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2024年1月公開
若年性パーキンソン病の特徴:発症年齢による臨床経過
秋山 智
広島国際大学 教授
日本難病看護学会 代表理事
秋山 智
広島国際大学 教授
日本難病看護学会 代表理事
パーキンソン病は加齢とともに人数が激増するため、高齢者の病気と認識されやすいのですが、実際には若年層にも発症者はいます。40歳以前に発症する場合を、特に「若年性パーキンソン病」と言います。
現在40歳未満の患者数は、14万余のうちのわずか158人です(既出・表1)。ただし、これはホーン・ヤールの重症度分類のⅢ以上の人数なので、重症度分類Ⅰ、Ⅱの患者数を加えると200~300人程度かと推定されます。
若年性パーキンソン病という病名がつくのは、あくまで発症時の年齢であり、患者さんの人生はその後も続くので40歳をはるかに超えて老年期にさしかかっている若年発症者も多く存在します。その人たちの病名は年をとっても若年性パーキンソン病なので、若年性の人が必ずしも若年者ではないことには注意が必要です。
若年性パーキンソン病の主な症状は、基本的には普通のパーキンソン病と同じです。すなわち、振戦(安静時)、無動/寡動(動作が緩慢であまり動けない、表情が乏しいなど)、筋固縮(筋肉や関節がガクガクとこわばる)、姿勢反射障害(体のバランスが崩れて転びやすい)などが代表的な運動症状です。
ただし、若年性では、高齢発症者に比べていくつかの特徴があります(表1)。
例えば、初期に振戦が出るのは比較的少ないと言われており、無動/寡動に関連した歩行障害のほうが目立つことが多いのです。また、体幹がどちらかに傾く傾向にある人が多いのですが、転倒するほどバランスを崩すことはあまりありません。
薬(レボドパ)の反応が大変よく、当初は使用量も少な目でコントロールできます。しかし、若いがゆえに投与期間が長期に及ぶことから、次第に薬の効果が減弱し、日内変動(ウエアリングオフ現象、オンオフ現象)、不随意運動(ジスキネジア)といった運動合併症が目立ってきます。これは高齢者に比べて顕著です。
病気の進行は高齢者に比べて比較的穏やかで、数十年以上かかってゆっくりと進行していくのが特徴です。また、高齢患者で見られやすい認知面での障害も少ないと言われています。
表1 若年性パーキンソン病の特徴
・高齢者に比べて、病気の進行がゆるやか
・初期症状としては歩行障害が多く、振戦は少ない
・薬(レボドパ)が大変よく効き、薬の使用量は少なくてすむ
・長期の使用により、薬による日内変動やジスキネジアが出やすい
・睡眠効果がはっきりしている
・自律神経症状が出やすい
・物忘れなど認知機能障害はあまり認められない。
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