※パスワードの変更もこちらから
2019年1月公開
(3)臨床スキンケア看護師の実際の声と期待される将来
『エキスパートナース』編集部
臨床スキンケア看護師制度は、2017年から試行的に始められました。第1回の講習会は、2017年の日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会の翌日に1日8時間開催されました。さらに、2018年にも同様に、学術集会に合わせて開催され、受講者は臨床研修を受けた後、学会に申請して認定されています。
綜合病院山口赤十字病院の救急処置室・三井博樹さんと緩和ケア病棟の大越純子さんは、2017年の第1回講習会を受講した後、同院の皮膚・排泄ケア認定看護師の栁井幸恵さんの指導のもとに臨床研修を終えて、臨床スキンケア看護師の認定を受けました。
三井さんは、臨床スキンケア看護師の認定を受けた理由を、以下のように述べます。
「私は普段からエビデンスに基づいた看護を大事にしています。柳井さんからこの認定資格制度のことをお聞きして、褥瘡委員をやっていたこともあり、創傷や褥瘡ケアに関してもエビデンスを学びたいと思い受講しました」
大越さんも「褥瘡委員として、あるいはリンクナースとして、自分にできることは何かを考えるようになりました。緩和ケアでは、褥瘡処置や予防ケアが苦痛を与えてしまっているときもあり、疑問を感じ、何かできることはないか学びを深めたいと思いました」と言います。
講習会の講師もつとめる栁井さんは、「専門家の講義ももちろん役に立ちますが、その後のグループワークでディスカッションしながら内容を深められるのもいいのではないでしょうか」と言います。「受講者はみな臨床経験のしっかりした人たちですから、座学で学んだ知識が臨床経験に結びつくのだと思います」
講習会の後、現場に戻って行われる臨床研修では、皮膚・排泄ケア認定看護師のラウンドについて回ったり、褥瘡外来やストーマ外来で臨床の実際を見学し、指導者によっては、ケアを実際に行わせてもらったりもするといいます。三井さんは、「普段は経験できないストーマ外来やフットケア外来など、または病棟ラウンドなどケアを実施・介助させてもらったりしました。実際の技術を体得できて、多くの学びがありました」と言います。
認定資格を取得したメリットについて、三井さんは、「救急処置室で行う創傷ケアなどに関して、医師にも根拠を持ってドレッシング材の選択を提案できるようになったと思います」と言います。根拠に基づいたスキンケアに関する一定時間の勉強を行ったことで、臨床の力の自信になっていることがうかがわれます。
大越さんは、「緩和ケアにおいては褥瘡の何にゴールを置くのかが難しく、スタッフもジレンマを抱えることが多くあります。苦痛の少ないケアで褥瘡発生率を低下させることが患者さんにとってもスタッフにとっても良いケアにつながっていくと思っています。そのために、新しい技術や知識を自信をもって伝えられることでリンクナースの役割が果たせてきているのでは・・・」と言います。
栁井さんは、こうした資格取得に対する管理的な配慮について、次のように言います。
「現実的には、臨床研修を勤務時間内で行うのか、休暇をとって来てもうらのかなどの問題もあるのではないかと思います。それは、それぞれの病院のやり方や、現場の師長さんの考え方などによって違うと思いますが、こうして意欲をもって資格に挑戦しようとしている人たちに対しては、なるべく管理的にも便宜を図って、より取得しやすいような仕組みを考えることも大切ですね」
ようやく2期を終えて100名前後の認定者を出してきた臨床スキンケア看護師の次回の認定講習会は、2019年5月に奈良で開催される第28回日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会に合わせて開催される見込みです。
この資格制度の推進をリードする田中マキ子先生は、「将来的には、臨床スキンケア看護師の養成が全国規模で進み、臨床の場に多くの臨床スキンケア看護師が誕生することが望まれます。そして、多くの臨床スキンケア看護師が、リンクナースとして臨床ケアのレベルアップを担うことを望んでいます。さらに将来的には、臨床スキンケア看護師が何人以上いるとスキン-テアの発生率が下がるとか、IADの治癒率が高くなるなどの臨床データが出されてくることが期待されます。そうすることは、臨床スキンケア看護師を取得することへのプレゼンスを高めることにもなると考えています」と将来への期待を述べられました。
©DEARCARE Co., Ltd.