～ 特集 ～
在宅で人工呼吸器を使用している療養者の日常生活ケア

（1）口腔内の評価とケア

口腔内評価は日々のケアのなかで看護師が実施します。OHAT-J（ORAL HEALTH ASSESMENT TOOL、図11）などを用いて観察・評価します。OHAT-Jでは、口の問題8項目（口唇、舌、歯肉・粘膜、唾液、残存歯、義歯、口腔清掃、歯痛）を、健全（0点）から病的（2点）までの3段階で評価します。OHAT-Jを導入することで、口腔環境を数値化でき、口の問題を多職種間で共有しやすくなります。

口腔ケアを行う前には、口唇と口腔周囲、口腔内に潤滑剤（保湿剤）を塗布します。
誤嚥予防のために、頸部を前屈します。顎下に4横指入る程度がめやすです。
可能であれば、側臥位で顔を横に向けた姿勢をとります。仰臥位で行う場合は、ヘッドアップ30度で頸部前屈位をとります。

次に、カフ圧を30cmH₂O程度へ調節します。

歯にはブラッシング、口腔軟膜や歯茎などはスポンジスワブを用いて汚れを除去します。舌苔は一度に全部取ろうとせず、保湿とスポンジブラシでの清拭を繰り返します。
最終的にスポンジスワブで汚れや水分を除去し、口腔（口蓋・舌・口腔粘膜）に保湿剤を塗布します。

図11　ORAL HEALTH ASSESMENT TOOL日本語版（OHAT-J）

アセスメントシートは東京科学大学大学院地域・福祉口腔機能管理学分野のホームページからダウンロード可能（無断転載、改変等は禁止）。

【引用】
1．Chalmers JM, King PL, Spencer AJ, Wright FA, Carter KD: The oral health assessment tool-validity and reliability. Australian dental journal. 50:191-199. 2005.
2．松尾浩一郎, 中川量晴. 口腔アセスメントシートOral Health Assessment Tool日本語版（OHAT-J）の作成と信頼性，妥当性の検討. 障害者歯科. 37:1-7. 2016.
3．Oral Health Assessment Tool（OAHT）日本語版. Available from: https://www.ohcw-tmd.com/research
（2025.11.10アクセス）
4．東京科学大学大学院地域・福祉口腔機能管理学分野ホームページ．http://www.ohcw-tmd.com/research/ohat.html（2025.11.10アクセス）

（2）体位変換時に伴う回路閉塞・気管カニューレの計画外抜去への注意

気管カニューレの構造として、気管カニューレにかかる張力が干渉されにくく、挿入部や固定部に直接張力がかかりやすい構造となっており、回路閉塞・気管カニューレの計画外抜去が生じやすいです。そのため、体位変換の際には、介助者で役割分担をして、「誰が何を担当し、どのように体位を整えるか」、声をかけ合いながら実施します。
まず、カニューレホルダーの緩みがないかを確認します。体位変換前に吸引を行い、体位変換を行う際は、可能な限り2人で行います。気管カニューレを保持し、療養者の呼吸状態と人工呼吸器のアラームや換気量を観察しながら実施します。
体位変換後は、回路の閉塞や屈曲がないか確認し、気管カニューレに負担がかからないように固定し、姿勢を整えましょう。体位変換によって気道分泌物がある場合は吸引をします。

（3）バッグバルブマスク（蘇生バッグ）の使い方