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2019年1月公開
(2)「臨床スキンケア看護師」資格認定制度の概要
『エキスパートナース』編集部
「臨床スキンケア看護師」の資格認定の目的は、以下のようなものです。
日本創傷・オストミー・失禁管理学会が、皮膚のトラブルを抱えるであろう対象者に対して看護師が行う専門職としての予防的ケア実践を強化するために認定資格制度として制定したもの。スキンケアに関する知識と標準的な手技を修得し、予防的スキンケアの質を向上させ、国民の福祉に貢献する。
同学会の臨床スキンケア看護師養成の責任者である、学術教育委員会(創傷担当)委員長の田中マキ子先生(山口県立大学副学長)は、「臨床スキンケア看護師の教育は、皮膚の形態機能学的理解に始まり、さまざまな皮膚障害の症状の理解を促す座学と、ケア方法のポイントを学習できると実技研修という2つの側面から成り立っています」と言います。具体的には、8時間の「臨床スキンケア講習会」と臨床現場での8時間の「臨床研修」です。臨床スキンケア看護師の学習目標を表1に示しました。
表1 臨床スキンケア看護師の学習目標
1.臨床におけるスキンケアの必要性と意義を理解する
2.皮膚に関する解剖・生理を理解する
3.正常な皮膚と異常な皮膚が判別できる
4.褥瘡の発生メカニズムと予防について理解する
5.褥瘡予防に効果する技術が実施できる
6.スキン-テアの発生メカニズムと予防ケアについて理解する
7.スキン-テアの予防に効果する技術が実施できる
8.IAD(失禁関連皮膚炎)の発生メカニズムと予防について理解する
9.IAD(失禁関連皮膚炎)の予防に効果する技術が実施できる
10.ストーマ周囲皮膚炎の発生メカニズムと予防について理解する
11.ストーマ周囲皮膚炎の予防に効果する技術が実施できる
12.足・足趾爪白癬の発生メカニズムと予防について理解する
13.足・足趾爪白癬の予防に効果する技術が実施できる
臨床スキンケア看護師に期待されるスキンケア技術について、田中マキ子先生はこのように述べています。
「清潔ケアとして一般ナースが行っているスキンケアと臨床スキンケア看護師が修得するスキンケアの違いは、“エビデンス”をより重視しているかどうかだと思います。これまでのスキンケアは皮膚の正常な機能を保つための、いわゆる“安楽”“清潔”“感染予防”の観点からのものでした。臨床スキンケア看護師の技術は、外部からの刺激から皮膚のバリア機能を守るという意味で、外傷から皮膚を保護する技術です。従来のスキンケアよりも、さらに深まった技術と考えることができます。スキンケアの基本は、“洗浄(清潔)”“保湿”“保護”の3つであることに変わりはないのですが、それが皮膚の解剖生理学的な根拠に基づき、より科学的に深化したものであるということが重要だと思います」
この講習会では、「皮膚に関する解剖・生理の理解」「正常な皮膚と異常な皮膚の判別」などの基本をベースとして、「褥瘡」「スキン-テア」「IAD(失禁関連皮膚炎)」「ストーマ周囲皮膚炎」「爪白癬」などの臨床を学びます。講習会のテキストとしては、同学会が編集した『スキンケアガイドブック』(照林社刊)が使用されています。
臨床スキンケア看護師講習会の受講資格としては、①看護師免許を有する、②臨床経験が3年以上、③日本創傷・オストミー・失禁管理学会正会員、④同学会学術集会に1回以上参加、の項目が挙げられています。講習会は同学会学術集会開催の前後1日に設定されます(8時間)。講習会では、各領域の専門家の講義に加えて、その知識をもとにした事例検討が行われます。
講習会を履修した人は、受講日の翌年2月までの時期に1日(8時間)の臨床研修を行うことが必要です。臨床研修の実施施設の条件は、同学会会員で皮膚・排泄ケア認定看護師(認定看護師として5年以上の臨床経験をもつ)が所属していることです。研修課題は、表2のうち「推奨」中の2項目を含む合計5例以上(予防ケアも可)を体験する必要があります。この研修は、研修指導者である皮膚・排泄ケア認定看護師のスキンケア実践場面に立ち会って行われます。
これらの講習と臨床研修を受講した看護師からの申請をもとに、臨床スキンケア看護師認定委員の年1回の認定審査を経て、臨床スキンケア看護師が認定され、学会から認定証が発行されます(図1)。
表2 臨床研修の研修課題と内容
推奨 | ● スキン-テア ● IAD(失禁関連皮膚炎) ● 足、足趾爪白癬 ● 医療関連機器圧迫創傷 ● 褥瘡 |
適宜 | ● ストーマケア ● ろう孔、ドレーン周囲皮膚の管理 ● 気管切開孔 ● 栄養ろう ● 浮腫部のスキンケア ● がん性創傷 |
図1 臨床スキンケア看護師認定証
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