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公開日:2024/7/24
第18回医療の質・安全学会学術集会
世界はチームでできている — 多様性の森へようこそ —
抜去リスク軽減を目的とした、新たな固定テープの使用経験
〜 ハンズオンセミナー 〜【開催】2023年11月25日(土)・26日(日)神戸国際展示場1号館2F
【共催】株式会社ニトムズ
チューブ・ドレーンの自己抜去や再挿管は患者さんのリスクや苦痛が大きく、また処置にかかわる看護師の負担も少なくありません。そのため抜去予防が重要ですが、具体的な対策に難渋している看護師も多いように思います。やむを得ず身体拘束するしかない場合もありますが、身体拘束をせずに安全に行えるチューブ・ドレーン管理の拡充が求められています。本セミナーでは、抜去リスクの軽減を目的として開発された固定テープ「ミゼアセーフ™」を導入した2病院での使用経験についてご紹介いただきます。
一般財団法人太田綜合病院附属 太田西ノ内病院 看護部
看護部長 佐藤マチ子先生
ミゼアセーフ™導入の経緯
当院は、稼働病床数868床、病棟数22病棟で、3次救命救急センター、脳神経センター、循環器センター、地域周産期母子医療センターを有し、急性期医療を中心とした地域での中核病院の役割を担っています。
はじめに、当院でのミゼアセーフ™導入の経緯についてお話ししたいと思います。
ミゼアセーフ™の導入前は、点滴固定にフィルムドレッシングとサージカルテープを用い、ラインはループを作って「Ω留め」で固定していました。サージカルテープがロール状になっているためテープを切るのに手間がかかる、摩擦によってテープの四隅が剥がれやすい、ループにしたラインに引っかかり自己抜去の要因になっていることなどが問題点としてありました。そのため、2022年度には点滴の自己抜去件数が増えている状況でした。
自己抜去件数の減少のためには点滴の固定方法や固定テープの検討が必要と考え、2022年11月にメーカーに依頼し、固定テープ「ミゼアセーフ™ W」の説明会をしていただきました。その後、点滴の自己抜去件数が多かったB病棟・J病棟・O病棟の3病棟で2023年1月から1か月間、試用しました。ちなみに、B病棟は消化器内科病棟、J病棟は脳神経外科病棟、O病棟は完全個室で様々な診療科の患者さんがいる病棟です。
ミゼアセーフ™ Wの導入により自己抜去数が減少
試用期間中は、自己抜去件数は大きくは変わりませんでした。しかし看護師から、「(テープの高い固定性により)自己抜去するまでに時間を要するため、患者さんがラインを引っ張っている段階で発見できる」との意見が聞かれたため、これらの3病棟では2023年2月からミゼアセーフ™ Wを導入することにしました。導入後、3病棟すべてで自己抜去件数が減少し、合計33件の減少を認めました(図1)。
ミゼアセーフ™ Xを全病棟に導入
ミゼアセーフ™ Wの導入実績を踏まえ、当院では全病棟での導入を検討することにしました。その際、ミゼアセーフ™ Wより簡単に貼付でき、コストも安いミゼアセーフ™ Xをメーカーより紹介いただき、こちらを2023年9月から導入しました。一方、ミゼアセーフ™ Wは、固定性がより優れているのでドレーンやチューブ類に使用することにしました。
ミゼアセーフ™ Xへの切り替え前後での入院延べ患者数と点滴自己抜去件数についてお話しします。導入時(2022年9月)の入院延べ患者数は1万2,094人で、自己抜去件数が35件、一方、2023年9月の入院延べ患者数は1万3,341人と1,247人増加していますが、自己抜去件数は27件で8件減少しました。2022年10月と2023年10月の比較でも自己抜去件数は減少しています。
ミゼアセーフ™導入のメリット
まとめになりますが、ミゼアセーフ™ WおよびXの導入により、自己抜去件数は大幅に減少しました。またテープの高い固定性により、それまでは抑制していた患者さんを抑制せずに看護ができるようになりました。
ミゼアセーフ™ Xはクロスする形状で、重ね貼りにも強い素材のため、しっかり固定できます(図2)。操作も容易なため、新人看護師でも簡単に貼れ、作業時間も短縮しました。通気性も高く、蒸れにくいため、皮膚トラブルも少なく、看護師から「皮膚かぶれがない」「皮膚に優しい」という声も聞かれます。
これらのミゼアセーフ™の特徴は、患者さんの負担軽減はもちろん、看護師の業務効率化にも寄与するものであり、自己抜去対策として有用な固定テープであると考えます。
社会医療法人財団仁医会 牧田総合病院 医療安全管理室
室長 松本朋美先生
ミゼアセーフ™ W導入前の当院の状況
当院は東京都大田区の西蒲田にあり、総病床数は290床、うち急性期の一般病棟が260床で、HCUとSCUを保有しています。
当院でのミゼアセーフ™ Wの導入は2022年からです。SCUを保有していることもあり、脳神経外科の患者さんの受け入れが多く、経管栄養や投薬のために胃管挿入することが多いのが現状です。以前は胃管をエレファントノーズで固定していましたが、固定が安定せず、自己抜去が少なくありませんでした。そのため、自己抜去予防のために「胃管を挿入したらミトンをする」というような状況がありました。
胃管の抜去予防は確かに大切ですが、予防方法がすぐ身体拘束につながることに違和感を感じていました。そこで、ほかの予防方法がないか検討したところ、「ミゼアセーフ™ W」という固定テープがあることを知り、導入することにしました。
導入時には、ミトンに代わる安心・安全な固定法、見た目も不快感が少なく、患者さんに負担がかからない固定法の確立を目標としました。さらに、院内で統一した固定法を確立したいという思いもありました。
ミゼアセーフ™ Wの導入により、身体拘束が減少
当院でミゼアセーフ™ Wを導入したことによる変化がみられました。導入前後での胃管自己抜去の状況と、身体拘束(ミトン)使用率に変化があったのです。
胃管自己抜去について、2021年4月から2023年9月における平均件数は、2021年度は 8件/月、2022年度は9件/月、2023年度は7件/月と大きな変化はみられませんでした。しかし身体拘束使用率は、21年度は平均で9.9%/月だったのが、22年度には6.5%/月と下がり、23年度は集計途中ですが6.7%/月と減少傾向にあります(図3)。ミゼアセーフ™ Wの導入により抜去予防対策の選択肢が増えたため、「まずは(拘束以外の)対策をする」という考えが看護師に少しずつ構築できているのではないかと考えています。
コスト面から見たメリット
ミゼアセーフ™ Wを導入したことによるコスト面についても気になるところです。当院では現在「認知症ケア加算Ⅰ」を取得しており、身体拘束がなければ 1日160点を14日間算定できますが、身体拘束を行うと6割の96点になってしまいます。身体拘束をしないほうが病院としてメリットがあるわけです。そのためミゼアセーフ™ Wを購入しても身体拘束が減れば、総額として収益が上がる可能性があります。
また、ミゼアセーフ™ Wは固定性が高く、患者さんが抜去しようとしている時に多少時間的な猶予があるため、看護師が気づいて防げることもあります。抜去されて再挿入することを考えると、無駄な仕事が減り、看護師の仕事にゆとりができると思います。
ミゼアセーフ™ W導入後の当院の状況
ミゼアセーフ™ Wを使用しても抜去されることはあります。当院で多くみられたのは、鼻とミゼアセーフ™ Wの間にできる隙間に指を入れて抜くというものです(図4)。そのため、鼻元に隙間をつくらないようにミゼアセーフ™ X miniで補強する方法を院内の認知症ケア委員会と考えました。さらに頬の部分にミゼアセーフ™ Xを貼ることで、抜去予防の強化もしています(図5)。
最後にまとめです。ミゼアセーフ™ Wの導入により、身体拘束がかなり減りました。身体拘束以外の「選択肢が増えた」ことが大きいと思います。また「胃管はミゼアセーフ™ Wで固定する」とケアの統一ができたことも大きな成果です。
当院では、今後は胃管以外での使用についても検討したいと考えています。
本記事で紹介しました「ミゼアセーフ」に関しての詳細やサンプル請求等は下記サイトでご確認ください