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2024年4月公開
在宅ケアで重要性が増している「緩和ケア」「エンドオブライフケア(EOLケア)」とは
池邉 太一
医療法人社団悠翔会 副理事長
悠翔会在宅クリニック春日部 院長
佐々木 淳
医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長
池邉 太一
医療法人社団悠翔会 副理事長
悠翔会在宅クリニック春日部 院長
佐々木 淳
医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長
近代医学が確立した20世紀後半には、がんやさまざまな慢性疾患による死亡が増加し、ヒトの死をめぐる状況、環境は大きく変化してきました。
1990年にWHOで初めて定義された緩和ケアは「治癒を目指した治療が有効でなくなった患者さんに対する積極的な全人的なケアである」1とされました。この定義や歴史的な経緯から、緩和ケアは病気が治らない状態、末期がんの患者さんを対象としたケアであるという考え方が定着しました。
このように、がんを中心とした緩和ケアが拡大していく一方、日本を含めた先進国では高齢化の進行や生活習慣病を背景として慢性疾患が増加しているという社会的背景もあり、非がん患者における緩和ケアのニーズも増加しています。
英国で行われた大規模後ろ向き研究2によって、非がん患者も、死亡前に多くの苦痛を体験しており、その苦痛の頻度はがん患者と比較してもけっして少なくないことが明らかにされました。米国ではSUPPORT研究という大規模介入研究をきっかけに、非がん疾患の緩和ケアが推進されました3。その後、高齢者医療と緩和ケアを統合する考え方として「エンドオブライフケア(EOLケア)」という概念が生まれました。
このように、今や緩和ケア・EOLケアは、疾患・対象を問わず、そして場を問わない普遍的なケアとして発展しています。時代の疾病構造に基づいて医療とケアのニーズは常に変化するものですが、差し迫った死、いつか来るべき死について考える人が、いのちを終えるまで最善の生を生きることができるように支援することが重要だと思います。
緩和ケアという言葉は世の中に広がってきてはいるものの、余命の短いがん患者が受けるものと理解されることが多く、さらにEOLケアという言葉自体はまだ十分に広がりを持っているとは言えません。今後、緩和ケア・EOLケアの概念を広く知ってもらうために、私たちは在宅医療にかかわるものとして、一層の取り組みを進めることが重要と考えています。
©DEARCARE Co., Ltd.