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2021年2月公開
末梢静脈注射は看護師の日常業務
執筆:『エキスパートナース』編集部
今ではほとんどの病院で、末梢静脈注射を行うのは看護師の業務になっていると思われます。しかし、静脈注射の実施が“診療の補助行為”の範疇とされ、法的に正式に看護師が静脈注射を行ってもよいとされたのは、2002年(平成14年)のことでした。このとき初めて、厚生労働省医政局長通知「看護師等による静脈注射の実施について」で、看護師による静脈注射の実施が明記されたのです。それまでは、静脈注射は「看護師の業務範囲を越えるもの」とされていました。それは、①薬剤の血管注入により身体に及ぶ影響が甚大であること、②技術的に困難であること、という理由からでした。
ただ、実際は当時でも法に定められたとおりではなかったようです。厚生労働省の「これからの看護のあり方を考える検討会報告書」で紹介されているように、2001年(平成13年)に実施された「看護師等による静脈注射の実態についての厚生労働科学研究」では、次のような結果が示されています。
①94%の病院の医師が、看護師等に静脈注射を指示している。
②90%の病院の看護師等が日常業務として静脈注射を実施している。
③60%以上の訪問看護ステーションで静脈注射を実施している。
つまり、当時から現場では、医師が多忙であるなどの理由によって、看護師が静脈注射を行っていたという実態があったのです。
そうした状況も踏まえた上で、「医師による包括的指示と看護の質向上による在宅医療の推進」「医療技術の進歩に伴う看護業務の見直し」等が考慮されて、静脈注射をめぐる行政解釈が変更されたと言えます。
このようにして、静脈注射が看護師の業務とされたのに伴って、公益社団法人日本看護協会では、2003年4月に『静脈注射の実施に関する指針』を示しました。その中で、静脈注射は表1、表2のように分類されています。これによると、注射針やカテーテルの血管穿刺/挿入だけではなく、側管から注射器を用いた混注や、側管に別の輸液セットを接続するピギーバック法なども含まれています。これらをすべて「広義の静脈注射」ととらえ、感染コントロールを含めて「安全に」、そして患者にとって「安楽に」、点滴静脈を行う技術が、看護師に求められています。
表1 静脈注射の分類
末梢静脈 | 静脈注射 | ①ワンショット(1回のみの薬液投与) | 静脈に注射針を刺入し、注射器を用いて投与する |
点滴静脈注射 | ②短時間持続注入 | 短時間、持続的に投与して終了、抜去する(いわゆる「抜き刺し」) | |
③長時間持続注入 | 長時間あるいは長期間、持続的に投与する | ||
④間歇的注入 | ヘパリンロック等により血管確保し、1日のうち一定時間帯に投与する | ||
中心静脈 | 中心静脈(栄養)法 | 持続注入 | 24時間持続的に投与する |
間歇的注入 | 1日のうち一定時間帯に投与する |
日本看護協会: 静脈注射の実施に関する指針. p4.より引用
表2 点滴・静脈注射による混注の方法
側管法 | |
側柱管から注射器を用いて1回で投与する | ![]() |
ピギーバック法 | |
側柱管に別の輸液セットを接続して投与する | ![]() |
タンデム法 | |
2種類以上の薬液を並列に接続して投与する | ![]() |
日本看護協会: 静脈注射の実施に関する指針. p4.より引用
日本看護協会の「静脈注射の実施に関する指針」のなかでは、注射針(カテーテル)は、以下のように分類・定義されている。
注射針(カテーテル)の分類
注射針(金属針) | 一般の静脈注射には20~23ゲージ、刃面長の短いショートベベル(SB)が用いられる |
翼状針 | 固定のための翼とチューブが付いた金属針。短時間持続注入等に使用する |
静脈留置針 | 金属製の内針とプラスチック製の外針からなり、血管内に穿刺して血液の逆流を確認した後、内針を抜去して外針のみ留置する。長時間持続注入等に使用する |
カテーテル | ・血管を露出して切開後挿入する静脈用カテーテル、中心静脈用カテーテル ・本指針においては静脈留置針の外針を指す |
日本看護協会: 静脈注射の実施に関する指針. p5.より引用
注射針の刃面の角度
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