ストーマ・ライフ メニュー

体験談
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明日へ向かって走り続ける人生

2015年5月公開

いろいろ失敗もしました

ダブルストーマを持つようになってから半年後、毎日の生活にもようやく慣れ始めたころです。もともとが食いしん坊なもので、つい食べ過ぎてしまったことがありました。アイスクリームや、クッキーや、おせんべいなど、ちょっとずつ食べれば大丈夫なのに、その日はついつい食べ過ぎてしまったのです。そしてそのまま横になり、昼寝してしまいました。はっと気づくと、もう2時間以上も昼寝しており、両方のストーマ袋はパンパン。うわぁ、どうしよう!と思いながら、ストーマ袋の底に手を当ててそろーりそろーりとトイレに向かいました。あと一歩でトイレにたどり着くというときに、とうとうバチャーン!頭が真っ白になるとはあのときのことです。もうなんというか、湖の中に一人ぼっちで残されたような気分になりました。そのまま凍りつき、ただ呆然としていた時間の長く感じたこと。実際には何秒間かのことなのでしょうが、まるでテレビドラマのスローモーションのように感じました。「よし、こうしていても仕方ない、こうなれば徹底的にきれいにしよう!」そんなふうに気持ちを切り替え、廊下も、トイレも、もちろん自分の服も、みんなきれいにしました。拭き始めると、ほこりや汚れが結構目に入ります。「あぁ、そういえばしばらく掃除をサボっていたからちょうどいいや」と考えてきれいにしているうちに、ふしぎと晴れ晴れとした気分になってきました。廊下もトイレもぴかぴかになるころには、「失敗しちゃいけない」とばかり考えず、「失敗したって掃除すればいい」というくらいに気楽に考えられるようになりました。

オストメイト(ストーマ保有者)になってよかったこと

「オストメイトになって、よかったことはありませんか?」退院後半年くらい経ったころ、あるオストメイトの集まりに参加し、司会の方からこのような問いかけをされました。正直にいって、「この人はどういうつもりでそんなことを聞くんだろう」と思いました。だって、あれができない、これも無理だと悲嘆するばかりの毎日でしたから、オストメイトになってよかったことなど考えてもみなかったのです。でも、今になってその質問の意味がわかった気がします。その後オストメイトの仲間に入れていただき、夏の東京湾の納涼船や、温泉旅行など、みなさんの催しに参加させていただくようになりました。障害年金がもらえるということも、このお仲間から教えていただきました。いまでも年に1回はオストメイト仲間で温泉旅行に行っています。「多くの楽しい仲間にめぐり会えて、生きる楽しさを教えてもらったこと」これがオストメイトになってよかったことです。そしてあのときの司会の方は、そうした面にも目を向けてごらんなさいと言っていたのだなぁと思います。

生きがいの大切さ

48歳で、ストーマ保有者となりました。ショックでした。もう私にできることは何もないと思うと、気は滅入り、落ち込んでゆくばかり。しかし、そんな私の気持ちをたち直らせてくれたのは「生きがい」を持つことでした。退院後、図書館で目にした「日本百名山」という本をきっかけに始めた登山が、何物にも代えがたい大切な趣味となり、私の気持ちを前向きに変えてくれました。失敗もあります。細かいことを数え上げたら、きりがありません。でもそれを気にしていたら、何もできません。「ケセラセラ、なるようになれ」そう思って出かけたりしてきました。気がついてみると、ストーマを保有したために出来なくなったものは何もありませんでした。むしろ、ストーマというハンディを持つことによって、それまで見えなかったものが見えるようになり、感じなかったものを感じられるようになり、そして、人として大切なものを数多く学ぶことができたと感じています。

しゃべって歌ってストレス発散

もともと明るい性格の私でも、さすがに手術直後は落ち込みました。ケアは毎日行わなくてはならないので、そのうち徐々に慣れていきましたが、心の悩みは簡単には解決しません。一番大きな問題は「ストーマ保有者なんです」と人に言えないことです。だから、せっかく取得した身体障害者手帳を出すのも、最初のうちはとても恥ずかしかったんです。そうした悩みを真剣に聞いてくれたのは、やはり同じオストメイトの方々でした。家族や周りの方ももちろん親身に接してはくれますが、やはり同じ苦しみを理解してくれるのはストーマ保有者の仲間です。そうした方々とは本当に腹を割ったお付き合いをさせていただくようになり、ストーマケアのことばかりでなく、とにかく何でも悩みを打ち明けられるようになりました。たくさんしゃべったり、カラオケで何曲も歌ったり、本当にこうしたお友達はかけがえのない宝物だと思っています。

