最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part4 褥瘡(じょくそう)状態評価の最新ツール DESIGN-R®(デザインアール)2020を理解するDESIGN-R®(デザインアール)2020には「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」と
「臨界的定着疑い」が加わった

この章は、一般社団法人日本褥瘡学会編集『改定DESIGN-R®2020 コンセンサス・ドキュメント』
の内容をもとに具体的に解説しています。

2023年2月更新(2016年6月公開)

 DESIGN-R®は2020 年にDESIGN-R®2020に改定されました(図1)。
 改定されたDESIGN-R®2020の新規ポイントは、「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」と「臨界的定着疑い」の2項目が追加されたことです。その理由は、褥瘡のさまざまな研究によって次々と新しい知見が得られ、それらを褥瘡の治療・ケアに反映する必要が生じたからです。日本褥瘡学会が2015年に改訂した『褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)』では、保存的治療に関して「深部損傷褥瘡(DTI)の疑い」と「臨界的定着により肉芽形成期の創傷治癒遅延が疑われる」という内容が入っています。ガイドラインとの整合性のためにもDESIGN-R®2020にDTIと臨界的定着(クリティカルコロナイゼーション)の評価を入れ込む必要がありました。

 米国褥瘡諮問委員会(NPIAP)は、「褥瘡には皮膚から深部、深部から皮膚という2つの進展様式がある」とし、このうち深部から発生するものを深部組織損傷(deep tissue injury:DTI)と位置づけました。しかし、DTIは確実に観察する方法がなく、わが国では褥瘡のアセスメント項目に加えることが難しいという状況がありました。それが近年、エコーによって早期から脂肪・筋層などの深部組織の変化が可視化できるようになりDTIの判別が可能になってきました。そこで、「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」をDESIGN-R®の項目に加えることになりました。

 臨界的定着はクリティカルコロナイゼーション(critical colonization)のことで、ドレッシング材による湿潤環境がもたらした新しい感染様式でもあると言われています。従来、感染の徴候といわれているのは「腫脹」「痛み」「膿」「発熱」などですが、クリティカルコロナイゼーションではそれらの所見は観察されません。ただ、いっこうに治癒が進まないのが特徴です。クリティカルコロナイゼーションの原因の1つとしてバイオフィルムが挙げられます。そのため、これまでの感染への介入とは異なるバイオフィルムに特化した治療方法が必要になります。また、バイオフィルムは目に見えないため観察できず、アセスメント項目に入れることができませんでした。しかし、最近、バイオフィルムを可視化できるキットが商品化され観察できるようになりました。同時に、創面にぬめりやスラフ(黄色壊死組織)の増加があるときは何らかの治療戦略を立てる必要があることから、「臨界的定着疑い」をDESIGN-R®に組み込むことになりました。
 このようにして改定されたDESIGN-R®2020褥瘡経過評価用を次ページに示します。

  • NPIAP:National Pressure Injury Advisory Panel(NPUAP が改称)

図1 改定されたDESIGN-R®2020褥瘡経過評価用(青字が変更された箇所)

図1 改定されたDESIGN-R®2020褥瘡経過評価用(青字が変更された箇所)

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