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“身体拘束ゼロ”実現のためのテクニック 大誠会内田病院の認知症ケアの実践から
2018年12月公開
(8)身体拘束廃止への動きとそれを阻む要因
『エキスパートナース』編集部
身体拘束廃止への動きは、ここ数年で急速にわき起こってきたわけではありません。今から30年ほど前の、東京都八王子市にある上川病院の取り組みに端を発します。その後、1998年には、抑制廃止福岡宣言が出され、1999年3月厚生省令で身体拘束禁止が規定されました。その後、九州各地や山口県、沖縄県、北海道などで抑制廃止宣言が相次いで出されました。2000年にスタートした介護保険制度では、介護保険指定基準の身体拘束禁止規定が適用され、厚生労働省が「身体拘束ゼロへの手引き」を出したのが2001年でした。
さらに、障害者虐待防止法では、「正当な理由なく障害者の身体を拘束すること」は身体的虐待とされています1。そして、障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの運営基準では、身体拘束は原則禁止となっています2。
上川病院の実践は、『縛らない看護』(医学書院、1998年)に詳しく紹介されています3。同院では、患者さんに、抑制せざるを得ない状態をつくらないために重要な“5つの基本的ケア”を提示しています(図1)。「起きる」「食べる」「排泄」「清潔」「アクティビティ」の5つの基本に対するケアをきちんと実行することによって、転倒しやすい状況や、点滴を受けなければならない状況をつくらないようにできるという考えです。
図1 5つの基本的ケア
文献3より引用
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このように、“生活・介護”を主体とする“療養”の場から始まった「身体拘束廃止」の動きが、“治療・医療”を主体とする“病院”の場へと大きく動き始めています。身体拘束廃止の動きの前に大きく立ちはだかっているのが、「拘束はやむを得ないもの」「患者が危険だから仕方ない」という医療従事者のなかに存在する「意識の壁」です。意識の壁を突き崩し、本来の患者を中心とした看護を実践していこうという動きが、全国の病院で再び起こり始めているのです。
引用文献
1.障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律.平成23年法律第79号.
2.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員,設備及び運営に関する基準.平成18年度厚生労働省令第171号.
3.吉岡充,田中とも江編著:縛らない看護.医学書院,東京,1999.
参考文献
1.厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部,障害福祉課 地域生活支援推進室:障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き,2018.
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000211204.pdf
2.日本看護協会編:身体拘束廃止取り組み事例集~私たちのゼロ作戦~.日本看護協会出版会,東京,2003.
3.日本看護倫理学会 臨床倫理ガイドライン検討委員会:身体拘束予防ガイドライン.
http://jnea.net/pdf/guideline_shintai_2015.pdf
(2018.10.31.アクセス)
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