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2019年4月公開
(6)退院後に必要なケアを見通した排便ケアを
畠山 誠
医療法人札幌ハートセンター
札幌心臓血管クリニック、皮膚・排泄ケア認定看護師
病院で勤務をする看護師にぜひ気にかけてほしいことがあります。現在のように入院期間が短縮されている状況で、皆さんが勤務する病院の平均在院日数は何日くらいでしょうか? 皆さんの担当患者さんが3日に1回程度排便しているとしたら、入院期間中に何回くらい排便の評価をする機会があるでしょうか?
治療に伴う生活の制限や環境の変化で、退院してしまえば便秘が改善する患者さんも多くいるでしょう。しかし、退院後も継続して排便ケアが必要な人も少なくないはずです。病棟で下剤を内服している患者さんは、家に帰っても同じ量の下剤が必要なのでしょうか? 内服の中止や増量の判断はご自身や家族でできる方々でしょうか?誰か相談にのったり助けてあげられる方はいるでしょうか? そこまで見通した退院後の排便ケアが必要だと思います。
医師は浣腸の処方はしてくれますが、自宅に戻ってからの浣腸や坐薬の管理は、いったい誰が行うのでしょうか? 施設に戻るから大丈夫だろうと思っても、実は看護師などの医療職がいない(または勤務している時間が限られている)場所だったりします。筆者も、退院直前にそういった問題に気づいたり、訪問看護師から指摘を受けて配慮が足りなかったと思うケースを数多く経験しています。
多くの患者さんは、疾患の治療が済んだ後「生活の場」に戻っていきます。便秘を含む排泄ケアは、生活の場に合わせて行うことが重要になるケアの1つです。病棟での看護の一環として、在宅ケアを担当する看護・介護職へ排泄ケアについての情報を伝えていくことが、患者さんにとってはとても重要なのです。
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便秘の治療は医師や薬剤師と連携して、やってはいけない薬剤の使用を正すことが重要です。
ただ、それだけにとどまらず、生活に根ざした便秘のケアは自分たち看護師のスキルを思う存分発揮できる分野の1つだと思っています。高齢者の便秘は、生活の支援不足の結果が色濃く現れます。便秘の治療を有効に作用させるためにも、患者さんや利用者さんの日常生活の質を高めていく支援が重要です。
病棟でのルーチンワークから抜け出た便秘の看護ケアができるようになることで、患者さんの満足度はもちろん高まりますし、看護の素晴らしさを再認識して、専門職としてのやりがいが高まることにつながると筆者は実感しています。より多くの看護師が便秘ケアの新しい段階に移行してほしいと願っています。
参考文献
1.上島邦彦:便秘へのアプローチ─8つのステップで快適な排泄を導く!,Hospitalist 2017;5(4):737-749.
©DEARCARE Co., Ltd.