• タイアップ記事 >
  • 第27回 日本褥瘡学会学術集会 〜2025年問題を多職種で乗り越える〜「成果の上がるポジショニング 〜隙間を埋めるから支えるへ、属人化から標準化へ」~ランチョンセミナー6~

公開日:2026/6/10

第27回 日本褥瘡学会学術集会
〜2025年問題を多職種で乗り越える〜

成果の上がるポジショニング
〜隙間を埋めるから支えるへ、属人化から標準化へ

ランチョンセミナー6
座長・演者
下元 佳子先生

一般社団法人ナチュラル
ハートフルケアネットワーク
代表理事
演者
土屋 隼人先生

医療法人渓仁会札幌西円山病院
皮膚・排泄ケア特定認定看護師
2025年8月29日(金)
パシフィコ横浜ノース4階
第6会場

Introduction

 ポジショニングは医療現場で広く周知されているケアである一方、「現場になかなか浸透しない、定着しない」「本来目指すべき『目的や効果』まで行きつかない(成果が上がらない)」といった声も聞かれます。
 その理由については、実践手法・教育体制・物品の管理など様々な要因が考えられ、これらの要因が複雑に絡み合っている状況も窺われます。また、できる人が行うといった「属人的な取り組み」として実施されていることも少なくなく、それが「成果の見えにくさ」「ケア現場での継続しづらさ」につながっているとの指摘もあります。
 そこで本セミナーでは「成果の上がるポジショニング〜隙間を埋めるから支えるへ、属人化から標準化へ」をタイトルに、「成果の上がるポジショニングの実践のために必要な取り組み」について理学療法士であり、長年ポジショニングの実践・教育に注力されてきた下元佳子先生に、「ポジショニングの質向上と現場での標準化に向けた教育方法の検証」について皮膚・排泄ケア特定認定看護師の土屋隼人先生にご講演いただきました。

共催:第27回日本褥瘡学会学術集会/アルケア株式会社

Lecture 1
スキルだけではもう限界
一般社団法人ナチュラルハートフルケアネットワーク 代表理事
下元 佳子先生

ポジショニングは、安楽で快適な姿勢を「日常的に」提供すること

 ポジショニングというと「褥瘡予防のために拘縮のリスクの高い人へ行う除圧ケア」だと思われることが少なくありません。しかしポジショニングの本来の目的は「患者さんの活動や行動に合った必要な姿勢をつくる、そのために快適な姿勢を援助すること」です。したがって急性期から生活期までのすべてのステージにおいて姿勢や動作の援助が必要な患者さんに対して「治療・健康促進」「自立支援」「二次障害予防」のために行われるべきケアだと考えます。
 たとえば急性期の患者さんが、ねじれやゆがみが残っている姿勢で柔らかいマットレスに寝ていると、腰部の沈み込みから重さが臀部に集中し、また胸郭も狭まって呼吸が苦しくなります。このような姿勢で過ごすことで拘縮や廃用を促進させることになるのです。私たち医療・ケアの専門職は、療養下での不安定な姿勢・不快な刺激が患者さんの治療や健康を阻害することに対して注意を払い、日ごろから姿勢を整えるよう心がけることが重要です。

ポジショニングの実践を変えるために必要な「教育」と「体制整備」

 多くのケアスタッフを抱える現場では、ポジショニングの実践上での課題も少なくありません。「実践しているが褥瘡がよくならない」「職員のスキルにばらつきがある」「指導できる人がいない」などといった声もよく聞かれます。私は現場での実践が変わるには、スタッフの教育(ポジショニングの「ファーストステップ」の習得)と体制整備(ポジショニングを組織的な取り組みにすること)が何より重要だと考えています。ここでは、教育と体制整備のポイントについて述べたいと思います。

教育のポイント:シンプルに基礎知識だけを伝える

 スタッフへの教育では「テクニック(やり方・手技)」を伝えるのではなく、「基礎(考え方)を伝える」ことがポイントになります。
 ポジショニングの「基礎を伝える」ときに最も重要なのは「隙間を埋めるのではなく、重さを支える」ことと「重さを支える(べき)場所を理解する」ことです。「隙間を埋める」ことが目標になると圧分散は実現できません。
 「ファーストステップ」の教育では、このような基礎知識だけをシンプルに伝え、スタッフ一人ひとりが確実に理解・習得できることを目指します。

