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2019年1月公開
(1)スキンケアの重要性と「臨床スキンケア看護師」の必要性
『エキスパートナース』編集部
スキンケアは、看護教育の中では、「清潔の援助」技術に含まれます。清潔行動に関する援助を行うことは、患者に爽快感を与えるだけでなく、さまざまな感染リスクを低減する等、さまざまな側面からみても、重要なケアの1つと言えます。
日本創傷・オストミー・失禁管理学会理事長の田中秀子先生(淑徳大学看護栄養学部)は、「清潔は人間の基本的欲求であり、きれいにすることによって気分が爽快になります」と述べています。「さらに、マッサージにより血液の流れがよくなり、栄養が皮膚を通して取り込まれるため皮膚は健康を維持できます。そして、清潔ケアは患者とのコミュニケーションの場ともなります。皮膚の観察を行うときに、同時に、患者の心の変化をとらえることもでき、全身アセスメントの機会にもなっています」と、スキンケアのさまざまな効用を強調します。
日本褥瘡学会ではスキンケアを以下のように定義しています。
「皮膚の生理機能を良好に維持する、あるいは向上させるために行うケアの総称である。具体的には、皮膚から刺激物、異物、感染源などを取り除く洗浄、皮膚と刺激物、異物、感染源などを遮断したり、皮膚への光熱刺激や物理的刺激を小さくしたりする被覆、角質層の水分を保持する保湿、皮膚の浸軟を防ぐ水分の除去などをいう」1
この定義で重要なのは、スキンケアは健常な皮膚を維持することにとどまらず、皮膚の生理機能を「向上させる」ためのケアであることです。それは、具体的には皮膚が脆弱になることによって生じるさまざまなスキントラブルに対して的確なケアを行うことを意味します。本来、スキントラブルへの対応は、主に皮膚・排泄ケア認定看護師の役割でもありました。スキン-テア、IAD(失禁関連皮膚炎)、ストーマ周囲皮膚炎などのスキントラブルには専門的なかかわりが必要だからです。
超高齢化が急速に進むわが国で、脆弱な皮膚をもつ高齢者は飛躍的に増えてきました。特に、スキン-テアは注目すべきトピックスでもありました。平成30年度診療報酬改定では、褥瘡の危険因子の1つとして「皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)」が新たに入りました2。スキン-テアのアセスメントは、皮膚・排泄ケア認定看護師ではなく一般看護師が行うことになります。高齢化の進展によってますます増える脆弱な皮膚への対応は、専門的な看護師に特化された技術ではなく一般看護師が身につける技術となってきたのです。
同学会の前理事長である真田弘美先生(東京大学大学院医学系研究科)は、「今後急速に増える後期高齢者や、看護技術の進化に伴って、スキンケアは高度な専門的技術から、ある一定の教育を受けた看護師の日常業務へと変化していくことでしょう。つまり、どのような施設においても病棟単位で、あるいは訪問看護ステーション単位で、これら高齢者のスキンケアが行えるナースが必要とされる時代がきています」と述べています。これからの臨床現場では、スキンケアのリンクナースが必要になってきているのです。そこで、同学会では、「臨床スキンケア看護師」の育成を始めることになりました。
引用文献
1.日本褥瘡学会 用語検討委員会:日本褥瘡学会で使用する用語の定義・解説-用語集検討委員会報告-.褥瘡会誌,9(2):228-231,2007.
2.日本褥瘡学会:平成30年度(2018年度)診療報酬・介護報酬改定 褥瘡関連項目に関する指針.照林社,東京:7:2018.
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