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2018年9月公開
(1)新たな認定看護師制度の概要と再構築の必要性
『エキスパートナース』編集部
日本看護協会の認定看護師制度は1995年にスタートしました。この制度は、1980~90年代にかけて、わが国の医療が急速に高度化・専門化へと向かう流れのなかで、専門性の高い看護が必要とされるという時代の要請によって生まれたものです。発足当時は、救急看護分野、皮膚・排泄ケア分野の2分野からスタートし、現在21分野の認定看護師が誕生しています。各分野の認定看護師は、より質の高い、専門的な看護を提供することに大きく貢献してきました。
制度発足から24年がたち、現在1万9000人を超える認定看護師が臨床現場で活躍しています。医療のなかで着実に信頼を得てきた認定看護師ですが、近年の疾病構造の変化や超高齢化による在宅医療への移行推進によって、認定看護師にも変革が求められてきました(図1)。
図1 認定看護師に変革が求められてきた背景
日本看護協会が2015年に発表した、「2025年に向けた看護の挑戦 看護の将来ビジョン-いのち・暮らし・尊厳をまもり支える看護」の中では、「これから期待される看護師は、急性期医療に加えて在宅医療まで支えられる人材、また地域・施設間の連携に参画できる人材」であると述べられています。これは、「地域で活躍できて」「保健・医療・福祉をつなぐ」ことのできる看護師です。この将来ビジョンをもとに、認定看護師制度の見直しが進められました。そのため、新たな認定看護師制度の目的として、「“あらゆる場”で看護を必要とする人に、水準の高い看護実践を提供すること」が盛り込まれたのです(表1)。
表1 新たな認定看護師制度の目的
特定の看護分野において、熟練した看護技術及び知識を用いて、あらゆる場で看護を必要とする対象に対して、水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護ケアの広がりと看護の質の向上を図ることを目的とする。 |
認定看護師や専門看護師などの看護のスペシャリティを考える際、合わせて考慮しなければならないのが「特定行為研修」です。特定行為研修とは、正式には「特定行為に係る看護師の研修制度」のことで、2015年から始まりました。この研修を修了した看護師は、医師の診療の補助として、手順書に基づいて「特定行為」を行うことができます。特定行為研修を修了することで、実践的な理解力・思考力・判断力と、高度で専門的な知識と技能の向上が図れるとされています。
国としては、2桁万台以上の特定行為研修修了者をめざしており、昨年8月には医療計画に盛り込んで、その推進にさらに力を入れ始めました。今後ますます、より高度な看護の専門教育として特定行為研修が優先されることが考えられます。
このように、病院・施設の人材育成に関する方針が変化するであろうことを踏まえながら、日本看護協会では、今後の医療や社会のニーズに対応できる看護の専門性の発揮のしかたについて検討を重ねてきました。そして、認定看護師教育のなかで特定行為研修を行うことで、看護の専門性に基盤を置きながら、特定行為研修制度を活用して、患者・療養者にかかわる看護師が養成できると考えました。
そこで、「新たな認定看護師制度」として、これまでと同様の看護の専門性に依拠した認定看護師教育に、特定行為研修を組み込むことになりました。それが、認定看護師の「実践力」をより強化するために、特定行為研修で培われる高い「臨床推論力」と「病態判断力」をベースにした教育内容です(図2)。特定行為研修を行う教育機関はさまざまですが、日本看護協会は、認定看護師を対象に、いわゆる「付加研修」を行い始めています。
図2 新たな認定看護師の役割
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そもそも特定行為研修制度が法制化される前に、日本看護協会では、「特定看護師(仮称)養成調査試行事業」、「看護師特定能力養成調査試行事業」に参加しました。これは、皮膚・排泄ケア、感染管理、救急看護分野の認定看護師を対象にして、モデル的に特定行為研修の内容を付加する教育を行ったものです。それは、認定看護師が特定行為研修を受講することによって、より適切に「病態判断」をすることが可能になり、症状への早期介入ができるようになるというものです。
そして、2015年に特定行為研修が始まってから、日本看護協会では、認定看護師への“付加研修”として特定行為研修を実施してきました。現在、特定行為研修を修了した認定看護師は226名になります。こうして、これまでの認定看護師の専門的・包括的視点に加えて、医師が普段みている視点でアセスメントができることによって、医師がどのような情報を望んでいるのかがすぐにわかって伝えられるようになり、効果的なコミュニケーションがとれることがわかってきました(図3)。これこそが、まさにチーム医療のキーパーソンとして、認定看護師に期待されている役割です。このような経緯を経て、新たな制度での認定看護師教育では、臨床推論力と病態判断力の要素を強化することになりました。
図3 特定行為研修を付加した認定看護師の姿
©DEARCARE Co., Ltd.