専門医施設リポート白石血管外科クリニック院長 白石 恭史先生

最初に白石血管外科クリニックの開設からこれまでの経緯を教えてください。
開業は2000年6月です。最初は「白石心臓血管クリニック」という名前で、循環器内科と心臓血管外科を標榜していました。循環器内科の領域では、主に高血圧や慢性的な心臓疾患を、血管外科の領域では静脈瘤の日帰り手術や深部静脈血栓症の治療をしていましたが、10年余りを経過した頃から、患者数が増えたために待ち時間が2時間近くになることもあり、非常にストレスを感じてきました。そこで、2015年1月から思い切って循環器内科の標榜をやめ、静脈瘤の日帰り治療を中心とした血管外科のみの診療体制に変更しました。クリニックの名前も「白石血管外科クリニック」に変え、それまで診てきた循環器内科系の患者さんは、近隣の先生方に継続加療をお願いしました。
静脈瘤の患者さんの主訴や主な原因、年齢や性別などを教えてください。
当院の受診平均年齢は60歳代です。静脈瘤の発症は年齢とともに増加し、中高年や高齢者に多い疾患ですが、女性では妊娠中に多く発症します。また若い人でも調理師さんや美容師さんのような立ち仕事の方、肥満の人には起こりやすくなります。一般的に男性は皮膚病変が出るほど悪くならないと受診しない傾向があります。
肥満は下肢静脈瘤のリスク因子ということですか。
肥満の尺度であるBMI(Body mass index)の高い人では下肢の動脈流入量が増えてそれが静脈に流入するため静脈の高血圧がおきます。
「下肢静脈瘤では血栓が肺や脳に飛んで致命的になる」と言われて専門医を受診したという話をよく聞きますが、先生のクリニックにもそのような患者さんが来られますか。
クモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤などの軽症の患者さんでも血栓が肺や脳に飛んで死ぬかもしれない、と心配して受診されることがよくあります。しかし、ボコボコした静脈瘤の人でも命に関わるような脳梗塞や肺塞栓症を起こす確率は0.1%未満とされています。まして上記のような軽い静脈瘤の人は致命的な合併症が起こることはなく、決して恐れる必要はありません。深部静脈血栓症・エコノミークラス症候群とは全く違う病気ですので、メディアはこの点を正しく報道することが大事だと思います。
近年、下肢静脈瘤の治療も大きく変わってきていますが、最近の治療法について教えてください。
従来からのストリッピング術に変わって、最近では細いカテーテルやファイバーを血管内に入れて内側から焼いて塞ぐ血管内焼灼術が主流になってきました。血管内焼灼術にはレーザー(波長1,470nm)を用いる方法と高周波(ラジオ波)を用いる方法がありますが、当院ではその両方を行っています。
軽症の患者さんには圧迫療法を行うことも多いと思いますが、弾性ストッキングの指導はどのように行っていますか。
静脈自体にほとんど病変がなくても、むくみやだるさ、こむら返りなどの症状がある方には弾性ストッキングやハイソックスによる圧迫療法が効果的です。その素材ややり方には奥の深いものがあり、たとえばむくみや腫れが強い患者さんでは、圧迫していくうちに脚が細くなるので、最初は調節のきく弾性包帯を使い、その後弾性ストッキングに変えていきます。圧迫療法は続けていくことが大切で、短期間でやめてしまっては効果が不十分です。元気で握力もあり、弾性ストッキングを履くことが苦にならない人は着用を継続してくれますが、筋力が弱く、足の指先まで手が届かない高齢者や一人暮らしで認知症を発症している患者さんでは困難です。家族の人に協力をお願いしたり、患者さんの続けようという熱意を引き出せるように、医師や看護師にも治すんだという熱意と根気が必要です。
医師にも熱意と根気が必要だということですが、患者さんとのコミュニケーションで心がけていること、工夫されていることはありますか。
基本的に患者さんには100点を求めないようにしています。圧迫療法は窮屈さを伴いますので、症状が軽くなってくるとストッキングやハイソックスを履くことがだんだん面倒くさくなってきます。ですから、蜂窩織炎や浸出液などが治まったら、ある程度さぼっても仕方がないことだと思います。しかし、長期間放ってしまうとまた元に戻ってしまうので治療を中断しないように注意喚起します。
下肢静脈瘤では生活習慣の改善なども有用とされていますが、先生のクリニックでは健康維持のためのストレッチや運動についてはどのように指導していますか。
下肢静脈瘤の主な症状である下肢のむくみの原因として足関節の可動域が小さいことが挙げられます。そこで当院では、患者さんにヒラメ筋や腓腹筋、足底筋のストレッチ、爪先立ち運動を指導して、関節や下半身の可動域を広げるようにしています。患者さんにはこのストレッチ法を覚えてもらい、自宅でも実践してもらっています。
長年、下肢静脈瘤を専門に診てこられて、苦労ややりがいを教えてください。
患者さんが「足がきれいになりました」「楽になりました」と喜んでくれるのが一番嬉しいです。
今後、先生が力を入れていきたいこと、取り組んできたいことを教えてください。
下肢静脈瘤をはじめとする静脈うっ滞症候群における動静脈循環バランスについて研究を進めています。下肢の動脈流入量は静脈高血圧の上昇と関連しており、下肢静脈瘤の皮膚病変発生の大きな要因と考えられます。下肢静脈瘤の作用機序についてはまだ解明されていない部分も多く、「なぜ静脈瘤ができるか」という根本的なことがまだ十分わかっていないのが現状で、これからの研究の発展が楽しみです。
最後に下肢静脈瘤を診ることが多い先生にメッセージをいただけますか。
基本的に静脈瘤は命に関わる疾患ではなく、中には治療が必要のない静脈瘤も数多くあります。逆に静脈の異常は軽いのに皮膚病変まで起こしている人もいます。脚になんらかの症状がある方に対してはその原因と治療が必要かどうかの見極めが重要ですので、脚で困っている患者さんがいればご紹介いただければと思います。

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監修

孟 真先生(横浜南共済病院 心臓血管外科 部長)
松原 忍先生(横浜南共済病院 心臓血管外科 医長)

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