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【わかりやすい実践動画を活用した研修・スキルアップで介護現場の生産性向上!】
2024年11月公開
介護業界の今後を担う「生産性向上」について
一般社団法人全国介護事業者連盟
理事長 斉藤 正行
「生産性向上」という言葉は、介護現場では大変不評ですが、それは誤解に基づいていることが多いと私は思います。「生産性向上」とは、アウトプット(成果)をいかに少ないインプットで実現するかを追求することであります。一般的な産業や工場などでは、売上や生産数をアウトプット(成果)にして、社員数や労働時間数をインプットにあてはめることが多く、当然ながら介護においては、定義が異なります。厚生労働省が示している「介護分野における生産性向上ガイドライン」1においては、介護分野における生産性向上の目的は、「介護サービスの質の向上」と「人材の定着・確保」とされており、いかに少ないスタッフ数や労働時間数でサービスの質を維持・向上させ、職員の負担軽減の実現を追求することになります。従って、「生産性向上」が実現すると、介護現場における職員の仕事が楽になるということでもあります。
「生産性向上」を進めていく上で、最重要テーマと言われているのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用です。デジタル技術を活用することによって生活やビジネススタイルを変革することであり、介護現場においては、センサーや見守り機器、介護ロボット、記録システム、請求ソフト、AIケアプランなどを有効に活用し、介護現場の負担軽減に役立てることを目指します。しかしながら、「生産性向上」=「DX推進」ではありません。また、これらのICT機器を活用する上においても最も大切なことがあります。それは、『介護現場の業務分解』を行うことです。
介護の仕事が、複雑で多岐にわたっていることは言うまでもありません。その中で、業務内容には、「専門性の高いプロフェッショナルなスキルを必要とする業務」「単純作業であり誰でも比較的に実践できる業務」「プロフェッショナルな業務と単純作業を組み合わせた業務」に大別することが出来ます。介護現場の仕事をこの3種類に細かく分解することが「生産性向上」には必要であり、しっかり分解することで、単純作業をICT機器で代替することや、新人職員および外国人材等のスタート業務に充てることで、介護現場の業務負担が軽減されます。その上で、新たに捻出された時間を利用して、職員向けの専門性向上に関する研修、その他スキルの取得に繋がるリスキリング研修等の時間を増やすことや、利用者と接する時間を確保することによって、介護サービスの質を向上させることにも繋がります。
令和6年度介護報酬改定において、「生産性向上」は踏み込んだ見直しが行われました。まずは「生産性向上推進体制加算」の創設です。
図2 生産性向上推進体制加算の概要
引用:令和6年度介護報酬改定における改定事項について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230329.pdf
施設・居住系等のサービスに創設された加算であり、ICT機器を導入し「介護分野における生産性向上ガイドライン」に基づいた取り組みを行うことで算定が可能となります。いよいよ「生産性向上」への取り組みに対するインセンティブが設けられたことになります。さらに、特定施設入居者生活介護において、ICT機器の活用に伴う生産性向上を実現している事業所には、特例として3:1の人員配置基準を3:0.9に緩和する措置が講じられました。その他にも様々な「生産性向上」に向けた見直しが行われています。まだ試験的な意味の強い見直しですが、今後更に踏み込んだ改革が行われることとなり、必ず介護現場における「生産性向上」が必要な時代が訪れることになります。介護事業者は、その時を見据えて、本格的に「生産性向上」への準備を進めていくことが大切であると思います。
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