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2020年2月公開
PartⅠ 経口食支援(Oral Meal Support Care)
「食べたくない」高齢者に対する食支援
水野英彰
医療法人社団悦伝会 目白第二病院
副院長
経口食支援において重要なのが、的確なアセスメントです。食事摂取量の減少を認めたときに、その患者が、「食べたいけど、食べられない」のか、あるいは本当に「食べたくない」のかをアセスメントする必要があります。「食べたいけど、食べられない」場合の代表的な要因としては、“嚥下障害”や“認知症”があります。これらに対する支援は、すでに摂食・嚥下障害看護認定看護師や認知症看護認定看護師などにより、多くの支援策が示されています。ここでは、「食べたくない」、つまり「食欲低下」の場合の支援策について解説しましょう。
高齢者の「食べたくない」、つまり「食欲低下」は、次のような2つの要因によって起こります。1つは、加齢性の変化による社会・環境要因などの外的因子を含めた、特有の要因です。もう1つは、慢性疾患(関節痛・腰痛・夜間頻尿・便秘など)を複数有する身体的要因などから、ゆううつ傾向、口腔内の虚弱(オーラル・フレイル)が著明になり、食欲低下に発展するものです。食欲低下が継続すると、低栄養による栄養障害の問題へとつながります。
生理的には、除脂肪体重は1年当たり0.3kg程度低下しますが、60歳までは脂肪で置換され、体重の変化は認めません。60歳以降の正常な体重減少は、1年当たり0.1~0.2kgといわれています。低栄養による骨格筋の低下はサルコペニアをきたし、筋肉量の低下は、さらに「食べられない」問題を悪化させます。さらに状態が進行すれば、カヘキシア(脂肪減少以上に、骨格筋の減少・心筋の萎縮・臓器のタンパクの減少・免疫能・炎症反応を含めた身体機能の低下)となり、感染の増加や創傷治癒の遅延、褥瘡形成、治療への反応性の低下、そして死亡率の上昇へとつながります。
そのため、食支援を必要とする患者においては、常に“食欲”に関するアセスメントが重要と考えられます。栄養障害が深刻になる前に、食支援するわれわれが、食べられないことが問題となっていることを察知し、早期に介入することが大切です。
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