体制整備のためのポイント:「属人的な取り組み」ではなく「組織での取り組み」とする

 できる人のスキルに頼るといった属人的な取り組みでは成果が上がりにくく、継続しづらいです。組織での取り組みとすることが重要で、それには体制整備が必要です。
 体制整備のポイントは以下の3つです(図1)。1つ目が指導者の存在や指導内容の決定といった「教育体制の整備」、2つ目がプランナーの存在やアセスメント基準・周知方法の決定などの「アセスメント・プランニングから実施までの体制整備」、3つ目がクッションや備品の管理などの「必要な環境の整備」です。これらの体制を整えることでポジショニングが「組織での取り組み」として機能していきます。

図1  ポジショニングの実践に必要な組織の体制整備

「ポジショニングのファーストステップ」で習得する内容

 先に教育のポイントとして基礎知識を確実に習得することが重要だと述べました。ここではスタッフ一人ひとりに習得してほしい基礎知識「ファーストステップ」の教育内容をいくつか紹介します。

「重さを支える場所」と「動きを出す場所」を理解する

 私たちの身体は「重さを支える場所」と「動きを出す場所」に分類されます(図2)。ポジショニングでは「重さを支える場所」に重さを乗せ、「動きを出す場所」には負荷(重さ)をかけないようにします。

図2  ポジショニングに必要な身体の仕組みを理解する

クッションは「隙間を埋める」のではなく、「重さを支える」もの

 クッションで隙間を埋めている場面を見かけますが、これは正しくありません。隙間を埋めて接触面積が増えても体圧は分散されません。重さを支えないと体圧分散はできません。したがって「隙間を埋める」のではなく「重さを支える」という発想が大事です(図3)。

図3  クッションは「隙間を埋める」のではなく「重さを支える」もの

クッション挿入後には身体の上から軽く押し付ける

 身体の重さをクッションに乗せるにはちょっとしたコツがあります。特に拘縮のある方の場合など、クッションを挿入しただけでは重さが乗りづらいので、身体の上から軽く押し付けると乗りやすくなります(図4)。

図4  重さをクッションで支える

体位ごとでなく、部位ごとのポジショニングを習得する

 各部位の重さの支え方を身につけることが大事です。私たちが行っている「ファーストステップ」の研修では仰臥位・側臥位といった体位ごとのポジショニングは扱っていません。患者さんごとに体の形や拘縮の形が異なるため、個別性が求められるからです。部位ごとの重さの支え方が習得できると、現場でのポジショニングの成果が大きく変わってきます。

ポジショニング後には圧抜きが重要

 ポジショニング後は圧抜きを行います。圧抜きを行うだけで圧がかなり下がります。圧抜きは介助補助手袋(スライディンググローブ)などを用いて行います。

ポジショニングのカルチャーチェンジを目指して

 ここで紹介した「ファーストステップ」の内容を実施するだけでもポジショニングの成果は変わってきます。私は忙しい現場だからこそ、教育や組織体制の整備が必要だと考えています。ポジショニングを組織での取り組みとすること、これまでのポジショニングに対する考え方や実践のあり方を見直していくことが大切です。このような「ポジショニングのカルチャーチェンジ」を皆さんとともに目指していければと思っています。

Lecture 2
ポジショニングの標準化とその先へ
~プロップス・クッションとツールの活用
医療法人渓仁会札幌西円山病院  皮膚・排泄ケア特定認定看護師
土屋 隼人先生

これまでの当院でのポジショニングの実施状況

 札幌西円山病院(以下、当院)は病床数663床の(障害者施設等一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、介護医療院を有する)多機能型慢性期病院です。平均在院日数118日、平均年齢82.7歳と高齢者の長期間入院患者も多く、褥瘡リスク保持者が約8割で、拘縮や浮腫のあるハイリスク保持者も24%います。
 褥瘡管理上の課題として、新人研修でポジショニングの項目があるものの、現状ではその教育は病棟ごとのOJTが主体であること、拘縮や褥瘡の発生時に統一したケアの実施が困難なことがありました。しかし、数多くいる看護師の教育のために繰り返し集合研修を行うことは非現実的、かつ効果が薄いと感じていました。
 そのようなときに教育の質向上やケアの標準化に寄与する可能性のある提案を企業(アルケア株式会社)から受け、共同検証を行うことになりました。具体的には、除圧グッズ(新規に開発されたポジショニングクッション「プロップス・クッション」)や教育支援用ツール(ポジショニングに関する冊子や動画)の使用の有用性について検証を行いました。ここでは実施した研究の一部を紹介します。

研究の概要

研究方法

 新人看護師20名と既存看護師(主任とリンクナース)20名の計40名を対象に、図1の内容について検証しました。

図1  研究内容・方法について(一部抜粋)
図2  コンフィット(当院で同タイプを普段か
ら使用)
図3  プロップス・クッション

図4  教育支援用ツール『ポジショニング
のファーストステップ』(冊子・動画)