ストーマとともに

あっという間の34年間でした。夢多く、さぁこれからだという学生時代にストーマをお腹につくり、早いもので現在57歳です。ストーマ造設直後は出てくる排泄物に閉口しました。また、夜は袋が気になり、ぐぅ~ぐぅ~とは熟睡できませんでした。でも、袋の取替えにも慣れ、年数を重ねて、今ではめったに失敗はありません。朝の袋のふくれ具合は目覚まし代わりです。人間食すればいらない物が出るのは当たり前、出なかったらそれこそ大変。たまることを気にせず、出てくるものをしっかりと袋で受ける。ストーマは自分の体と生活の一部になっています。いろいろ失敗もし、くよくよする事もあったけれど、素敵な出来事にもたくさん出会えました。やっぱり生きることはすばらしいと思います。

銭湯の楽しみ

私の住んでいる地域は戦災を免れたところで、古い家がたくさん残っています。私の家もそうした一つで、昔ながらの木造家屋、もちろん風呂などはありません。それでも、歩いていける範囲に銭湯が4軒もあるので、これまでは不便を感じませんでした。ところがストーマ保有者になってからは、大好きな風呂に入ることが以前のようにはいかなくなりました。退院後、ストーマ装具を下げて銭湯に行く勇気もなく、とりあえずは近くに住む息子の家のもらい湯で我慢するしかありませんでした。しかし、この先ずっとストーマ装具にお世話になるわけで、我が家にも内風呂をつくらねばならないか…と思っていました。そんな時、「ちょっと勇気がいるけれど、入浴用のミニキャップに付け替えて銭湯に行ってみたら?」とストーマ外来のWOCさんにアドバイスを頂きました。さっそく注文して、ためしにつけてみると、円形のキャップは高さの2cmしかなく、非常にコンパクトに収まりました。「これなら銭湯にも行ける。あとは私の勇気だけ。」そう思って、なじみの銭湯へ。久しぶりに広々とした湯船に入ったときの感動は今でも忘れませんね。最初こそ、脱衣所で裸になって、湯船に入るまでは他人の視線が気になりました。でも、誰も私の下腹部に目をやる人はいませんでした。一番気にしていたのは私自身だったのかもしれません。それ以来、私は手術前のように銭湯の大きな湯船でゆっくりと体を伸ばしています。考えようによっては、ストーマをキャップでおおっているわけだから、他の人のお尻よりもよっぽど清潔かもしれませんね。

備えあれば

外出時に荷物が多くなるのは嬉しいことではありませんが、やはり、「備えあれば憂いなし」という言葉通り、「持っていてよかった」と思うものがあります。

予備のストーマ袋:外出先でトラブルになるときというのは、便がゆるかったり、皮膚の調子がよくなかったり、うまく貼り替えられなくて、すぐにまた交換ということも珍しくありません。ですから替えのストーマ袋は2枚以上持っていると安心です。

ペットボトルの水:トイレの個室で貼り替えなどを行っているとき、ペットボトルの水があればトイレットペーパーやティッシュペーパーをしめらせてきれいに拭き取ることができます。

ダンスサークルで楽しんでいます

私はダンスサークルに参加している男性です。ダンスサークルというのは、ただでさえ男性の参加者が少ないですから、競技会などがあると簡単に休むわけにはいきません。自分だけでなく、パートナーの女性にとっても一生懸命練習してきた晴れ舞台ですからね。ダンスの競技会というのは長時間にわたって行われます。6時間から7時間は会場に詰めっきりですから、洗腸する間はありません。出番がしょっちゅうありますから、ストーマ装具の交換もゆっくりできないのです。女性のパートナーはいい香りの香水をふりかけていますが、男性の私としては自分のにおいがとても気になります。そこでどうするかというと、漏れそうだなと思うときは早めに剥がして張り替えます。おなかの上側のほうはぴったり密着していて、下側のほうが剥がれやすいので、下のほうから剥がしていきます。剥がれにくい部分を無理に剥がすのは絶対に禁物です。皮膚を傷めてしまいます。私は常にリムーバーを持ち歩き、リムーバーで静かに剥がすようにしています。時間がなくて、つい「えい」っとばかりに剥がしてしまったこともありますが、肌が荒れてしまってあとから痛い目にあいました。それ以来、「急がば回れ」と自分に言い聞かせてリムーバーでそうっと剥がすようにしています。

