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【わかりやすい実践動画を活用した研修・スキルアップで介護現場の生産性向上!】
2024年11月公開
一般社団法人全国介護事業者連盟
一般社団法人全国介護事業者連盟
理事長 斉藤 正行
介護業界を取り巻く環境は、長引くコロナ禍・物価高騰による影響や、人材不足の状況など厳しさを増しています。そのような情勢の中で迎えた令和6年度介護報酬改定は、全体改定率+1.59%となり、訪問介護等の基本報酬単位のマイナスなど、サービスによる濃淡は大きく、決して十分な水準とは言えないですが、それでも過去2番目の上げ幅となりました。また改定の内容も、将来の制度改革に繋がる多くの見直しが行われました。少子高齢化、現役世代の急減という新たな局面を迎え、介護業界は今大きな転換点となっています。今回の報酬改定の読み解きとともに、今後の大きな制度改革のゆくえを論考していきます。
介護職員の不足には「処遇改善」「生産性向上」が解決の糸口
一般社団法人全国介護事業者連盟
理事長 斉藤正行
まず、介護事業者にとって最も大切な考え方の1つが「生産性向上」です。介護現場では、まだまだ忌避感をもって捉えられていますが、必要不可欠な取り組みであることを理解するためにも、厚生労働省が公表した最新の介護職員の必要人数の推計を確認したいと思います。2040年には約272万人の介護職員が必要とされており、直近のデータでは2022年度に約215万人が従事していることから、約57万人が不足すると予測されます。
図1 介護職員の必要数について
引用:「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41379.html
この不足人数を2040年までに補完するには、毎年約3.2万人ずつ増やさなければなりません。現状でも介護現場は他産業以上に人材確保に苦慮していますが、介護職員不足はいっそう深刻な問題となります。
従来示されていた予測では、2040年に必要な介護職員が約280万人とされていましたが、今回の予測では約8万人減ったことになります。厚生労働省は、介護予防・健康寿命の延伸に向けた様々な施策の効果が出てきた関係で、要介護高齢者になる比率が低下し、従来の予測より要介護高齢者が減少すると考え、その分必要な介護事業所数・介護職員数が少なくなる見込みになったとの見解を示しています。
ただ、介護現場の人材不足の状況が改善傾向にあるわけでは決してありません。2022年度には、介護現場で働き始める人材よりも離職者が初めて上回り、入職超過率がマイナスに転じました。入職超過率に改善が見られなければ、必要な介護職員数は更に増加することも考えられます。
また、介護職の離職率は低下傾向にあって、2023年は13.1%となり、全産業平均の15%を下回っています。離職率が改善傾向にある中で、入職超過率がマイナスに転じたということは、新たに介護職として働き始める人数の割合が介護職総数から考えると減少していることになり、介護現場の人材採用が厳しさを増していることを意味します。
さらに、今後は生産年齢人口(15歳~64歳人口)が20年かけて2割程度減少していくことになります。約57万人の介護職員を増やす必要がある一方、主たる労働人口であり、労働者の母数となる生産年齢人口の大幅な減少によって、人材採用の厳しさは想像を絶する時期を迎えることになります。
このような状況の中で、介護職員を増やすために行うべきことは、何と言っても処遇改善策を講じていくことです。現在の物価高騰において、職員の実質賃金は低下しており、他産業の賃上げ水準には追いつかず、賃金格差が広がっている状況にあります。令和6年度介護報酬改定における処遇改善は、令和7年度までの2年分の予算として支給されています。令和8年度は更なる処遇改善を行う方針が示されていることから、臨時の報酬改定や税金による追加措置が期待され、令和9年度介護報酬改定においても処遇改善が求められることになります。また、政府の対策だけでなく、介護事業者による独自の処遇改善に向けた取り組みにも期待されます。
ただし、高齢者・要介護高齢者は増加を続け、一方で労働人口が減少する以上、より少ない人数で多くの要介護高齢者に介護を行う「生産性向上」は必要不可決なテーマであると言えます。
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