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2019年4月公開
畠山 誠
医療法人札幌ハートセンター
札幌心臓血管クリニック、
皮膚・排泄ケア
認定看護師(2020年12月現在)
便秘は、看護師がよく遭遇する愁訴の1つです。あまりにもありふれているために、条件反射のように、ルーチン化した対応をしてしまってはいないでしょうか? こうした病態を考慮しないケアが、我々看護師に、以前からの“負の遺産”として受け継がれてきているような気がします。
現場では、「便は出ていれば安心」「3日出てないから下剤だね」「そろそろ浣腸の時期だね」などの言葉が数多く聞かれます。このように、便秘の病態を考慮しないケアが行われている実態が、まだまだ多い気がします。こうした現実に疑問をもって、下剤の内服や浣腸の施行に異議を唱えると、医師や先輩看護師から、「何かあったら責任とれるの?」と、まるで反逆者のような扱いを受けてしまい困っているという、真面目に勉強をしにきている看護師さんから相談を受けることがまだまだ多くあります。
およそ30年ぶりに新しい下剤が登場したのを皮切りに、次々と新たな下剤が発売されています。それと合わせて、2017年には『慢性便秘症診療ガイドライン』が出され、便秘の定義や分類が新しくなりました。このような流れの中で、病態を無視した経験や勘だけに頼った便秘への対処は、変わっていかなければならない時代になってきているのです。“便秘ケア”は、医療者が正しい知識に基づいたアセスメントをもとに行っていく「新たな段階」に入ってきたように思います。
筆者は消化器内科の外来で、慢性便秘症患者の問診や生活指導を行う機会が多くあります。「下剤の処方は医師がするものだから…」と、看護師が介入することなく見過ごさずに、医師と協働して便秘の改善に取り組むことが必要だと日々感じています。
皆さんが病棟で困ることの多い、高齢者のせん妄や退院調整なども、排泄と密接な関連があります。多忙な業務を抱える今の臨床現場で、便秘への有効な対処をすることは簡単なことではないかもしれません。しかし、あたり前にしている便秘への対処は、実は患者さんの全体像を捉えた看護師の臨床能力が問われていることだと思います。このようなことを意識して、便秘への対処を、「ただ便を出さなければならない」という“日常業務”から、さまざまな患者さんの入院・地域での生活を助ける“看護援助”へと深化していくことが重要です。この特集が、そうした“一歩進んだ便秘ケア”の一助になれば幸いです。
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