Part4ムリ・ムダのない口腔ケアの
「基本的テクニック」

兵庫医科大学歯科口腔外科学 主任教授
岸本 裕充

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2020年6月公開

1.すべての患者の口腔ケアに共通すること

ここでは、すべての患者に共通した口腔ケアの基本的な方法を示します。
経口摂取している患者さんであれば、食物を摂取時の粘膜との摩擦により、古くなった粘膜上皮が剥がれて新陳代謝されます。また、摂食の刺激で唾液の分泌が促進され、口腔が洗浄されます。
絶食中であれば、上記の「口腔の自浄作用」の低下を補うために、基本的な口腔ケアの「ブラッシング」「含嗽」に加え、以下を意識する必要があります。

  • 粘膜ケア
  • 保湿
絶食にした分、回数を増やす
(または、質を高める)

1.必要物品

口腔ケアを行う際に使用する主な物品を図1に示します。

図1口腔ケアに使用する主な物品:歯があれば必須

歯磨き(ブラッシング)に使う物品

①歯ブラシ
②ワンタフトブラシ
③吸引できる歯ブラシ
④歯間ブラシ

歯ブラシ
  • ヘッド:小さめ(奥まで届きやすい)
  • 硬さ:普通(出血しやすい場合はやわらかめ)
ワンタフトブラシ
  • 歯頸部や孤立歯のブラッシングに用いる
  • 通常の歯ブラシで到達しにくい部位のブラッシングができる
吸引できる歯ブラシ
  • 歯垢の除去と同時に吸引を行える
  • 吸引装置につないで吸引する
歯間ブラシ
  • 歯間部の清掃に使用する
  • 歯間空隙の大きさに合わせてサイズを選択する
  • ブラッシングに時間をかけられない状況では、大きめのヘッドの歯ブラシで大まかに磨く、という考え方もある

粘膜ケアに使用する物品:絶食中には必須

⑤綿棒
⑥スポンジブラシ
⑦くるリーナブラシ
⑧モアブラシ
⑨吸引くるリーナブラシ

  • ⑤と⑥は単回使用(使用ごとの使い捨て)
綿棒
「綿球+止血鉗子」でも可
  • 使用感は非常にやわらかいものの、表面が汚染されるとすぐにツルツルになり清掃効果が低下するため、適宜交換する
  • 止血鉗子は綿球を把持しやすいため、ピンセットより安全に行いやすい
スポンジブラシ
  • 頬・舌・口蓋の清拭に使用する
くるリーナブラシ
  • 毛が束になっており、清掃しやすい
モアブラシ
  • 毛が細かく密になっており、やわらかい使用感
吸引くるリーナブラシ
  • 吸引が同時に行える

その他の物品

⑩洗浄用シリンジ+洗浄針
⑪ディスポーザブルの排唾管
⑫プラスチック製口角鉤

洗浄用シリンジ
  • 10mLもしくは20mLの洗浄用シリンジで、歯・粘膜を洗浄する
  • 洗浄針のかわりに5cm程度に切断した吸引カテーテル等を接続して用いることもある
  • 汚染物が残りやすい部位に到達でき、効率よく洗浄できる
排唾管
  • 唾液や汚染物を吸引する
  • 自由な角度に屈曲でき、コシがあるため片手で咽頭部まで吸引しやすい
  • 軽く曲げて口角に引っかけておくこともできる
プラスチック製口角鉤
  • 頬粘膜と口唇を排除するために使用する
  • 視野の確保に有効

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