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2025年9月公開
訪問入浴介護の基本知識
渡辺 忍
茨城県立医療大学保健医療学部
看護学科 准教授
訪問入浴介護は介護保険法で居宅サービスに位置づけられています。つまり、自宅で生活をする人のお宅へ伺って提供する訪問系サービスです。
訪問系サービスは他に訪問看護や訪問介護があり、それらのサービスでも自宅での入浴介助を受けることは可能です。その他、通所系サービス(デイサービス、デイケアサービスなど)でも入浴介助を受けることができます。
このように入浴介助を受けられるサービスがいくつかあるなか、訪問入浴介護が選ばれる理由はなんでしょうか。
訪問入浴介護は、オペレーター、介護職、看護職の3名を1チームとして組み立て式の浴槽を運び込んで行う、自宅での入浴介助に特化したサービスです(図1左)。自宅浴槽を使用して入浴できる方や移動可能な方は、他のサービスを利用することになります。つまり、訪問入浴介護サービスの特性から、介護度や医療依存度が高く、他のサービスで入浴介助が受けにくい方に利用されることが多くなります。基本的には、要介護1~5の認定を受けていることが、サービスを受ける前提条件となっています。また、要介護認定を受けた方だけではなく、障害児・者への障害福祉サービスとして提供されることがあります。
なお、感染症などにより他のサービスで入浴介助を受けられない方などは、介護予防訪問入浴介護といって、いくつかの利用条件のもとに介護度が高くない要支援者(要支援1~2)が利用できるサービスもあります。介護予防訪問入浴介護の場合は、看護職と介護職の計2名でのサービス提供になります(図1右)。
図1 訪問入浴介護と介護予防訪問入浴介護の違い
訪問入浴介護サービスの利用者の8割以上は要介護度3~5の重度者が占めており、訪問看護の利用者に比べ要介護度が高い1というデータがあります。また、訪問入浴介護サービスは、人工呼吸器や在宅酸素などの医療機器や膀胱留置カテーテル、気管切開などの装着器具の使用、褥瘡や拘縮などの医療的ニーズの高い身体状態にある方の利用が9割以上を占め、医学的な知識背景や看護技術の提供が求められるサービスです2。
入浴にはメリットがある反面、リスクを伴うため(後述)、訪問入浴介護に看護師が同行することが基本となっています。
訪問入浴介護では、利用者の自宅でサービス担当者が2~3人で入浴介助を行います。そのため、複数人に裸を見られることに抵抗感がある方もいらっしゃるかもしれません。そのようななか、訪問入浴介護サービスは、羞恥心への配慮、安全面や快適性を十分に考慮して行われます。日本ならではのきめ細やかな「おもてなし」サービスといっても過言ではない、利用者からの満足度が高いサービスの1つです。
そもそも、入浴による効果は皮膚をきれいにすることだけではありません。温熱作用による血行促進や静水圧作用によるマッサージ効果で痛みが軽減したり、気持ちよさやリラックス効果といった心理面への良い影響もあります(後述)。自宅で過ごされている方にとって、入浴サービスの間、利用者を中心としたスタッフとの楽しいコミュニケーションの場にもなりますし、ご家族にとっては介護負担が軽減されます。
このように訪問入浴介護は、介護サービスとして、さまざまな効果をもたらします。
一方で、介護サービスならではの課題も残されています。
訪問入浴介護を受ける利用者は医療的ケアが必要な方が多いですが、
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