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2024年6月公開
Part1 看護師がかかわる「重症度、医療・看護必要度」はどう変わった?
『エキスパートナース』編集部
【Key Word】
●重症度、医療・看護必要度 ●急性期入院料で「A項目2点以上かつB項目3点以上」廃止
●B項目:ADL状況・意識レベル評価 ●EF統合ファイル ●注射薬剤3種類
今回の改定では、「重症度、医療・看護必要度」の評価項目が下図のように見直されました。主な改定内容を表1に示します。
厚生労働省:令和6年度診療報酬改定の概要より引用
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
表1 今回の改定で変わったこと
①「創傷処置」について、評価対象を、必要度Ⅱにおいて対象となる診療行為を実施した場合に統一するとともに、「重度褥瘡処置」に係る診療行為を対象から除外する。
②「呼吸ケア(喀痰吸引のみの場合を除く)」について、評価対象を、必要度Ⅱにおいて評価対象となる診療行為を実施した場合に統一する。
③「注射薬剤3種類以上の管理」について、7日間を該当日数の上限とするとともに、対象薬剤から静脈栄養に関する薬剤を除外する。
④「抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)」について、対象薬剤から入院での使用割合が6割未満の薬剤を除外する。
⑤「抗悪性腫瘍剤の内服の管理」について、対象薬剤から入院での使用割合が7割未満の薬剤を除外する。
⑥「抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)」、「麻薬の使用(注射剤のみ)」、「昇圧剤の使用(注射剤のみ)」、「抗不整脈薬の使用(注射剤のみ)」、「抗血栓塞栓薬の使用」及び「無菌治療室での治療」の評価について、2点から3点に変更する。
⑦「救急搬送後の入院」及び「緊急に入院を必要とする状態」について、評価日数を2日間に変更する。
⑧C項目の対象手術及び評価日数の実態を踏まえた見直しを行う。
⑨短期滞在手術等基本料の対象手術等を実施した患者を評価対象者に追加する。
厚生労働省:令和6年度診療報酬改定の概要より引用
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
これまでの基準は、「①A得点が2点以上かつB得点が3点以上」、または「②A得点が3点以上」、または「③C得点が1点以上」でした。これが、「①A得点が3点以上」または「②C得点が1点以上」の基準、あるいは「①A得点が2点以上」または「②C得点が1点以上」に改定されました。
つまり、今回の改定で、B項目がなくなったことになります。B項目というのは、「患者の状況等」で、ADL状況や意識レベルを評価する項目です(表1)。ただ、患者の安全性を確保するという観点からはB項目のモニターは必要です。急性期入院医療の診療報酬上の評価からはなくなったとしても、現場の看護師はB項目モニターを継続する必要はありそうです。
表1 「重症度、医療・看護必要度」のB項目
B9:寝返り
B10:移乗
B11:口腔清潔
B12:食事摂取
B13:衣服の着脱
B14:診療・療養上の指示が通じる
B15:危険行動
重症度、医療・看護必要度には、「重症度、医療・看護必要度Ⅰ」と「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」があります。「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」は入院患者の重症度をDPCデータ(EF統合ファイル)で測定する仕組みです。これにより医療従事者の負担軽減や測定の透明性を図るために2008年に導入され、特定機能病院や専門病院では100%の導入が進んでいました。
これまでは、200床以下の急性期一般入院料1では「重症度、医療・看護必要度Ⅰ」の使用が認められていました。そのため、現状で重症度、医療・看護必要度Ⅱを届けている病院は急性期一般入院料1で89%、急性期一般入院料2~3では71.9%でした。
今回の改定からは急性期一般入院料1のすべての病院でⅡの使用が必須となりました。医療DXの推進、医療ビッグデータの活用という意味でも、この方向性はさらに拡がっていくでしょう。
A項目の「注射薬剤3種類以上の管理(最大7日間)」は「あり」で1点になりますが、この注射剤から「アミノ酸・糖・電解質・ビタミン」が除外されました。
この背景には、前回の2022年改定内容が影響しています。2022年度改定では、A項目の「心電図モニター管理」が削除され、「点滴ライン同時3本以上の管理」が「注射薬剤3種類」に変更されました。これまで「心電図モニター」が装着されていれば取れた1点を補うため、「注射薬剤3本」が急増しました。注射薬剤については、EF統合ファイルにおけるデータ区分コードが30番台(注射)の薬剤に限り、評価の対象となります。そこで、注射薬剤3種類以上を維持するため、静脈栄養薬剤である「アミノ酸・糖・電解質・ビタミン」等の薬剤を投与するケースが増えたのです。今回の改定では、「アミノ酸・糖・電解質・ビタミン」が除外されました。
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