2017年5月公開
弾性ストッキングは弾力性を持った特殊なストッキングです。これを着用して締めつけることにより下肢の静脈還流を改善します。足関節部の圧迫圧が最も高く、上に向かうほど圧力が弱くなる段階的圧迫圧の構造になっています。これによって足先から心臓への血液の戻りを助け、下肢静脈瘤のうっ血症状を改善します。静脈瘤では弱圧(20mmHg前後)または中圧(30mmHg前後)のものを使用します。パンティストッキング型、ストッキング型、ハイソックス型などがあり(図5)、足先指先部分が開いたものと閉じたものがあります。下肢静脈瘤では基本的に快適性や装着の容易さからハイソックス型を選択することが多いようです。複数のメーカーから発売されており、サイズ(SS・S・M・L・LLなど)や圧迫圧(強・中・弱など)の種類があり、それぞれの体格や症状に応じて選択します。
弾性ストッキングは静脈瘤の痛み、だるさなどの自覚症状および浮腫や皮膚炎などの他覚症状を改善し、生活の質を高めるために使用します。無症状の患者さんでは着用による静脈瘤の悪化を食い止めるなどの効果に関しては、明らかなエビデンスはありません。
患者さんには圧迫療法としてのストッキングの特徴やその必要性だけでなく、その着脱方法に至るまでの十分な説明が必要です。例えば、慣れるまでは簡単に履けるものではないこと、補助器具や台所用ゴム手袋などを用いると比較的履きやすいこと、などを説明しておくことが重要です。指導が難しい場合は、専門クリニック、病院の先生や弾性ストッキング・コンダクターの看護師さんなどに指導してもらうのもいいでしょう。
また弾性ストッキングは、フォーム硬化療法、血管内焼灼術、ストリッピング手術(「5. 専門施設における治療の紹介」を参照)後の合併症予防や術後の経過観察、うっ滞性皮膚炎など慢性皮膚病変のある患者さんにも使用されます。また、手術を施行できない患者さんもストッキングの着用によるうっ血症状の改善を試みます。一方、クモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤や伏在型でも全く症状がない軽度の下肢静脈瘤に使用する必要はありません。
適切な効果を得られる弾性ストッキングを選択するには多少のコツと慣れが必要になるため、症状のある下肢静脈瘤患者さんでは専門医への問い合わせが望まれます。「自宅に持ち帰ったが、自分では履けなかった」「購入したが、結局履かなかった」などの例があり、専門医や専門看護師による適切な指導が重要となります。最近ではフィッティングに関して専門的な知識を持つ弾性ストッキング・コンダクターの資格を有する医師や看護師が増えてきたので、相談するのもいいでしょう(図6)。
下肢静脈瘤を正しく見極める
特集:下肢静脈瘤における医療用弾性ストッキングを用いた圧迫療法
-医療用弾性ストッキングの効果と使用目的 監修 孟 真先生
専門医施設リポート
もともと私は消化器外科が専門でしたが、たまたま心臓血管外科外来の手伝いをするようになり、そこで下肢静脈瘤の患者さんを診察することになりました...
私が赴任した1993年頃は、下肢静脈瘤の認知度がまだ低く、この疾患に悩まされている患者さんは何科を受診したらいいか分からないという時代でした...
開業は2000年6月です。最初は「白石心臓血管クリニック」という名前で、循環器内科と心臓血管外科を標榜していました...
監修
2019年6月現在