめご了承ください。
あなたは医療従事者ですか?
公開日:2021/11/24
水分負荷が影響を及ぼす疾患に心不全やCKD などがあります。慢性心不全患者は高齢期に急増し(※1)、加齢にともなう腎機能低下(CKD)(※2)、また、慢性透析患者数は65 歳以上で増加するといわれ(※3)、高齢者数が増加する超高齢社会の現在、水分制限を要する患者さんに接する機会も増えています。
栄養管理において、水分コントロール(充足と制限)は、他の栄養素を確保することと同様に重要なことです。しかし、エネルギーやたんぱく質などの必要量は体重を基に推定することが一般的ですが、水分に関しては体液バランスの観点から必ずしもこの限りではありません。水分制限を要する症例では、体内貯留を考慮し摂取可能な水分量を設定する必要があります。
例えば、体格が大きな場合は、必要なエネルギーやたんぱく質などの栄養素を充足するために、食事量を増やしたり一般的な1.0 ~ 2.0 kcal/mL のONS を活用し摂取量を増やしますが、比例して含有水分量も増え、「飲水を希望する量」と「飲水可能な水分量」に乖離が生まれてしまいます。
これらの管理栄養士を悩ませる「栄養素の充足と、水分のコントロール」に対して、水分量を抑えた超高濃度(4.0 kcal/mL)ONS を使用した報告があります。実際の栄養管理の例として、以下に紹介します。
● 4.0 kcal/mL ONS*を使用した水分コントロールのイメージ
Case Report
透析治療による水分制限のある患者に 4.0 kcal/mL ONSで飲水可能量を増量し得た1例【症例】 85 歳、男性。身長 166 cm、体重 70 kg、BMI 25.4 kg/m²、IBW 60.6 kg
【現疾患】 慢性心不全、慢性腎不全(要透析治療)
【栄養療法】 目標エネルギー量:1,800 ~ 2,100 kcal(30 ~ 35 kcal/IBWkg/ 日)、たんぱく質量:70 g(1.2 g/IBWkg/ 日)、指示水分量1,000 mL/ 日。透析治療上、体重増加抑制の必要があり、厳格な水分摂取制限が行われていた。食事摂取はなく、全量がONS の症例である。体格からの目標エネルギー量も比較的高く、一般的ONS には相当量の水分を含むことから、エネルギー量等を確保するために、飲水量で水分量の調節(制限)を行っていた。しかし、透析症例にみられる口渇感を強く訴え、飲水希望に応えるため、ONS の一部を4.0 kcal/mL ONS に変更し、目標エネルギー量を維持し、飲水可能量を増量することが出来た。
【結果】 4.0 kcal/mL ONS の使用後、飲水制限は遵守され、前回透析後と当日透析前の体重差は、未使用時の+1.7 kg から使用7 日後には+1.1 kg へと減少した。
● ONS製品変更よる可能量の差
疾患や加齢の影響で「食べられない」方への対応として、必要栄養量を充足する上でONS の使用は有効です。具体的には、治療食を解除し無理な食事量とならないようにハーフ食+ONS で対応します。
この時に少量高濃度(4.0 kcal/mL)のONS を使用することで、より食べる負担を抑えながらエネルギー・たんぱく質量の充足が可能となります。
対象者の必要量(水分量、エネルギー量、たんぱく質量、その他栄養素)を把握
食事をハーフ食とし、摂取水分量、エネルギー量、たんぱく質量、その他栄養素の量を把握します。
食べる負担をより軽減するため、できるだけ少量高濃度のONS を選択します。
4.0 kcal/mL ONS(アップリード)では、100mL あたりたんぱく質14.0g、水分は43mLです。
水分摂取量の過不足を把握するため、飲水状況の確認は必要です。
● ONSの使用時はコンプライアンスが重要となるので、十分な栄養指導が必要です。
● ONSの水分量は1kcal /mL製品では80~85%程度で、概して「少量、高エネルギー」であるほど含有水分量は少量となります。水は栄養素とは異なり、濃縮して摂ることはできません。過剰摂取だけではなく摂取不足とならないよう、厳重に飲水状況を確認します。
● ハーフ食にすることで、ビタミン・ミネラルなどの不足がないかを確認します。
ご注意
●管理栄養士の指導のもとに行ってください。
●パックに残ったONSは、しっかりと封をして冷蔵庫に保管します。
保管は、開封後24時間以内を目安にしてください。
*
引用文献
(※1)日本心不全学会ガイドライン作成委員会編.高齢心不全患者の治療に関するステートメント.2016;10-5
(※2)今井圓裕.日本老年医学会雑誌.2014;51(5):385-400
(※3)日本透析医学会.わが国の慢性透析療法の現況.2017:711-5.2019年9月10日アクセス
テルモ株式会社
〒151-0072 東京都渋谷区幡ヶ谷2-44-1 www.terumo.co.jp