専門医施設リポートお茶の水血管外科クリニック院長 広川 雅之先生

最初に先生が下肢静脈瘤の治療に携わるようになったきっかけとお茶の水血管外科クリニックを開設するまでの経緯を教えてください。
もともと私は消化器外科が専門でしたが、たまたま心臓血管外科外来の手伝いをするようになり、そこで下肢静脈瘤の患者さんを診察することになりました。2000年に東京医科歯科大学血管外科に入局してからは、血管外科を専門とし、特殊な局所麻酔(TLA麻酔)による日帰りのストリッピング手術を数多く手がけるようになりました。下肢静脈瘤の治療方法としては当時、ストリッピング手術が主流でしたが、同手術を局所麻酔により日帰り手術として行うことは珍しかったです。2002年頃からは血管内レーザー治療を始めましたが、その頃はまだ保険適応はありませんでした。その後、2005年12月にお茶の水血管外科クリニックを開設し、現在に至ります。
開設した当時、下肢静脈瘤専門のクリニックというのは多かったのですか。
心臓血管外科を専門とするクリニックは多くありましたが、下肢静脈瘤を専門に診療するクリニックはほとんどありませんでした。レーザー治療が保険診療になってから、血管外科クリニックが急速に増えました。
受診される患者さんの年齢、主訴などを教えてください。
50歳代以上の患者さんが多く、平均年齢は60歳ぐらいです。80歳代や90歳代の方もいます。主訴としては下肢の血管のコブ、足のだるさやむくみ、痛みです。特に症状がなく、「見た目が気になる」、「とにかく心配で受診した」と言う患者さんも多く来院されます。
どのような方が下肢静脈瘤になりやすいのですか。
立ち仕事の人が多いです。具体的には、調理師や寿司職人、理容師や美容師など、立ったままで足を動かさない職業の人に多く見られます。立ったままだと足の筋ポンプ作用が働かず、足に血液が溜まり静脈の圧力が高い状態が続くことが、静脈瘤ができやすくなる原因です。パソコン作業などで長時間座った状態でいるデスクワークの人も、足を動かすことが少ないので下肢静脈瘤になりやすいです。男女比は1対2と、男性より女性の方が多く、特に50歳代から60歳代の女性に多く見られます。また、親や親戚、兄弟姉妹に発症している方が多くいるなど下肢静脈瘤は遺伝する傾向があります。
手術が必要となる重症な患者さんは多いですか。また、下肢静脈瘤になると必ず治療が必要ですか。
われわれが重症だと診断する患者さんは全体の3~5%ですが、患者さん本人が重症だと思い込んで受診するケースは多いです。患者さんが最初に受診してきた際に「血栓ができ脳梗塞や心筋梗塞になる」「足を切断しなければならない」など、不安になるようなことをTVや雑誌などで言っていたという話を聞きます。このような間違った情報が広まっているのは問題で、不要な治療や手術につながっています。下肢静脈瘤の患者さん全員に治療が必要なわけではありません。
軽症の患者さんには圧迫療法を行うことも多いと思いますが、弾性ストッキングはどのような患者さんに有用ですか。
症状があってもなんらかの事情ですぐに手術ができない人や、できるだけ手術をしたくない人には有用です。また、1日中立ったままの状態で仕事をする調理師や美容師さんなどには予防的に履くことを勧めています。妊婦も予防的に履いた方がよい場合があります。弾性ストッキングは、正しく選んで正しく着用しなければ効果はありません。専門医を受診して適切な医療用ストッキングを選んでもらうことが重要です。
具体的にはどのような説明や指導を行っていますか。
詳しい説明もなく弾性ストッキングを渡しても、患者さんは履き方が分かりません。自宅に帰って履かなくなった、サイズが合わずきつくて痛みを感じたということになりかねませんので、適切なサイズとタイプを選択し、履き方やトラブル時の対処などの細かい指導を行っています。また、むくみの症状が強い人がいきなり弾性ストッキングを履いても効果はありません。マッサージや弾性包帯を用いてむくみを除去した後で履くのが理想的です。
とにかく心配で受診したという患者さんが多いということですが、心配される患者さんにはどのような説明をされますか。
下肢静脈瘤は決して恐ろしい疾患ではありませんので、「とにかく心配ありません」と声をかけて、患者さんに安心してもらいます。治療が必要な場合には、むくみが取れるなどの治療の結果と治療に伴う危険性をきちんと説明した上で、納得して治療を受けていただきます。
下肢静脈瘤を診療する上でやりがいを感じるところはどこですか。
きちんと治療をすれば必ず治るということに尽きます。患者さんが「足が軽くなった」「むくみが取れた」と喜んでくれる顔を見たときにやりがいを感じます。
下肢静脈瘤の最新治療法を教えてください。
医療用の瞬間接着剤を血管内に注入し、静脈の血管壁をくっつけて血管を塞ぐグルー(糊)治療と呼ばれる治療法が下肢静脈瘤における最近のトピックスです。いずれ日本でも保険収載されて、血管内レーザー治療よりもさらに低侵襲な治療として普及していくと思います。
内科やかかりつけ医の先生から下肢静脈瘤の患者さんを紹介されることが多いと思いますが、最後にそのような先生にメッセージをいただけますか。
まずは患者さんを診させていただければと思います。その上で必要な検査などを検討しますので、「こういう検査をしておかないといけないのではないか」「こんな軽症の患者さんを紹介してよいのか」「血管に疾患があるかどうか分からない患者さんを紹介してもいいのか」など心配される必要はありません。下肢静脈瘤の疑いがある患者さんがいれば、気軽に相談してほしいと思います。

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監修

孟 真先生(横浜南共済病院 心臓血管外科 部長)
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