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2023年4月公開
Part4 がん緩和ケアで見られる症状④
動くのがつらくて困っています
Key point
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進行がん患者さんの動くのがつらいという困りごとの背景には、主に、倦怠感、眠気、呼吸困難、嘔気・嘔吐などの症状がみられます。本項では、がん関連倦怠感に着目して述べていきます。
がん関連倦怠感(CRF)とは
小林 成光
聖路加国際大学大学院看護学研究科 講師
がん看護専門看護師
小林 成光
聖路加国際大学大学院看護学研究科 講師
がん看護専門看護師
がん関連倦怠感(cancer related fatigue:CRF)とは、普段の活動とは関係なく日常生活を妨げる、がんやがん治療に関連した身体的、情緒的、認知的な疲弊や疲労感であり、苦痛を伴う持続的かつ主観的な症状と定義されています1。CRFは、進行がん患者さんのほとんどの方が経験する最も頻度の高い苦痛症状であり2、身体的な側面だけでなく、日常生活の活動や社会参加、認知的な活動(記憶力の低下や集中力の低下)など、心理的・社会的な側面にも大きな影響を及ぼし、患者さんのQOLを著しく低下させます3,4。
CRFは、一般的に体験するような睡眠不足や過労によって引き起こされる倦怠感と比較して、重度かつ持続性があり、衰弱しやすく、十分な睡眠や休息によっても緩和が難しく、予後1か月頃から、急速に程度が強くなるという特徴があります。
CRFのメカニズムは十分に解明されていませんが、原因は、貧血、不眠、脱水など多岐にわたります。代表的な原因となるものを図1に示します。終末期では、これらの原因がいくつも重なり合い複合的に生じていることが多いです。
図1 CRFの原因
文献2を著者が翻訳
CRFは、主観的な症状であるため患者さんからの症状の表出が重要になりますが、患者さんの中には、「がんが進行しているのだから倦怠感があるのは当たり前」と思い、その症状を訴えない方も少なくありません。また、医療者の中でも、その他の苦痛症状への対処が優先され、CRFへの意識が低く見逃されやすい症状と言われています1,5。そのため、日々の様子を注意深く観察し、医療者からCRFについて気にかけることが重要です。
CRFは、一般的に、だるさ、身体の疲れやすさを指しますが、さまざまな言葉で表現されます。例えば、本項のテーマである「動くのがつらい」の他に、「なんとなく調子が悪い」「体が重たい」「気力が出ない」などです。医療従事者は、このような患者さんの言動を捉えられるよう意識してかかわることが大切です。
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