糖尿病性足病変に対する 治療・フットケア

杏林大学医学部
形成外科 教授 大浦紀彦
日本看護協会看護研修学校
認定看護師教育課程長 
溝上祐子

2. 糖尿病性足病変の発生機序・原因・病態

下肢救済のために必要な早期発見・治療

糖尿病足病性潰瘍(DFU)の多くは、足部の軽微な外傷(胼胝・靴ずれなど)、足・爪白癬などの感染、陥入爪などに誘発されて発症します。潰瘍や壊疽の治療が不十分で重症化し、重篤な細菌感染が起こると、下肢の大切断に至ります(図1)。最近では、図1の赤枠で囲んだ状態・症状を包括した、CLTI(包括的高度慢性下肢虚血)という新しい概念が提唱されています(後述)。
常に感染を伴うわけではなく、虚血・足変形・外傷の初期状態で感染を合併することはそれほど多くありません。神経障害が発症し始めた初期から適切な創傷治療を行うことによって、重症化を防ぐことが可能です。
下肢救済のためには、壊疽や潰瘍に至る前段階で病態を診断し、早期に治療を開始しなければなりません。すなわち、胼胝や亀裂などの創傷になる前の状態から、フットケアを日常的に行うことが重要なのです。

図1 糖尿病性足病変の発症機序
図1 糖尿病性足病変の発症機序

末梢神経障害

糖尿病の3大合併症のなかで、末梢神経障害は比較的早期に発症します。糖尿病の発症から10~15年で、糖尿病に罹患した患者の半数近くが末梢神経障害を併発するといわれています。網膜症、腎症、血管障害と比較して適切に検査されることが少なく、神経障害を自覚していない患者の割合は比較的高いといわれています。
神経障害に対する検査には、腱反射、振動覚、神経伝導速度、モノフィラメントによるタッチテストがあります。これらの検査を行う意味は、客観的に神経障害の程度を評価することのほかに、患者に神経障害があるということを理解させるという患者教育の意味合いもあります。

末梢神経障害は、知覚神経障害、運動神経障害、自律神経障害に分けられます。

1.知覚神経障害

いわゆる手袋・靴下型の感覚異常からはじまる知覚神経障害は、知覚低下によって、靴ずれ、胼胝、皮膚乾燥による亀裂、低温熱傷などの創傷受傷のリスクを高めます。
熱傷を予防するためには、あんかや湯たんぽの危険性を知るなどの患者教育が必須です。
靴ずれを予防するためには、適正サイズの靴を履くことが大切です。大きすぎる靴は、靴ずれの原因となります。知覚神経障害がある患者は、靴ずれを発症したことに気がつきにくいので、靴ずれを早期に発見するために、白い靴下を装着することを勧めましょう。

2.運動神経障害

運動神経障害のために足部に以下のような変形をきたします。

1)ハンマートゥ・クロウトゥ

足趾変形のため、ハンマートゥではPIP関節背面、クロウトゥではPIP・DIP関節背面に、靴ずれによる潰瘍を形成しやすくなります(図2、3)。
足部変形を認める症例では、免荷を考慮した装具を処方する必要があります。それによって潰瘍化のリスクを減少させ、潰瘍を治癒に導くことが可能です。屋内でも靴を履かなければならないことも多いです。患者の生活習慣と家の状況から、屋内用の装具にするか、フェルトにするか、屋内での免荷の方法を選択しましょう。

図2 神経障害によって引き起こされる足部変形の例
図2 神経障害によって引き起こされる足部変形の例 zoom icon

a:第3、4、5足趾のクロウトゥ変形。足趾に毛がある(=虚血である可能性は少ない)ことに注意する。第1足趾の爪甲にも注目する。この患者は数か月前にEVTを行っており、血流がよくなってからの爪の状態はよい(拡大写真)。 b:第1足趾にクロウトゥ変形を認める。 c:第1足趾にクロウトゥ変形。趾先に潰瘍を形成している。立位でこの潰瘍部が床と接する可能性が高いため、立位での観察が必要である。 d:第2、3、4足趾にクロウトゥ変形を認める。

図3 クロウトゥ変形に伴うさらなる創傷リスク
図3 クロウトゥ変形に伴うさらなる創傷リスク

トゥボックスの天井にPIP関節部背側が当たり、潰瘍が形成され、()この部で靴ずれが起こりやすい(図4も参照)。MTP関節部()で、圧が上昇するために、胼胝を形成し、さらに胼胝下潰瘍に移行しやすい。

