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2025年3月公開
最期の1週間を見逃さない:「そろそろかな…」を具体的に考える方法
~臨終期の予後予測ツールの活用~
細井 崇弘
細井 崇弘
地方独立行政法人茨城県西部医療機構 筑西診療所 医師
地方独立行政法人茨城県西部医療機構
筑西診療所 医師
臨終期の患者さんにはさまざまな身体徴候が現れます。現場で「そろそろかな」と感じることがあっても、「あとどのくらいか」を具体的に考えるのは難しいものです。しかし、残された時間を正確に把握できれば、患者さんと家族が最期の時間を後悔なく過ごせるようサポートできます。
ここでは、死が差し迫る時期にみられる身体のサインと、「3日以内の死亡」を予測するためのツールについて、わかりやすく解説します。
1.死亡直前期にみられる主な身体徴候
臨終期には、身体にさまざまなサインが現れます。死が差し迫ったときにみられる徴候を「晩期死亡前徴候」といい、以下のものがあります1。
・橈骨動脈(手首の動脈)が触れなくなる
・死前喘鳴(喉の奥でゴロゴロ音がする)
・下顎呼吸(顎を大きく動かして呼吸する)
・尿量の減少(1日の尿量が200mL以下になる)
・末梢チアノーゼ(手足の先が青くなる)
これらのサインは、すべての患者さんに現れるわけではありませんが、出現した場合は死亡する可能性が非常に高いことを示します。
2.3日以内の死亡を予測するツール
臨終期のサインをもとに、「3日以内の死亡」を予測する2つのツールを紹介します。どちらも日本の緩和ケア病棟での研究から開発されました2。
このツールは、ADLの低下、尿量の減少、声かけに対する反応の低下という3つのシンプルな要素で構成されています。
図1 決定樹モデル
文献2を参考に作成
●Palliative Performance Scale(PPS)
PPSは、患者さんの全身の機能や活動レベルを評価するスコアです。表1を左から順に見て、患者さんに最も合うレベルを決定します。PPS≦20は、終日臥床し、ほとんど自力での活動ができず、経口摂取が数口以下の状態を指します。
表1 PPS
% | 起居 | 活動と症状 | ADL | 経口摂取 | 意識 レベル |
---|---|---|---|---|---|
100 | 100%起居している | 正常の活動が可能 症状なし |
自立 | 正常 | 清明 |
90 | 正常の活動が可能 いくらかの症状がある |
||||
80 | いくらかの症状があるが、努力すれば正常の活動が可能 | 正常 または 減少 |
|||
70 | ほとんど 起居している |
何らかの症状があり、通常の仕事や業務が困難 | |||
60 | 明らかな症状があり、趣味や家事を行うことが困難 | 時に介助 | 清明 または 混乱 |
||
50 | ほとんど座位か 横たわっている |
著明な症状があり、どんな仕事もすることが困難 | しばしば介助 | ||
40 | ほとんど臥床 | ほとんど介助 | 清明 または 混乱 または 傾眠 |
||
30 | 常に臥床 | 全介助 | 減少 | ||
20 | 数口以下 | ||||
10 | マウスケアのみ | 傾眠 または 昏睡 |
左から順に見て、患者に最も当てはまるスコアを決定する
文献3より引用
●尿量の減少
尿量が1日200mL以下になると、3日以内に亡くなる可能性が高くなります。自宅などで正確な測定が難しい場合は、おむつの重さを前後で比較して推測するとよいでしょう。
●声かけに対する反応
意識が低下し、声をかけても反応がない状態です。
これらを組み合わせて、例えば「PPSが20以下」、「尿量が200mL以下」、かつ「声かけに反応しない」場合、80%の確率で3日以内に死亡する可能性があると予測されます。
(2)P3-Did スコア
P3-Didスコア(ピースリーディド、あるいはピースリーディーアイディーと呼ぶ)は、死亡前に現れる10種類の徴候を中枢神経、循環、呼吸、筋骨格系の4つのカテゴリーに分類し、各カテゴリーに該当する徴候があれば1点を加算する方法です(表2)。
●予測の例
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