2024年2月公開
Part1 脳卒中ってどんな病気?
~脳神経専門の認定看護師が解説~
久松正樹
社会医療法人医仁会 中村記念南病院
急性期病棟 看護師長
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師
久松正樹
社会医療法人医仁会 中村記念南病院
急性期病棟 看護師長
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師
脳卒中は、脳の血管が閉塞したり、破けたりすることで脳が障害を受ける病気です。脳卒中は英語でstroke(ストローク)と言います。脳卒中と呼ばれる病気は3つあります。脳の血管が閉塞する「脳梗塞」、脳の奥へ向かう細い血管が破ける「脳出血」、脳の表面の太い血管が破ける「くも膜下出血」の3つです(図1)。
図1 脳卒中とは
脳卒中と言えば?「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」と3つ答える
脳梗塞には病型と発生機序という2つの考え方があります。まずは病型です。いわゆる脳梗塞の種類です。病型は「ラクナ梗塞」「心原性脳塞栓症」「アテローム血栓症」の3つです(図2)。
図2 脳梗塞の病型
脳梗塞の病型(種類)は、ラクナ梗塞、心原性塞栓症、アテローム血栓症
次に発生機序です。脳梗塞は血管が閉塞してしまう病気です。それではなぜ血管が閉塞してしまうのでしょうか? それを教えてくれるのが発生機序です。つまり、何が原因で血管が詰まったか? ということです。この発生機序にはやっぱり3つあり、「血栓性」「塞栓性」「血行力学性」です(図3)。
図3 脳梗塞の発生機序
脳梗塞の発生機序は、血栓性、塞栓性、血行力学性
脳出血は、脳の血管が破綻することが原因で起こります。脳の血管と言っても、「脳の奥へ向かう細い血管」です。そこが破綻するという点が重要です。それでは、なぜ脳の血管が破綻するのでしょうか? それは、もろくなった血管に負荷がかかるためです。弾力性が失われてもろくなった血管に高血圧が原因で負荷がかかることで、やがて血管が破綻してしまいます。
脳出血の原因のほとんどは「高血圧」
脳出血には出血を起こしやすい部位があります。その代表的な部分は5つ。「被殻」「視床」「脳幹」「小脳」「皮質下」です(図4)。もちろんこれだけではありませんが、この5つがとっても大事です。特に、脳出血のうち被殻と視床という場所で出血するのが7割ほどです。脳出血は出血しやすい部位を覚えるのが重要です。
図4 脳出血の好発部位
脳出血を起こしやすい部位は、被殻、視床、脳幹、小脳、皮質下の5つ
くも膜下出血は、脳を保護しているくも膜(図5)と呼ばれる膜の下にある、比較的太い血管が破綻することによって生じます。脳出血は脳の奥へ向かう細い血管でしたが、このくも膜下出血は脳の表面を走る比較的太い血管に生じた「瘤(コブ)」が破裂することが原因です。
くも膜下出血の原因は、脳の血管にできた瘤(コブ)の破裂
図5 脳を包む膜
瘤は血管の分岐部できやすいですが、血管が裂けることによって生じる瘤もあります。これを「解離性動脈瘤」といいます(図6)。
図6 動脈瘤と解離性動脈瘤
脳の表面を走る血管が破綻すると、くも膜下腔に血液が流れだします。これが悪さを引き起こします。
くも膜下出血は3つの時期にまとめることができます。1つ目の時期は、「くも膜下出血を発症してから手術が行われるまでの期間」です。2つ目の時期は、「手術が終わってから約14日間」です。この時期は、脳血管攣縮期と呼ばれます(図7)。
図7 脳血管攣縮
3つ目の時期は「15日目以降(遅発性の脳血管攣縮があり発症から3週間は注意が必要と言われます)の正常圧水頭症の時期」です。正常圧水頭症は頭蓋内に流れている髄液の吸収障害によって通常より髄液が貯留した状態です。
くも膜下出血の時期は大きく分けて3つ。1つ目は「発症から手術まで」、2つ目は「発症から14日間の脳血管攣縮期」、3つ目は「正常圧水頭症の時期」
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