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2022年6月公開
回復期・慢性期医療におけるフォーカス・ポイント
地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟ともに、本来担うべき役割が強調された改定となりました。地域包括ケア病棟は本来の「地域包括ケア」という機能により近づき、回復期リハビリテーション病棟は「質の高いリハビリテーション推進」という機能が強化されました。
地域包括ケア病棟の役割は、①急性期治療を経過した患者の受け入れ、②在宅復帰支援、③在宅で療養を行っている患者等の受け入れ、の3つです。今回の改定では、②の在宅復帰率の基準が上がりました。さらに、③の自宅からの直接入院割合や緊急入院の比率も上がりました。これまで、どちらかというと①の急性期からの受け入れの要素が強かったのですが、在宅医療をバックアップする機能が強調された印象があります。
特に、一般病棟と地域包括ケア病棟をもっている医療機関では、一般病棟から地域包括ケア病棟に転棟するケースが多かったのですが、その転棟割合を6割未満にする制限が、「200床~400床」の地域中核病院に対してもかかりました。満たせない場合は、所定点数の90%から85%に減額となります。つまり、自院内での転棟ではなく、地域からの直接入院や緊急入院を、もっと多く受け入れる必要が出てきました。在宅や施設からの受け入れが強化されたことになります。
在宅復帰率は、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料1・2は70%以上から72.5%以上に変更されます。また、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料3・4においても70%以上が求められ、満たせない場合は、所定点数の90%に減額されます。グループ内に介護医療院などの退院先がある場合は比較的クリアしやすいと思われますが、そうでない場合は結構厳しい改定になるかも知れません。
図1 地域包括ケア病棟入院料に係る施設基準
厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版.より引用
詳細は、厚生労働省ホームページ「令和4年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html)の該当頁を参照。
回復期リハビリテーション病棟の重症患者割合が引き上げられました。回復期リハビリテーション病棟入院料1・2は3割以上から4割以上、回復期リハビリテーション病棟入院料3・4は2割以上から3割以上と、ともに1割の引き上げとなりました。そのため、これまで以上に早期からの急性期から回復期への患者の流れが加速することになります。
これは、急性期のICUなどで、「早期離床・リハビリテーション加算」「早期栄養介入管理加算」の対象がHCUなどの治療室に拡大されるなど、より早い時期からリハビリテーションを開始する流れになってきていることとも連動します。
回復期リハビリテーション病棟入院料では、FIMの評価の見直しなどを通じたアウトカム評価が重視されてきましたが、今回の改定では回復期リハビリテーション病棟入院料1・3は「公益財団法人日本医療機能評価機構等による第三者の評価を受けていることが望ましい」と追加され、「第三者評価」などの新たな視点での見直しがポイントになりました。
また、これまで回復期リハビリテーション病棟の対象患者は、脳血管障害と運動器障害患者が主体でしたが、今回、「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」が追加されました。これは、2020年に策定された循環器病対策推進基本計画が反映されたものと思われます。さらに、特定機能病院における回復期リハビリテーション病棟入院料も正式に可能となっていることもあり、より専門性の高いリハビリテーションを評価する方向と、高度急性期からの早期リハビリテーションの開始と連携が求められています。
図2 回復期リハビリテーション病棟入院料(施設基準)
厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版.より引用
詳細は、厚生労働省ホームページ「令和4年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html)の該当頁を参照。
栄養管理に関して、中心静脈栄養を実施している患者の見直しを進めるうえで、「摂食嚥下支援加算」が改称されて、「摂食嚥下機能回復体制加算」となりました。さらに実績要件が取り入れられ、「加算1」210点、「加算2」190点に加え、「加算3」120点が新たに設けられました。
「加算3」は、療養病棟入院料1または療養病棟入院料2を算定している病棟に限られます。療養病棟では、中心静脈栄養をやめて経口摂取にもっていくための摂食嚥下リハビリテーションの積極的な推進が求められていくことになります。
加算1と2は摂食嚥下支援チームの設置が必要ですが、加算3は必要要件となっておらず、専任の常勤医師、専任の常勤看護師または専任の常勤言語聴覚士1名以上の勤務が要件となっています。
加算1の実績要件としては、鼻腔栄養、胃瘻、または中心静脈栄養患者の経口摂取回復率35%以上という実績が求められています。
加算3の実績要件としては、嚥下機能評価を実施した上で嚥下リハビリテーション等を行い、嚥下機能が回復して中心静脈栄養を終了した患者数の前年実績が2名以上となっています。ただし、2022年3月31日時点で療養病棟入院料1又は2を算定している病棟に入院している患者については、嚥下機能評価および嚥下リハビリテーション等を実施していない場合であっても、嚥下機能が回復して中心静脈栄養を終了した患者数を算入してもよいとされています。
表1 摂食嚥下機能回復体制加算について(抜粋)
【摂食嚥下機能回復体制加算(摂食機能療法)】
[算定要件]
注3 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、摂食機能又は嚥下機能の回復に必要な指導管理を行った場合は、摂食嚥下機能回復体制加算として、当該基準に係る区分に従い、患者(ハについては、療養病棟入院料1又は療養病棟入院料2を現に算定しているものに限る。)1人につき週1回に限り次に掲げる点数を所定点数に加算する。
イ 摂食嚥下機能回復体制加算1 210点
ロ 摂食嚥下機能回復体制加算2 190点
ハ 摂食嚥下機能回復体制加算3 120点
加算1[施設基準]
(4) 当該保険医療機関において経口摂取以外の栄養方法を行っている患者であって、以下のいずれかに該当するもの(転院又は退院した患者を含む。)の合計数に占める鼻腔栄養を導入した日、胃瘻を造設した日又は中心静脈栄養を開始した日から1年以内に経口摂取のみの栄養方法を行っている状態へ回復させた患者の割合が、前年において3割5分以上であること。
加算3[施設基準]
(3) 当該保険医療機関において中心静脈栄養を実施していた患者(療養病棟入院料1又は2を算定する病棟の入院患者に限る。)のうち、嚥下機能評価を実施した上で嚥下リハビリテーション等を行い、嚥下機能が回復し、中心静脈栄養を終了した者の数の前年の実績が、2名以上であること。ただし、令和4年3月31日時点において療養病棟入院料1又は2を算定している病棟に入院している患者については、嚥下機能評価及び嚥下リハビリテーション等を実施していない場合であっても、嚥下機能が回復し、中心静脈栄養を終了した者の数を算入して差し支えない。
基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知)令和4年3月4日保医発0304第2号より抜粋.
詳細は、厚生労働省ホームページ「令和4年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html)の該当頁を参照。
なお、この摂食嚥下機能回復体制「加算1」「加算2」における看護師の「摂食嚥下障害看護に係る適切な研修」には、①日本看護協会の認定看護教育課程「摂食嚥下障害看護」に加えて、「脳卒中看護」が該当するとされています。
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