こんなときどうする?いざというときに備える!在宅で遭遇する急変(急な状態変化)への対応こんなときどうする?いざというときに備える!在宅で遭遇する急変(急な状態変化)への対応

利用者の急な状態変化にも慌てず対応するためのエッセンスをぎゅっと凝縮

Part3急変、救急対応の実際:症状別

医療法人社団 YAYOI
 やよい在宅クリニック
 やよい訪問看護ステーション
 (管理者)、看護部長
診療看護師/ナース・プラクティショナー
野呂 美香 先生

一部会員限定
ページあり!

2025年4月公開

5.利用者宅に訪問したところ、応答が緩慢で意識がはっきりしていない!

押さえておこう【急変時のアセスメント~FAST、GCS、JCS、バレー徴候】

こんなとき、どうする?

定期訪問で利用者宅を訪れた際に、会話が成り立たず意識がボーっとしている状態であった。

応答が緩慢で意識がはっきりしないとき、何を優先に確認していけばよいでしょうか。意識障害の原因病態として有名な語呂合わせが、アイウエオチップスです(表1)。

原因のなかですぐにわかって対応が可能なのが、低血糖です(Part5-5を参照)。また、利用者は自宅で転倒していても、病院のように誰かが気づく機会がない場合があります。よって、外傷がないか確認し、頭蓋内病変による意識障害ではないかの確認が必要です。また、各種疾患末期の方では、アンモニアが貯留することによる肝性脳症によって生じる意識障害や、腎機能増悪による尿毒症せん妄なども原因として考えなくてはいけません。
いずれにしても、いつまで通常どおり生活できていたのかなどは、訪問に携わっている看護師やケアマネジャー、介護士、家族などから聴取し、医療機関を受診して改善が見込めるものなのかを判断します。

表1意識障害の原因病態(AIUEOTIPS:アイウエオチップス)

意識障害の原因病態(AIUEOTIPS)

1.アセスメントと対応の流れ

  • ABCを評価し、次にD(Dysfunction of CNS:中枢神経障害)を評価(後述)
  • 病歴を確認 *発症時間が非常に大事
  • 同居の家族がいれば、最近の様子を聴取
  • 簡易血糖測定器(デキスター)で血糖測定
    →低血糖、高血糖昏睡の評価
  • 動脈血ガス採取
    →電解質の確認
  • 転倒歴、麻痺の有無を確認
    →頭蓋内病変の有無を評価

〈対応の流れ〉

  • 各種検査がすみやかに行えるように準備する
  • 画像検索が必要であれば、外来受診か入院の準備をする
  • 脳梗塞を明らかに疑う場合は、早急に搬送手続きを行う

〈疑うべき可能性〉

  • (がん末期、肝疾患の場合)せん妄、アンモニア上昇による肝性脳症
  • 脱水や腎機能障害による尿毒症
  • 痙攣後
  • over dose(過剰内服) など

2.緊急性(搬送の要不要)の判断

緊急性を判断するうえで、急性期の症状(普段とまったく違う意識レベル、麻痺の出現、痙攣の出現など)の有無が重要です。
採血でわかる異常に関しては、在宅で点滴投与し、推移を評価することも可能です。頭蓋内病変を疑う場合は、画像が撮れる病院へいったん搬送し、結果次第で再度自宅療養となる場合もあります。

脳梗塞を明らかに疑う場合、治療薬であるt-PAの適応(発症から4.5時間以内)に発症からの経過時間が関係してくるため、早急な搬送手続きが必要です。なお、たとえ発症から4.5時間以上が経過していたとしても、血管内治療の適応を評価するため、搬送が望ましいです。
脳卒中の初期症状として、FASTも覚えておくとよいでしょう。

Key wordFAST(Face,Arm,Speech,Time)

脳卒中を疑う初期症状として、顔(Face)、腕(Arm)、言葉(Speech)に、以下に示すような症状がみられることがあります。これらの症状が“突然”みられたときは、すぐに時刻(Time)を確認し、救急搬送を手配します(図1)。

図1ACT-FAST
ACT-FAST

3.中枢神経障害の評価(意識レベル、麻痺、瞳孔所見と反射)

1意識レベル

意識レベルの評価には、JCS(表2)やGSC(表3)を使用します。特にJCSは、多職種間でよく使用されるため、覚えておいたほうがよいでしょう。GCSは重度意識障害の分類が多く、救急、集中治療、ICUなどの看護師が使用することが多いです。

表2JCS(Japan Coma Scale)

JCS(Japan Coma Scale)

表3GCS(Glasgow Coma Scale)

GCS(Glasgow Coma Scale)

2麻痺

  • 四肢を動かし左右差を確認
  • Barre(バレー)徴候(図2)を確認
図2バレー徴候
バレー徴候

3瞳孔所見(表4)

瞳孔所見
POINT
  • 意識障害の原因はさまざまであるため、原因がわからず意識障害の遷延や麻痺、瞳孔不同など認める場合は頭蓋内病変の可能性も念頭に置き、早急に搬送、画像検索など検討する
  • 意識障害の鑑別を考えるに当たり、AIUEOTIPS(アイウエオチップス)で考えていく

参考文献

  1. 1.志賀隆編著:看護の現場ですぐに役立つ救急看護のキホン.秀和システム,東京,2020.
  2. 2.筒泉貴彦, 山田悠史, 小坂鎮太郎編:総合内科病棟マニュアル 疾患ごとの管理.メディカル・サイエンス・インターナショナル,東京,2021.
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