医療法人社団医王会 朝倉健生病院
大腸・肛門外科 豊原敏光
2019年10月公開
重篤な便秘とは、便が停滞することによって、腸閉塞や腸管虚血症などの続発症を併発した便秘症のことです(図1)。
放置すると敗血症・腸穿孔・腹膜炎と進行し、さらに重篤な病態となります。
視点を変えると、腸管虚血症のなかで、限局型で亜急性疾患のところに位置づけられます。
(図内の表は、文献1を参考に作成)
便秘症の患者さんは、便が出ないということが常態化しており、それに応じて緩下薬を服用しています。それ自体はふつうのことであり、緩下薬の服用があっても排便コントロールがうまくいっていれば問題はありません。
“排便コントロールがうまくいっている”とは、“次の排便時期が予測できる”といい換えることができます。逆に、排便間隔が不規則になり、次の排便がいつなのか不明なときは、大腸にたまっている便量が増えていることが多いのです。
大腸にたまる便量が増えるにつれて、腸管は拡張します。拡張した腸管では、相対的に栄養血管の血流が不足するため、蠕動障害が生じます。これにより、便が硬くなったり、硬便と無形便が混在した状態になります。また、排便間隔が長くなり、膨満感や残便感が出現します。
このような状態に対して、刺激性下剤や浣腸・坐剤による強制排便が試みられます。処置に相応する排便(反応便)がみられれば、元の規則的な排便間隔に戻ることが期待できます。
“便秘”から“重篤な便秘”へのターニングポイントは、排便間隔が不規則になり、かつ刺激性下剤や浣腸・坐剤を用いても反応便がみられないときと考えられます。これ以降はさらに、患者さんの状態をよく観察する必要があります(図2、コラムも参照)。
POINT
参考文献
コラム便のトラブルを重症化させないために「排便日誌」を活用しよう
(高木良重)
便秘対策、つまり排便コントロールにおいて、日常生活や治療が排便に及ぼす影響を評価する必要があります。具体的には排便日誌として、排便時間や量、食事内容、腹部症状を継時的に記録します(表1)。
また、客観的な評価として腹部X線検査や直腸診で、便の貯留状態を確認します。
入院患者に対して、私たち看護師は、「1日何回排便がありましたか?」と必ず質問し、看護記録に記載しています。この数字を、どのように活用しているでしょうか。便が出ていない場合、腹部症状の観察、そして便の生成につながるような食事摂取ができているかどうかを把握することが大切です。
患者さんによっては、症状を訴えることができないこともあるため、腹部の視診・触診やおむつ交換を行う際の直腸診で、便が貯留していないか確認しましょう。
排便状況 |
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食事状況 (水分も含む) |
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腹部症状 |
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直腸肛門部症状 |
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実際には、排便トラブルに対応する専門外来でなければ、「排便日誌」をつけることはほとんどないでしょう。しかし、そのような特別な記録をしなくても、ある程度の排便パターンを把握することは可能です。入院患者さんの体温や脈などを記載した記録こそが、その人にとっての生活日誌であり、排便回数や食事量、さらに腹部症状といった便秘にかかわる情報が含まれています。
ふだんから便が出たか・出ていないかについての確認にとどまらず、腹部症状(膨満、痛み)や肛門部症状(痛み、腫脹、出血、便の付着)を観察することが重要です。
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