2)外反母趾、小趾内反・小趾側偏位

外反母趾、小趾内反・小趾側偏位により生じる第1趾、第5中足骨骨頭部、MTP関節の突出により、骨・関節に達する深達性の潰瘍を形成しやすくなります。第2足趾の背側にも創ができやすくなります(図4)。

図4 外反母趾と第2、3足趾のクロウトゥ変形
図4 外反母趾と第2、3足趾のクロウトゥ変形 zoom icon

第2足趾PIP関節背側に潰瘍の形成を認める。

3.自律神経障害

1)シャルコー変形

糖尿病性足病変では、自律神経障害による骨代謝異常(代謝が亢進する)にて、骨折しやすい状況にあります。さらに、知覚神経障害によって疼痛を伴わないことから、骨折が生じても、患者が骨折を自覚できず、歩行・荷重し続けるために、広範囲の中足部の骨破壊を起こします。
シャルコー変形の急性期では、発赤・腫脹・熱感をきたします。免荷して足部をギプス固定するTCC(total contact cast) が有効です。陳旧期には、変形によって胼胝や潰瘍を形成しやくなります(図5)。
急性期のシャルコー変形は、見慣れないと、感染と間違って皮膚切開したり、抗菌薬を投与してしまうことも多いので、シャルコー変形の可能性がある場合には、まず単純X線写真を撮影し、診断を得ることが重要です。

図5 シャルコー変形に伴う足潰瘍
図5 シャルコー変形に伴う足潰瘍
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a:シャルコー変形の陳旧例、底側に凸形のロッカーボトム変形が生じている。 b:足関節も変形している。

2)胼胝

末梢神経障害によって足部変形が起こり、足底の骨突出部に高い足底圧を生じ、摩擦・ずれのため胼胝が形成されます(図6)。
フットケアは、胼胝削りだけで終わらせてはいけません。角質を削るだけでなく、医療用フェルトなどで免荷することが必要です。フットウエアを同時に使用し、免荷、off-loadingすることが大切なのです。
胼胝下潰瘍ができた場合には、角質を削って、すぐに潰瘍を開放する必要があります(図7)。角層で覆われたまま放置すると感染を起こし、感染が深部に波及し重症化します。

図6 足底潰瘍のサイン
図6 足底潰瘍のサイン zoom icon
図7 胼胝下潰瘍
図7 胼胝下潰瘍
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胼胝下潰瘍の上にある角層を除去することによって、潰瘍を開放し、感染が起こらないように管理する。周囲の角質を削ることによって周囲からの上皮化を促進させる。

虚血(ischemia):末梢動脈疾患(PAD)

知覚障害のない患者では、虚血による著しい疼痛や間欠性跛行によって末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)であることを自覚する機会があり、比較的早期に発見できます。一方で、糖尿病患者ですでに知覚神経障害を発症している虚血のある患者は、疼痛を感じないために自分がPADであることに気がつきません。
以前には、PADは間欠性跛行になってから重症下肢虚血(critical limb ischemia:CLI)に至るといわれていました。近年は、間欠性跛行にならず(気がつかず)に突然、足趾が壊死になるタイプのCLIが増えています。そこで、糖尿病足病性潰瘍の治療を開始する前に、必ず虚血の客観的評価(ドップラー、SPP、ABIなど)を行う必要があります。

PAD(末梢動脈疾患)とCLI(重症下肢虚血)、CLTI(包括的高度慢性下肢虚血)

下肢・足の血管が、動脈硬化または石灰化を起こすと、「末梢動脈疾患(PAD)」が発症します。粥状動脈硬化や血管の中膜の石灰化による「閉塞性動脈硬化症(ASO:現在はCLIとほぼ同義)」と、血管炎の病態を呈するバージャー病も、PADの概念に含まれます。PADが重症化すると「重症下肢虚血(CLI)」になります。CLIに伴う壊疽、潰瘍の定義は、Fontaine分類のⅢ~Ⅳ度、Rutherford分類の4~6群に対応しています(表1)。
近年では、PADの他に、「神経障害性潰瘍(DFU)」を含めたものを、包括的な広義の重症下肢虚血の概念としてCLTI(chronic limb threatening ischemia=包括的高度慢性下肢虚血)と呼んでいます(図8)。

糖尿病を基礎疾患にもつPAD患者が増加した結果、今まで用いられてきた虚血の分類Fontaine分類、Rutherford分類のような単純な分類では、病態分類ができなくなってきました。そこで感染を考慮した新しい分類として、WIfI分類が提唱されました(図9)。世界的にはこの分類が浸透し始めており、診断にも用いられています(図10)。

