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“身体拘束ゼロ”実現のためのテクニック 大誠会内田病院の認知症ケアの実践から
2018年12月公開
(3)身体拘束は、どのくらいの病院・施設で行われているのか
『エキスパートナース』編集部
身体拘束は、現場では、どの程度行われているのでしょうか。その実態は、公益社団法人全日本病院協会が平成28年(2016年)3月に発表した「身体拘束ゼロの実践に伴う課題に関する調査研究事業」報告書に詳しく紹介されています。この調査は、全国の病院、介護保険施設、特定施設、サービス付高齢者施設の中からそれぞれ無作為抽出した計2020機関を対象としたアンケート調査で、712施設から回答(回収率35.2%)が得られたものです。これをもとに、身体拘束廃止に向けた現状と課題、今後の方策について報告されています。
これによると、11項目のうち1項目でも実施している病院は、一般病棟(7:1/10:1看護)93.1%、一般病棟(13:1/15:1看護)94.7%、地域包括ケア病棟98.6%、回復期リハビリテーション病棟91.5%と、かなりの高率で身体拘束が行われていることがわかっています。
一方、介護施設では、介護老人保健施設46.6%、介護老人福祉施設33.3%と、病院の半分以下の数字となっています(図1)。このように、いわゆる介護施設で身体拘束の実施率が低いのは、「身体的拘束の禁止(緊急やむを得ない場合を除き)」が施設の運営基準に含まれていることも大きな要因でしょう。つまり、介護保険法に基づく指定介護老人福祉施設の運営基準のなかには、「当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者等)の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない」とされているのです。
図1 身体拘束11項目のうち1つ以上を行うことがある施設の割合
文献1より引用
このように、医療保険が適用される病棟(病床)のほとんどで身体拘束が行われています。それだけ、医療依存度の高いところでは、身体拘束せざるを得ない現状があるいうことでしょう。その理由としては、「治療を優先するため」「患者安全第一のため」「看護・介護職員数が十分でないため」などが考えられます。
文献
1.公益社団法人全日本病院協会:「身体拘束ゼロの実践に伴う課題に関する調査研究事業」報告書.2016.
https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/160408_2.pdf
©ALCARE Co., Ltd.