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糖尿病性足病変に対する 治療・フットケア
形成外科 教授
認定看護師教育課程長
3. 糖尿病患者の足の評価法
糖尿病患者の足のアセスメントの際には、以下の6点について観察し、評価していきます。
①形状 ②色 ③におい ④温度 ⑤疼痛 ⑥皮膚
また、どのくらいの距離を歩行しているのか、歩行可能なのかを確認することも重要です。
足をみる
糖尿病性足病変のリスクを早期に発見するためには、糖尿病患者の足をしっかりと「みる(見る、診る)」ことが必要です。足の観察のポイントを図1に示しました。これに沿ってみていきましょう。

1. 皮膚の色
末梢動脈疾患(PAD)の場合は、毛細血管前後の血管が拡張しているため、患肢を下垂させると皮膚色が赤色、あるいはうっ血色になります。逆に、挙上させると蒼白になります(図2)。また、足趾、足底に網状斑、チアノーゼを認める場合は、ブルートゥ症候群を発症していることがあります。色調が不良である場合には、客観的な血流評価を行います。

a:足下垂時には皮膚色は赤色になる。 b:足挙上時には皮膚色は蒼白になる。重症下肢虚血において皮膚色が蒼白になる症状は、挙上した高さに抗して血流を足趾に送るだけの血圧がないことを意味する。
2. 潰瘍の有無
1) PADによる潰瘍
PADによる虚血性潰瘍は、足趾や踵部に形成されやすく、経過とともに乾燥壊死となって黒色に変色することが多いです。虚血の評価が困難な場合は治療を控え、ABIやSPPなどの血流検査を優先します。
2) 神経障害による潰瘍
神経障害による潰瘍は、湿潤状態の壊死で感染を併発していることが多く、滲出液が多いのが特徴です。感染の徴候である発赤を認めた場合は、歩行を禁止し、足関節の運動を制限するために足関節をシーネ固定します。糖尿病の診断、治療が得られていない患者もいるので、HbA1cなどを検査し、糖尿病内科を受診してもらいます。
3) 足の変形
前の章で紹介したように、外反母趾、ハンマートゥ、クロウトゥなどの足趾変形をきたします。図3に示した糖尿病患者の足は、それらが同時に起こっている例です。また、変形より荷重がかかる部位に胼胝(べんち)が形成されます。
ハンマートゥでは、突出したMTP関節部が脆弱になり、潰瘍化し、関節が解放されやすいです。これらの症状を認める患者には、フットウエアが必須です。
足趾部がお互いに圧迫し合うために、隣接する足趾に褥瘡が発生しやすいので、創傷被覆材のフォームを挟んで予防します(図4)。

①外反母趾、②ハンマートゥ、③小趾内反。

足趾間に創傷被覆材のフォームを挟んで褥瘡を予防する。
4)足部の毛
虚血を認める場合は、足趾や足背の脱毛がみられることがあります。
足を触る:知覚神経障害の有無の確認
知覚鈍麻を認識していない糖尿病患者には、目を閉じてもらって足趾を軽く綿棒で触り、触っている感触のある足趾を当ててもらいます。知覚神経障害の疑いがある場合は、深部腱反射検査、振動覚検査、触圧覚(モノフィラメント)検査を行います。モノフィラメント検査の方法を以下に記します。
なお、正式な検査ではありませんが、モノフィラメントがない場合は「竹ぐし」でも代用できます。
- 患者を臥床させる
- 患者にモノフィラメントを目視させ、上肢(手背)に「皮膚に触っているのがわかりますか」と確認する
- 手で触った感覚を体験した後、眼を閉じてもらい、「足に当てますから当たっている場所を教えてください」と伝え、患者の足側へまわってモノフィラメントを足底に当てる
- モノフィラメントを足底に垂直に当て、彎曲するまで2秒以上押し当てる
- モノフィラメントを押し当てた部位ごとに、当たっていると感じる部位を確認する
- 左右を検査する
- 3回以上行い、2回以上正答であれば知覚正常と評価する
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