Part2“よい姿勢”のためには適切なサポートが必要

株式会社アクセスプランニング
チーフコンサルタント / シーティング・スペシャリスト
山崎泰広

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2021年6月公開

(1)“どうせ姿勢は崩れてしまう”の考えを改めよう

"よい姿勢"とは、快適で残存機能を最大限に活かして二次障害を起こさない姿勢です。高齢者や重度障害者は、「車椅子によい姿勢で座らせても、姿勢が崩れてしまう」「何度座り直させても姿勢は崩れてしまう」と考える人も多いです。しかしそれは、車椅子の設定が間違っていることや、間違った座らせ方をしているからです。

健常者であれば、“背もたれ”がなくても、よい姿勢で座ることができます。食事のときなどに背もたれに寄りかからずに座ったりしますが、それができるのは自分自身を身体の内側から支えるための筋肉が十分にあるからです。骨盤の上に肩と頭が位置する、バランスのとれたよい姿勢を自然にとれるのです。
食事のときは骨盤よりも肩と頭は前方に移動するので、“骨盤の上に肩と頭が位置するバランスのとれたよい姿勢”から、前後左右に移動したり、戻ったりすることができます。
しかし障害や麻痺があると、自分自身を支えるための十分な筋肉がありません。また、高齢者は筋力が衰えていて、やはり自分自身を十分に支えることができません。その結果、骨盤・肩・頭のバランスは崩れ、悪い姿勢に陥っています。
このような、筋肉・筋力が十分でない障害者や高齢者を、サポートもなしに健常者と同じように座らせようとするのは困難です。従来の方法(残存機能と、最低限の機能しかない車椅子)では、姿勢が崩れて当然なのです。

(2)身体を支える筋肉の代わりになるものがあれば、姿勢を維持できる

障害者や高齢者が身体に害を受けない“よい姿勢”で座るためには、失われた、または衰えた筋肉の代わりに身体を保持するものが必要です。それがシーティングで使用するさまざまな用具(コントゥア・クッション、バックサポート、体幹サポートなど)です。
障害や身体の状態によって必要なものは異なりますが、まずは国際的に「一次サポート」と呼ばれるクッションとバックサポートを提供して適切に設定することで、健常者のようによい姿勢で快適に長時間座ることが可能になります。実際、褥瘡予防クッションと適切な姿勢によって、健常者よりも長時間座ることが可能なのです。
その結果として、座り直させることはほとんど必要なくなります。長時間快適に座っていられることで移乗回数が減り、介助・介護の軽減も可能になるのです。ふさぎ込みがちだった患者さんが、姿勢を整えたことで表情も明るくなり、離床時間が延びてADLもQOLも向上した症例は数えきれないほど多くあります。

●ポイント●

シーティングで使用するクッションやバックサポートは
失われた(衰えた)筋肉の代わり

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