ホームページでの情報交換が生きがいに

ストーマ保有者になってからの生きがいの一つは、自分の体験をホームページで公開し、同じ悩みを持つ方々と情報交換していることです。ホームページといっても、今は初心者にも比較的簡単に作れるようになっています。自分の体験が何かお役に立つのならという思いではじめました。入院の体験、ストーマケアの知恵、医療機関に関する情報などのコーナーを作ったところ、予想外に多くの方々に見ていただけるようになりました。そのうち、ホームページを見てくださった方からいろいろなメールをいただくようになりました。ご自分がストーマ保有者という方ばかりでなく、ご家族がストーマ保有者になったので情報収集のために、という方もずいぶんいらっしゃいます。そして私で分かる範囲のアドバイスなどをさせていただくうちに、私自身がたくさん元気をいただいていることに気がつきました。「役に立ちました」というお礼のメールをいただいたりすると、本当にうれしいですよ。こうした交流はとても心強いものだと思います。

まわりの方に助けられて

「手術を受けることになった」と妹に知らせたところ、妹もたいへんびっくりしたようでしたが、すぐに人工肛門についての資料をいろいろ集めてきてくれました。 私自身は動揺して何も手につかない状態だったので、本当に助かりました。この資料で人工肛門とはどういうものかをはじめて知り、分からないことが減った分、怖さも減った気がしました。 もともと何にでもすぐにかぶれる体質だったので、手術後は湿疹やかぶれが出ました。でも装具会社の方がとてもよく面倒を見てくださいましたし、病院のお薬のおかげでなんとかあまりつらい思いをせずに過ごせるようになりました。 装具会社の相談会には毎月参加しています。最初は先輩方のお話をお聞きするだけでとても心強く感じたものです。最近では、顔なじみになった方々にお会いするのが楽しみで引き続き参加させていただいています。 太ってお腹が出てしまってはパウチを貼るのに困ると思い、近所の公民館の太極拳クラスに参加しています。運動などできないものと思い込んでいましたが、もう半年も続けています。クラスの生徒さんはほとんど私よりずっとご高齢の方が多いのですが、かえって私のほうがみなさんにいたわっていただいています。 こうして元気で生活できているのも、たくさんの方に支えられているおかげだとあらためて実感しています。

山登り

ストーマの手術を受けてから5年。ストーマとの生活にもかなりの余裕が出てきたので、昔みたいに登山に行ってみることにしました。まぁ、久しぶりの登山なので日帰りができるいわゆる初心者向けのコースを選びました。他の登山者よりも少し早い時間から登り始めました。スタート時間を早めたのは、手術後初めての登山で不安がゼロではなかったから・・・。でも、登り始めてしまえばそんな不安はどこへやら、山にはずっと慣れ親しんできましたから、いつの間にかストーマのことを忘れて頂上を目指していました。初心者コースとはいえ、久しぶりの登山ですから途中きつかったんですが、それでも目標としていた時間には頂上に到着し、自分の周りに広がる360度のすばらしい景色を堪能することができました。いろいろ不安なこともありましたが、終わってみれば、前とそれほど変わることのない登山だったわけです。でも、全く何も対策をしなかったわけではありません。山登りでは汗をかきますから、装具の溶けが心配です。当然、リュックの中には予備のストーマ装具。さらに、普段の交換間隔には1日早かったのですが、登山の前日に新しい装具に交換して登山に臨みました。まぁ、結果として、交換を必要とすることはなかったんですけどね、そういう備えがあったから、登山に夢中になれたのかもしれません。これなら、もう少し長い登山も行けるとちょっと自信が出てきました。ただ、その時はもう少し準備が必要かもしれません。例えば、水は少し多めに持っていった方が良いかもしれません。勿論、飲むためのものではありますが、万が一、途中で装具交換が必要になった時、水があると助かりますよね、きっと。ストーマ周囲の皮膚を洗ったり、手を洗ったり、剥がした装具を持ち帰る前に袋の中を水で流したり・・・。そう、そう、今回の登山で思ったことがもう1つ。トイレを探す必要がないんですよ。

ラベンダーの香りでさわやかに

もともと鼻が利くほうなので、ちょっとでも「あれ?」と思うときはすぐにトイレで確認することにしています。そのままにしておくと漏れたり、何かトラブルになることが多いですから。何度か失敗しながら、「あ、これは早めに手当てしないと」という感じがつかめてくると思います。それから、トイレを出るときには携帯用の消臭スプレーを使ったり、ラベンダーやミントなどのさわやかな香りのオイルを水で薄めて小さな容器に入れたものをシュッシュッとスプレーしたりしています。トイレも、自分も、さわやかな香りになりますよ。