クリニックに下肢静脈瘤を疑う患者さんが来たら?監修孟 真先生(横浜南共済病院 心臓血管外科 部長)、松原 忍先生(横浜南共済病院 心臓血管外科 医長)

1)診断は視診、触診が基本 - 症状がなければある程度は経過観察も可能です。
視診、触診を行い、下肢静脈瘤による症状の有無を確認します。全く無症状であれば急いで専門医を受診する必要はなく、ある程度の経過観察も可能です。全ての下肢静脈瘤で侵襲的な治療が必要なわけではありません。一方、肥満は下肢静脈瘤の悪化因子となりますのでクリニックでは減量、運動などの指導を行うことが求められます。手術適応例では術前にできるだけ実施されていることが望ましく、術後も静脈還流不全が残存する可能性があるので継続するように指導します。
また、視診では静脈瘤の形状を確認します。重症化しうる伏在型静脈瘤は多くの場合は拡張した大伏在静脈や小伏在静脈を触知可能です。しかし肥満者では静脈瘤が見えにくく伏在静脈も触れにくいため疼痛などの自覚症状、浮腫やうっ血性皮膚炎だけが診察の際に見つかることもあります。さらに、疼痛や熱感などの症状がある患者さんでは、立位のままじっとしていることをなるべく避ける、座位となるときは椅子の前に椅子や台を置いて両足をのせておく、夜間には枕などを用いて軽く下肢を挙上するなどの生活指導(図4)、皮膚炎や乾燥肌などの皮膚症状に対する保湿剤の使用や不潔になりやすい足部の保清などスキンケアの指導も重要となります。

図4 クリニックでの生活指導

ちょっと急ぎ足の歩行やスイミング、座位となるときは椅子の前に椅子や台を置いて両足をのせておく、夜間には枕等で下肢拳上するなど。

2)クリニックから専門医への紹介
全く症状のない経過観察例以外は、一度は専門医に紹介することが望ましいでしょう。最近は下肢静脈瘤の専門医が増えていますので、症状がなくとも心配であれば専門医に診察してもらうのがよいでしょう。地域によっては基幹病院や総合病院でも下肢静脈瘤を診療しており、クリニックの医師が患者さんを紹介する地域連携がうまく機能しているケースもあります(例:広島市。詳しくは「7.施設リポート 広島逓信病院」を参照)。患者さんが専門施設の受診を終え、みなさんのクリニックに戻った後、自覚症状や皮膚症状が出なければ過度に心配する必要はありません。ただし、血栓性静脈炎などの炎症を起こした場合は、可能なら鎮痛剤による疼痛管理を行い、弾性ストッキングや包帯での圧迫療法を試みます。手術適応などの検討を行うために、再度、専門医の受診が必要となります。
また下記の弾性ストッキングがうまくはけない患者さんも、専門医の方で解決されることもあります。

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監修

孟 真先生(横浜南共済病院 心臓血管外科 部長)
松原 忍先生(横浜南共済病院 心臓血管外科 医長)

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