表1 末梢動脈疾患の症状による分類
表1 末梢動脈疾患の症状による分類

透析患者でCLIと診断された場合は、下肢末梢動脈疾患指導管理加算の対象である。
*1 ABI:足関節上腕血圧比、 *2 SPP:皮膚灌流圧

図8 CLTIの概念
図8 CLTIの概念
図9 WIfI分類
図9 WIfI分類

*SPPは本来のガイドラインには含まれていないが、modified WIfI分類として公表されている。

図10 重症下肢虚血の診断のステップ
図10 重症下肢虚血の診断のステップ

COLUMN
WIfI分類

糖尿病に起因するPAD患者は世界的に増加しており、従来のCLIの概念だけでは、糖尿病性足病変をとらえることができなくなってきました。これらの患者は、次のような特徴をもっています。

  1. 主幹動脈の動脈硬化・石灰化病変:macroangiopathy
  2. 微小血管障害:microangiopathy(本来の糖尿病の合併症の基礎病態)
  3. 神経障害による変形
  4. 神経障害による虚血・創発見の遅延
  5. 易感染性(糖尿病によるもの)

これらのことからWIfI分類(図9)が提唱され、それに基づいてCLTIという概念が生まれました。

文献
東信良:重症下肢虚血の診断・分類.日本血管外科学会雑誌 2018;27:187-195.

感染(infection)等、迅速さが要求される重症化する寸前の創傷

糖尿病性足病変の病態である、末梢神経障害、虚血(末梢動脈疾患:PAD)、感染(infection)は、複合病態を呈していることが多いのですが、すぐに行うべき治療が異なります(図11)。
外来でDFUを初めて診察したときには、虚血か感染かを評価、判断します。両者がオーバーラップしていることも多いのですが、どちらを先に治療すべきかは、創傷を診察している医師に、ただちに決めてもらうことが重要です。

虚血の場合には、血流を客観的に評価した後で、血行再建を行う必要があります。さらにバイパスにするのか血管内治療にするのか、血行再建の種類を選択する必要があります。高度の感染がある場合には、ただちにデブリードマンと洗浄が必要です。このように虚血と感染では、治療方針がまったく異なります。
重要なことは、血行再建の場合には、循環器内科・血管外科への紹介を、感染の場合には、形成外科・整形外科・皮膚科への紹介を、待機することなく、外来で患者を診察した瞬間に行わなければならない点です。抗菌薬や血管拡張薬等の内科的な治療で、1~2週間待つことはまったく意味がありません。待機することは治療の成功の確率を低下させ、切断のリスクを上昇させるので、行うべきではありません。

図11 DFUの治療アルゴリズム
図11 DFUの治療アルゴリズム

糖尿病患者の足部は、末梢神経障害のために外傷の悪化を招きやすく、もともと糖尿病の易感染性から容易に感染が増悪します(図12)。

足部は皮下の直下に腱、腱膜が走行しているため、トンネル状の腱鞘の中を腱組織に沿って感染が上行します。足底には、内側筋区画、中央筋区画、外側筋区画の3つの筋区画があり、これらの区画に沿って感染は上行します(図13、14)。

図12 足部感染(fI)のグレード(WIfI分類より抜粋)と、高度感染の例
図12 足部感染(fI)のグレード(WIfI分類より抜粋)と、高度感染の例
図12 足部感染(fI)のグレード(WIfI分類より抜粋)と、高度感染の例
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図13 足部の筋区画
図13 足部の筋区画
図14 外側筋区画・中央筋区画への感染例
図14 外側筋区画・中央筋区画への感染例
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a:第5中足骨骨頭部の胼胝下潰瘍から感染を起こした症例。 b:外側筋区画、中央筋区画ともに発赤と圧痛があり、その部位を長軸方向に切開した。 c:原則的に長軸に切開するが、この症例では感染コントロールのために、排膿する空間の方向に沿って横軸切開を追加した。

糖尿病腎症は重症化すると透析に移行します。平成28年に透析治療を受けている人は約33万人ですが、透析患者の「糖尿病性足病変」の急増は見逃せません。透析は、糖尿病腎症の最重症形です。透析患者の足病変は、神経障害によるDFUよりも虚血を伴うPADやCLIが多いため、局所的にも全身的にも重症な状態といえます(図15)。

図15 フットケア外来の階層構造
図15 フットケア外来の階層構造
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