2024年5月公開
Part1 はじめに・在宅療養者とかかわる際に最初に行うこと
谷口 珠実
山梨大学大学院総合研究部医学域
看護学系 看護学講座
看護学科長、教授
谷口 珠実
山梨大学大学院総合研究部医学域
看護学系 看護学講座
看護学科長、教授
「在宅における排尿管理」とは、「排尿の機能を最大限維持しつつ、療養者(要介護者)と介護者または同居者が、ともに快適に排泄できる管理方法」のことを意味します。
施設内で医療や介護の専門職であるケア職が排尿を管理する場合には、患者や入所者が最大限機能を維持することを考えて、アセスメント後にケア計画と実践を行うことができます。しかし、在宅療養の場では、療養者(要介護者)と介護者または同居者は、ともに生活を営む生活者であり、介護者の生活や健康を維持することが並行して保たれなければ、療養生活を維持することはできません。在宅療養生活の継続が困難になる主な原因には、認知症の悪化や、排泄問題の悪影響から、介護者が対応に困難になり施設入所に至ることなどが報告されています。
在宅における排尿管理では、要介護者と介護者の双方がともに療養生活を維持できる、排泄管理を考えます。現在、老老介護、認認介護が増えていて、老人同士、認知症同士であっても、お互いが支え合って生活を営み続けるためには、どうあるとよいかを検討することが必要です。
在宅では無理のない介護がとても重要ですが、介護の方法によっては要介護者の機能低下につながる場合もあります。このため、要介護者の機能を維持し、介護者の負担をできるだけ少なくできるバランスを考える必要があります。介護者への労わりも大切ですが、時に重要な情報源となるため、短時間の訪問時間では観察できない状況について、情報を得ることが大切です。
在宅で療養する人と家族介護者に対して、排泄に関する相談のうち、在宅療養生活者の排泄の相談は多岐にわたります。例えば、頻尿への対処方法や排尿誘導を家族に指導すること、尿道留置カテーテルの管理、おむつの交換、排泄物の付いた皮膚のスキンケアの方法など、在宅介護ではさまざまな相談を受けます。
そこで、本特集では、在宅療養生活を維持するために、頻尿の対応や排尿誘導を家族に指導するための基本的なアセスメントと尿道留置カテーテルの管理について解説します。
まず、最初に大切なのは、ケア者がかかわる目的を明確にすることです。
最初に療養者と家族が感じている問題や課題と、解決する先の目標を明らかにするための問診を行います。この問題解決や課題を目指して、排尿に関連する情報収集を行い、アセスメントを進めていきます。
在宅療養者(要介護者)と介護者の双方別々に、「排尿で困っていること」を聴いていきます。
困っていることは、立場が違うとまったく異なることもあります。
例えば、要介護者は「喉が渇いて水を飲んでも渇きがおさまらない」ということを問題に感じている一方で、介護者は「何回もトイレに行く(またはトイレに行きたがる)」、つまり頻尿や尿意が頻回にあることに困っているという問題を感じているという、捉え方の違いもあります。
このため、要介護者が「問題」に感じていることと、「どのような状態が望ましいと考えているか」について明確にすることが必要です。そして、介護者が考えている「問題」と「望ましい状態」についても明確にします。双方の問題と望ましい状態をすり合わせ、解決の方向性を検討します。
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