※パスワードの変更もこちらから
2021年7月公開
『エキスパートナース』編集部
施設系サービスでは、これまですでに委員会開催や指針整備、研修は義務づけられていましたが、感染症や災害発生時のシミュレーション訓練も新たに加わる形となりました。また、訪問や通所などその他のサービスでも同様の対応が義務づけられました。
認知症患者は高齢化とともに増加傾向にあり、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になるとの予測もあります。コロナ禍では、介護サービスの一時見合わせや外出自粛などで認知症の悪化が進んだとの声も多く聞かれ、さらなる増加が懸念されています。
今回の改定では、認知症への対応力や介護サービスの質を向上していくための措置が取られました。
地域包括ケアシステムの推進に伴い、看取りの場も病院から施設・在宅へとシフトしてきています。看取り期において、本人や家族が望まない救急搬送や延命が行われないよう、事前の十分な話し合い、および、施設や在宅の場での看取りへの対応充実が求められ、今回の改定においてもそれら背景を受けた見直しや加算創設が行われました。
退院当日は入院期間に含まれる(入院日となる)ため、これまでは「厚生労働大臣が定める状態等」に該当する方(特別管理加算対象者)しか、退院当日の訪問看護費の算定ができませんでしたが、今回の改正によって、主治医が必要と認める場合も算定が可能となりました。
厚生労働省が運用している「通所・訪問リハビリテーションデータ収集システム(VISIT)」と「高齢者の状態やケアの内容等データ収集システム(CHASE)」が、令和3(2021)年4月1日から一体化され、「科学的介護情報システム(LIFE)」として運用がスタートしました。
今回の改定では、重度化や寝たきりを防ぐための取り組みも強化されました。特に注目したいのが、施設系サービスにおける褥瘡マネジメント加算および排せつ支援加算について、状態改善アウトカム評価を算定要件とする新たな区分が加わったことが挙げられます。
令和3年度(2021年度)介護報酬改定は、全体でみると0.70%のプラス改定となりました。うち0.05%は新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)に対応するための特例的な評価(令和3年9月末まで、全サービスを対象にひと月の基本報酬を0.1%上乗せ)となっています。
なかなか終息が見えないCOVID-19の拡大によって、社会は大きな変革を迫られています。喫緊の経済支援対策により国の財政状態も逼迫度を増しています。同時に超高齢社会に突入しつつあるわが国では社会保障の整備も進めていかなければなりません。そんな渦中にあって、令和3年度介護報酬改定が行われました。ここ数年にわたる診療報酬・介護報酬改定で目指してきたのは、団塊の世代が全員75歳以上を迎える節目である2025年の社会保障体制です。
COVID-19のパンデミックはまさに突発的出来事であったため、その要素も重視しながら、今回の介護報酬改定は行われました。今回の診療報酬改定のポイントを3つ挙げるとすると、以下のようになると思われます。
1つ目のポイントは、新型コロナウイルスをはじめとする感染症への対応、それに伴い必要な介護サービスを継続するための体制整備です。
2つ目のポイントは、科学的介護の推進です。具体的には、新データベース「LIFE」の活用です。「科学的介護」という言葉が初めて登場しました。
3つ目のポイントは、人材不足に対応するためのICT等の活用による業務効率化です。
これらを踏まえて、今回の改定は、以下の5つの柱を基本としています。
1. 感染症や災害への対応力強化
感染症や災害が発生した場合であっても、利用者に必要なサービスが安定的・継続的に提供される体制を構築
2. 地域包括ケアシステムの推進
住み慣れた地域において、利用者の尊厳を保持しつつ、必要なサービスが切れ目なく提供されるよう取組を推進
3. 自立支援・重度化防止の取組の推進
制度の目的に沿って、質の評価やデータ活用を行いながら、科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供を推進
4. 介護人材の確保・介護現場の革新
喫緊・重要な課題として、介護人材の確保・介護現場の革新に対応
5. 制度の安定性・持続可能性の確保
必要なサービスは確保しつつ、適正化・重点化を図る
本特集では、これら改定によって介護現場にはどのような変化が起こりうるのか、特に介護現場で働く看護・介護スタッフが知っておきたい点にポイントを絞って紹介します。
*
改定に関する事務連絡等は日々更新・通知されますので、最新情報は下記、厚生労働省のWEBサイトも併せてご覧ください。
■厚生労働省:令和3年度介護報酬改定について.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00034.html
©ALCARE Co., Ltd.