糖尿病性足病変
に対する
治療・フットケア

杏林大学医学部
形成外科 教授 大浦紀彦
日本看護協会看護研修学校
認定看護師教育課程長 
溝上祐子

2019年5月公開

目次

1.糖尿病足病性潰瘍とは

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糖尿病の多様な病態は、微小血管障害から派生し、糖尿病腎症、網膜症、神経障害の3大合併症を引き起こします。微小血管の閉塞によって各臓器に栄養や酸素が行き渡らなくなると、臓器障害が生じます。これらの糖尿病の3大合併症の次に重要なのが、動脈硬化による「血流障害」です。この「糖尿病神経障害」と「動脈血流障害」、そして「感染症」によって複合的に発症する病態が「糖尿病足病性潰瘍(diabetic foot ulcer:DFU)」です。

2.糖尿病性足病変の発生機序・原因・病態

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下肢救済のために必要な早期発見・治療

糖尿病の多様な病態は、微小血管障害から派生し、糖尿病腎症、網膜症、神経障害の3大合併症を引き起こします。微小血管の閉塞によって各臓器に栄養や酸素が行き渡らなくなると、臓器障害が生じます。

3.糖尿病患者の足の評価法

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糖尿病患者の足のアセスメントの際には、以下の6点について観察し、評価していきます。

①形状 ②色 ③におい ④温度 ⑤疼痛 ⑥皮膚

4.虚血があるかどうかを調べる①:簡便な血流評価の方法

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1.皮膚温
虚血の場合は、室内や夏季でも皮膚は冷たく冷感があります。

5.虚血があるかどうかを調べる②:客観的な血流評価の方法

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重症下肢虚血(CLI)の治療を行う前には、血流の評価が必要です。虚血の評価には、脈拍触知や血管雑音聴取の他に、客観的評価を行います。

6.PAD、CLIの治療の実際:血行再建術

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バイパス術と血管内治療(EVT)

末梢動脈疾患(PAD)が重症化した病態である重症下肢虚血(CLI)の予後は不良です(図1)。CLIの治療は、すみやかな血行再建術と、その後の感染制御を主とした創傷治療と全身管理です。

7.足病の創傷治療の実際:外科的デブリードマン・切断術

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壊死組織を尖剪やメスなどで切除することを、外科的デブリードマンといいます。デブリードマンや切断術を行うための条件として、SPPなどの血流の評価が必須です。十分な血流が得られていない場合は、デブリードマンや外科手術を行う前に、血行再建を行っておく必要があります。

8.創処置の基本:洗浄・足浴

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洗浄や足浴は、汚染物質を取り除いて細菌数を減少させ、創部を清浄な状態に保つために大切です。 フットケアの対象となる患者のなかには、日常のスキンケアが不適切で、多くの角質や汚れが付着しているにもかかわらず、自覚症状のない人が少なくありません(図1)。そうした患者の意識を、自分の足の創傷を予防するという方向に向ける意味でも洗浄は重要です。

9.外用薬・創傷被覆材による創傷管理

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血行再建前・血行再建後の創傷管理

重症下肢虚血(CLI)の血行再建前には、侵襲的なデブリードマンは避け、感染予防と壊死組織の乾燥化のために、殺菌力と水分吸収効果をもつ外用薬を使用します。具体的には、スルファジアジン銀よりも白糖・ポビドンヨード配合製剤、カデキソマー・ヨウ素などを用います。

10.局所陰圧閉鎖療法(NPWT)の使い方

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局所陰圧閉鎖療法とは

局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)は、創傷を創傷被覆材で密閉し、陰圧を負荷することによって治癒を促進させる物理療法です。

11.スキンケアの実際

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足の皮膚の特徴と角層のバリア機能

1.足の皮膚の特徴
足底部の皮膚は、他の部位と異なり無毛で皮脂腺がないかわりに、汗腺(エクリン汗腺)が多く開口しています。

12.亀裂・角化のケア

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糖尿病患者は、自律神経障害により上半身は発汗過多になりますが、下半身は発汗量が減少して乾燥しやすくなります。角質肥厚に乾燥が加わると、皮膚の弾力性、可動性がなくなり、亀裂が生じやすくなります(図1)。亀裂は足底や踵部に多発し、大気が乾燥する冬季に悪化しやすいです。日常生活で亀裂を悪化させる要因を探り、その要因を排除することが重要です。

13.胼胝・鶏眼のケア

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胼胝・鶏眼とは

角層が肥厚したものを「胼胝(べんち)」(図1)、角層が深層に突起し接触・圧迫で痛みが生じるものを「鶏眼(けいがん)」といいます。胼胝は「タコ」のこと、鶏眼は「ウオノメ」のことです。これらは、足の変形によって骨突出部の圧迫や摩擦・ずれなどの機械的刺激が慢性的に皮膚に負荷して、反応性に角質が増殖したものです。胼胝や鶏眼は、創傷ができないための生体の防御反応の一つです。

14.爪のケア 陥入爪

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爪のケア方法

爪のケアは、爪を「切る」、「削る」などの実際のケアに加え、ケアを行う際に神経障害や血流障害についての観察を行うこともできるため、重要です。

15.蜂窩織炎

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蜂窩織炎とは、四肢に好発する真皮から皮下軟部組織のびまん性の軟部組織感染症です。主な症状は、皮膚の境界が不明瞭な局所の発赤、腫脹、疼痛、熱感の急速な拡大です。

16.新しい下肢救済のための医療制度:下肢末梢動脈疾患指導管理加算

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下肢末梢動脈疾患指導管理加算の新設

下肢末梢動脈疾患では、初期には間欠性跛行を認め、さらに虚血が進行すると安静時痛が生じるようになり、足部に壊死や潰瘍を認めるようになります。また、前述のように、前触れなしに突然壊死を起こす場合もあります。これらの創部に治療を行っても、虚血状態では予後が悪く、下肢の切断から歩行困難へとつながるリスクが非常に高いです。

17.医療用フットウエア・免荷とTCC

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医療用フットウエア

医療用フットウエアは、歩行を目的とした足治療の一つです。医療用フットウエアを使う時期は、①予防(創傷・胼胝の形成を阻止する)、②創傷の免荷(治療中)、③再発予防(後治療)の3つに分かれます。

おわりに

糖尿病性足病変に対する考え方、治療法、フットケアの方法について解説いたしました。CLTIという新しい概念が提唱されたことでわかるように、この領域は、診断、治療、概念がどんどん進歩します。それに従って、新しい医療制度も導入されていきます。看護師もアンテナを広げて、キャッチアップしていくことが重要です。

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