2.運動負荷試験(漸増負荷試験)
運動療法のための運動負荷試験には2種類あります。運動処方をするための負荷試験と、運動処方が決まった後に運動耐容能を評価するための負荷試験です。運動を始める人が、開始時の体力ではどのくらいの運動強度で始めるのがよいのかを調べるには、漸増負荷試験しかありません。CPXの項でお話ししたように徐々に運動負荷を上げていき、どの負荷の時点でATになり、RCになるというのは漸増負荷試験でないとわからないからです。
運動耐容能の負荷試験には漸増負荷試験以外に「6分間歩行試験」「シャトルウォーキング試験」「歩行速度」などがよく知られていますが、「6分間歩行試験」などは最大負荷試験です。また、その他の試験もATに準じた運動強度での試験と言われています。初めて運動する人に「ATくらいの強度で」と指示をしても通じるとは思えません。まして「できるだけ早く歩くように」などという最大負荷試験を、運動経験の少ない低体力者に実施するのは14~15年も透析運動療法に携わっている私どもでも怖くてできないことですし、運動処方の参考にはなりません。もちろん運動耐容能の評価や運動療法の効果の評価をするツールとしては有用だと考えられます。
それでは、漸増運動負荷試験についてご紹介します。
1.CPX(心肺運動負荷試験:cardiopulmonary exercise testing)
「Part2 運動の基礎知識 2.ATとは」の項でお話ししたように、「呼気ガス分析を併用し、自転車エルゴメータを用いたランプ負荷による運動負荷試験」という特徴を持った検査です。CPXからは呼気ガス分析のほか、心電図・血圧・SpO2などのデータが得られ、運動処方を決定するうえで運動療法には欠かせない検査です。ランプ負荷は5~8分くらいで終了するよう、1分間当たりの負荷増加量を決定します。低体力者はRamp 10(10W/min)、健常人ならRamp 20(20W/min)、アスリートはRamp 30(30W/min)という具合です。非常に体力がない高齢患者の中にはRamp 5(5W/min)などという人もいました。
低体力者の試験では、(ウォーミングアップ時の)初期負荷量に注意が必要です。Ramp5~10などの場合、初期負荷量は0Wに近いほうがよいです。初期負荷量が20Wなどという場合には、ウォーミングアップの段階でATを超えてしまう可能性もあります。低負荷域(例えば20W以下など)の負荷量が不正確というエルゴメータもまだ多く、