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  • 【後編】高知県立あき総合病院におけるノーリフティングケア導入の経緯-カギとなったのはディスポタイプのスライディングシートの使用-

公開日:2024/3/13

高知県立あき総合病院における
ノーリフティングケア導入の経緯【後編】
-カギとなったのはディスポタイプのスライディングシートの使用-

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メリットと今後の課題

脳卒中リハビリテーション看護認定看護師
和田匡生氏

 冒頭でも述べたとおり、病院などの医療機関では、ノーリフティングケアを取り入れる施設はまだ少数ですが、中屋看護部長は病院での取り組みの必要性を強調します。
 「腰痛を抱えるスタッフは少なくありません。今後、看護師の定年が延長されることも考えると、スタッフの健康管理が重要です。医療現場でもノーリフティングケアを取り入れる必要性は高まると思います」(中屋看護部長)。
 人材確保の面でも重要性が指摘されます。
 「病院として良い人材を確保していくという視点からもノーリフティングケアはとても重要です。直接的な収入になるわけではありませんが、スタッフの離職防止や労災防止などに対して大きな効果がある。結果として質の高い職員の確保につながるはずです」(経営事業課 塔岡氏)。
 あき総合病院では現在、モデル病棟でのトライアルを経て、全職員を対象にスライディングシートの使用を周知している段階ですが、課題がないわけではありません。一つがスタッフへの教育・周知方法です。
 「全職員対象に実技研修を行おうとしましたが、すごく時間がかかってしまう。そこで短時間で見られる手技の動画を委員会で作成しました」(中屋看護部長)(写真1)
 もう一つは医療のリスクマネジメントの問題です。
 「急性期の場合、入院環境としてのスライディングシートの活用状況について評価する必要があります。アセスメントやケアプランニングを修正していかないといけないですし、ドレーンやモニターを使用した医療行為も入ってくる中で、このスライディングシートの使い方でよいのかを評価・修正していく必要があると思います」(看護師 和田氏)。

写真1 スライディングシートの使用法(横移動)を解説した動画
動画は腰痛予防委員会のメンバーが作成。音声での簡潔な解説とともに、注意事項などがテロップで表示される

ノーリフティングケアの推進・継続が、医療の質を支える

経営事業課 塔岡徹郎氏

 いくら良い取り組みでも継続できなければ意味がありません。今回、あき総合病院の取り組みで感じたのは、病院全体でノーリフティングケアを推進していくという組織としての強い意思決定とともに、現場に受け入れられる環境整備を行っていくことの重要性です。あき総合病院の場合は、手技を示した動画作成やディスポタイプのシートの導入など具体的な対策をとり、病棟で取り組みやすい環境を整備したことにより、看護師がその必要性を認識し、意識変容につなげることができました。
 あき総合病院では今回のシートの導入に加え、今後はスライディングボードを使った移乗のために「肘跳ね上げ式の車いす」の購入や、リフトの導入も計画しているとのことです。
 中屋看護部長はこうも言います。「ノーリフティングケアの実践は、これまでの常識を見直す作業でもあります。人の意識を変えるのは大変です。自分の役割は、患者さんのために、そしてスタッフ・職員のために、現場をよい方向に変えていこうと積極的に取り組んでくれる人たちを支えることだと考えています」。
 日本では、少子化・超高齢化と同時に「生産年齢人口の減少」が言われています。そのため、職場における「長く働ける環境づくり」がますます求められていくことでしょう。特に、人材の質こそが重要である医療分野においては、それに資するものとして、ノーリフティングケアがよりクローズアップされていくのではないでしょうか。

「患者ファースト」の姿勢とノーリフティングケア

(下元佳子:一般社団法人ナチュラルハート
フルケアネットワーク代表理事・理学療法士)

 あき総合病院の場合、腰痛予防委員会のメンバーも理想的で、立ち上げ時から産業医や看護部長をはじめ、事務担当者まで加わっています。初めからこのようにメンバーがそろっているところはなかなかありません。最近はさらに進んで、病院の全職種が委員会メンバーに加わっていると聞きました。このように、病棟単位やケア単位ではなく、病院全体で腰痛をなくしていくという取り組みになっていることが、成功の大きなカギだと言えます。
 ノーリフティング(ケア)に取り組むには、使う人が多いもの、みんなが取り組めるところから始めるのがよいでしょう。あき総合病院は急性期病棟が多いため、ベッド上のケアということで、スライディングシートの使用から始めました。シートをいちいち取りにいくのは面倒なため、使いたいときにすぐ使えるように「ディスポタイプ」のシートを導入したと言います。このようにツールをしっかり使える環境をつくることで、定着につなげました。
 また記事で印象に残ったのが、産業医の森尾医師の「心身とも万全の状態で仕事のできる環境を整えないとケアの質が下がる」という言葉です。「患者ファースト」を掲げる医療だからこそ、病院の産業医や管理者がこういった認識をもつことは重要だと思います。
 現状は、ノーリフティング(ケア)を導入しているのは介護施設が多く、病院は少ないです。ただこれからは、医療・介護のシームレスな連携が声高に言われているので、治療情報と併せてケア情報の連携も行われていくでしょう。そのときに病院から、ノーリフティングケアについても情報提供がされるようになれば、地域は大きく変わるでしょう。先日、中屋看護部長が「地域の中核病院として、院内の腰痛予防だけでなく、地域のノーリフティングケアに貢献できる病院になりたい」と話されていて、嬉しく思いました。今後に大いに期待しています。

【コラム】こんなときどうする? スライディングシートを使用した上方移動

スライディングシートを使用することで、ベッド上の移動や寝返りの時の介助者の腰の負担などを軽減させることができます。しかし介助時に、介助者の立つ位置や体の向きが適切でないと、腰痛を引き起こすリスクがあるため、注意が必要です。

シートを用いた上方移動時の注意点
シートを用いて上方移動を行うときに、患者さんとの距離が遠いと、介助者は腕の力で引き上げたり、腰をひねりながら移動させるため、身体に負担をかけてしまいます(腰痛の原因)(写真2)

介助者に負担の少ない方法は?
ベッドの高さは、握りこぶしをつくり、腕を自然におろしたときに接触する位置にします。上方移動時には、①患者さんを手前に寄せ、患者さんと介助者の体を密着させる、②介助者は前後に足を開き、鼻・へそ・足先を体重移動する方向に向ける、③後方の足から前方の足への体重移動で移動させるようにします(写真3)

写真2 患者さんとの距離が遠いと上方移動させるのに
腕の力が必要。また体がベッドの方を向いていると移
動させるときに腰をひねることになる
写真3 患者さんを手前に寄せ、患者さんの臀部に腕を回
して、体重移動で移動させる。鼻・へそ・足先を体重移動
する方向に向ける

記事をお読み頂きありがとうございました。
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