研究結果

ポジショニング後の体圧と圧分散について
 体圧(最大値)については「コンフィット」と「プロップス・クッション」とで、新人看護師・既存看護師ともに有意差はみられませんでした。
 圧分散では「プロップス・クッション」使用時のほうが、新人看護師・既存看護師ともに総面積を有意に広げられていました。
ポジショニング後のねじれ*1について
 全体を通して新人看護師では20%にねじれがみられましたが、教育支援用ツール(冊子・動画)視聴後はねじれが比較的少なくなっている傾向にありました。一方、既存看護師の場合、全体で30%にねじれがみられ、教育支援用ツール視聴前には新人看護師よりねじれが多かったですが、視聴後にはねじれがゼロになりました。教育支援用ツールの活用によりねじれが是正されたと考えられます。
*1 本研究では、肩や骨盤などの左側が後方にひかれている(回旋している)状態を「ねじれ」としている
ポジショニング方法の変化について
 教育支援用ツール視聴前の手順①②では、新人看護師・既存看護師ともにクッションの選択や挿入方法が様々で、統一性がありませんでした。一方で、視聴後の手順③では、動画のポジショニングを比較的再現できており、統一性のあるクッションの挿入が行えていました。また、ねじれも是正されるなど動画の効果が認められました。
教育支援用ツールについて(アンケートの回答)
 教育支援用ツールについて「『隙間を埋めるのではなく重さを支える』という内容は理解しやすいか」「冊子や動画があったほうが実施しやすいか」を尋ねたアンケート結果では、有意差はなかったですが、新人看護師・既存看護師ともに高得点を示しており、「ツールの内容はわかりやすい」と受け止められていました。

体圧(最大値)が下がった ポジショニング例の紹介

 体圧(最大値)については「コンフィット」と「プロップス・クッション」とで有意差は認められませんでしたが、その中でいくつか左臀部の最大値が下がっているケースがありました。それらについて紹介したいと思います。

ポジショニング後に圧抜きを実施

 1つ目はポジショニング後に圧抜きを行っていたケースです。体位を変えるだけでなく「圧抜き」が重要なことがわかります。

外袋の白いラインに誘導されて大腿部の根元までクッションを挿入

 2つ目は「プロップス・クッション」使用時に大腿部の根元まで挿入しているケースです。これらのケースでは「プロップス・クッション」使用時に、アキレス腱付近から大腿部の根元までクッションが挿入されていました(図5)。これは「プロップス・クッション」には外袋に白いライン(挿入の目安となるガイド線)が入っており、ラインに膝の位置を合わせるよう誘導され、それにより大腿部の根元までクッションが挿入されたことが推測されます。結果として「重さを支える場所」である大腿部がクッションで支えられ、体圧が下がったと考えられます。

図5  ウェーブ形のクッションの挿入の違いと体圧

ポジショニングケアの標準化に向けて

 今回の研究では、「プロップス・クッション」の特性を活かすことで総面積の拡大(体圧分散の向上)が図れることが示唆されました。また、外袋の白いライン(ガイド線)の誘導によって「隙間を埋める」から「支える」へとクッションの挿入方法が変化したこと、それにより体圧を下げることにつながったケースも経験しました。さらに、教育支援用ツール(冊子・動画)については、結果(ねじれ・総面積・最大値の改善)だけでなく、プロセス(方法の改善・圧抜きの実施)にも効果があることが示されました。
 多忙な臨床の場においてもこのような教育支援用ツールの活用やクッションの特性を活かした実践により、ねじれがなく、圧分散されるポジショニングを行える可能性があると考えられます。
 全職員が統一されたポジショニングを実施するのはなかなか困難だとは思いますが、今回の知見も踏まえながら現場でのポジショニングの標準化や質の向上に向けて、今後も取り組んでいきたいと思います。

ポジショニングに関する資料のご要望はこちら(外部サイトへ移動します)

ディアケアに会員登録(無料)すると
できること

●実践ケアのコツなど「限定コンテンツ」が見られる!

●一部の記事で、勉強会などに使える資料をダウンロード(PDF)できる!

詳しく見る


ディアケア プレミアムに登録すると
できること

(月額800円~/無料お試しあり/法人利用も可能)

●エキスパートのワザやコツが学べる「実践ケア動画」が見られる!

●各分野のエキスパートによる「期間限定セミナー動画」が見られる!

●書店で販売されている本などが「電子書籍」で読み放題!

閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる