Part3栄養剤投与時のポイントと感染防止

西山医院院長
西山 順博

2021年4月更新(2020年5月公開)

1.感染を防ぐための胃瘻(いろう)カテーテル汚染対応

1)経腸栄養剤注入中の栄養ライン管理

経腸栄養剤は、缶やバッグに入っています。バッグ型製剤の中にはバッグのまま吊り下げて直接栄養管につなげる「RTH製剤」があります。RTHは“Ready To Hang(吊り下げ式)”の略で、イルリガートルに移す必要がないため無菌的に投与できます。それ以外の缶やバッグの製品は、イルリガートルに移し替える作業が発生するため、イルリガートルを清潔に保つことが必要です。それに加えて、イルリガートル内で長時間曝露されることによるリスクも危惧されます。そのため、蓋があるものは蓋をして、3時間以内で滴下することが望ましいとされています。
また、“追加水”はけっして混合することなく、経腸栄養剤の注入前に単独で投与し、30分経過してから経腸栄養剤の注入を開始することが推奨されています。

2)注入後の洗浄・消毒方法

イルリガートルや栄養管、接続チューブ、カテーテルチップなどは、本来は使い捨てが望ましいのですが、特に在宅においてはリユースになっているのが現状です。感染対策の意味合いからも、しっかりと洗浄し、十分な塩素系消毒剤による消毒が必要です。当院で指導している洗浄・消毒の手順を図1に示しました。

図1洗浄・消毒方法

①イルリガートル、栄養管、カテーテルチップの洗浄

  • 物品は食器洗い用の洗剤で洗い、水でよくすすぎ、しっかり自然乾燥させる
  • 1日1回は消毒液中に完全に沈め、1時間浸け置き消毒する
  • 蓋の付いた容器に消毒液を入れて物品を投入し、しっかり浸け置きできるようにする
  • 消毒用ミルトン®の場合

ミルトン®(0.01%次亜塩素酸ナトリウム)を水で80倍に薄めてミルトン®溶液をつくります(例:ミルトン®50mLに対し水4L)

②酢ロック

  • 経腸栄養剤注入や薬剤投与が終了した1日の最後に、20mLの白湯でフラッシュした後、酢水を充填する方法
  • 洗浄・殺菌効果がある酢を水で薄めた酢水(酢:水=1:9)をチューブ型の胃瘻カテーテル内に充填する
  • 注入口から10~20mLの酢水を注入し、クランプしたままキャップを締めると充填できる
  • 汚染してからでは遅いので、製品が新しいときから行う
  • 酢ロックの手順

3)接続コネクタの注意点

経腸栄養の接続コネクタは、2019年から国際基準化されたものへの移行が進められています(図2)。従来の接続コネクタより細く、やや複雑な構造になっていることから、手洗い洗浄では不十分で、ブラシ等を使用しての洗浄が必要となります。経腸栄養患者さんは、免疫力が低下している方やPPI(プロトンポンプ阻害薬)等の胃酸を抑える薬剤を服用している方も多くいます。医療材料は、哺乳瓶を洗浄消毒するレベルで管理することが望まれます。

図2接続コネクタの国際基準化

図提供:一般社団法人日本医療機器テクノロジー協会
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)Webサイトより引用
https://www.pmda.go.jp/files/000223250.pdf

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