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2021年7月公開
認知症への対応力強化に向けた取り組みを推進
『エキスパートナース』編集部
認知症患者は高齢化とともに増加傾向にあり、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になるとの予測もあります。コロナ禍では、介護サービスの一時見合わせや外出自粛などで認知症の悪化が進んだとの声も多く聞かれ、さらなる増加が懸念されています。
今回の改定では、認知症への対応力や介護サービスの質を向上していくための措置が取られました。
介護サービス事業者に対しては、下記のとおり無資格のスタッフへ認知症介護基礎研修を受講させることが義務づけられました。
認知症についての理解の下、本人主体の介護を行い、認知症の人の尊厳の保障を実現していく観点から、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていくため、介護サービス事業者に、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者について、認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることを義務づける
※3年間の経過措置期間を設ける。新入職員の受講について1年の猶予期間を設ける
下線は編集部追記
認知症介護基礎研修は、認知症に関する知識をもたないケアスタッフに向けたプログラムとして、講義を主体とした「認知症の人の理解と対応の基本」、および、演習を主体とした「認知症ケアの実践上の留意点」の2つの内容、それぞれ3時間、計6時間で構成されています。「認知症の人の理解と対応の基本」についてはeラーニングでの受講も可能です。
認知症の対応力向上に向けたステップアップとしては、以下のようなイメージ図が厚生労働省から出されており、介護にかかわるすべてのスタッフに対して、認知症介護に最低限必要な知識と技能を習得することが求められています。
厚生労働省:介護従事者等の認知症対応力向上に向けた研修体制.
これまで施設系サービスに導入されていた認知症専門ケア加算は、今回の改定で以下の訪問系サービスにも拡充されました。
認知症専門ケア加算(Ⅰ) 3単位/日
認知症専門ケア加算(Ⅱ) 4単位/日
※定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護(Ⅱ)については、認知症専門ケア加算(Ⅰ)90単位/月、認知症専門ケア加算(Ⅱ)120単位/月
算定要件は既存の他サービスの認知症専門ケア加算と同等の要件となっており、下記のように定められています。
〔算定要件〕
認知症専門ケア加算(Ⅰ)
認知症専門ケア加算(Ⅱ)
訪問系サービスでもこれらが算定可能となったことで、自宅での認知症介護にも専門的なケアを取り入れるための一助となることが期待できます。
今回の新設分を含めた各サービスへの認知症専門ケア加算(通所介護、地域密着型通所介護においては認知症加算)の算定要件となっている、認知症介護実践リーダー研修修了者や認知症介護指導者養成研修修了者といった「認知症ケアに関する専門研修を修了した者」の範囲が、今回の改正で広げられました。
具体的には、認知症ケアに関する専門性の高い看護師として、下記の3つが配置要件の対象に加わりました。
①日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」の研修
②日本看護協会が認定している看護系大学院の「老人看護」及び「精神看護」の専門看護師教育課程
③日本精神科看護協会が認定している「精神科認定看護師」
専門性の高い看護師からの支援は、利用者へ質の高いケアの提供が可能となるだけではなく、スタッフのケア能力の向上、さらには事業所全体のケア能力の向上につながります。今回の改正で加算の配置要件にも加わったことから、認知症看護認定看護師をはじめとした専門性の高い看護師の活躍の場がさらに広がりそうです。
認知症によって在宅での生活が困難となり、急遽入所サービスを提供した場合に算定される認知症行動・心理症状緊急対応加算は、今回の改定で多機能系サービス(小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護)に拡充されました。
認知症行動・心理症状緊急対応加算 200単位/日
算定要件は既存の他サービスと同等となっており、下記のように定められています。
〔算定要件〕
医師が、認知症の行動・心理症状が認められるため、在宅での生活が困難であり、緊急に短期利用居宅介護を利用することが適当であると判断した者に対し、サービスを行った場合。利用を開始した日から起算して7日間を限度として算定。
特に認知症の周辺症状(BPSD)である興奮や徘徊といった症状は、夜間に増強することが多く、また在宅での生活が困難となる大きな要因でもあります。多機能系サービスでの算定が認められることになり、在宅での認知症高齢者の緊急時の宿泊ニーズへ対応できる環境づくりをより一層推進する観点から、今回の改定となりました。
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