2024年5月公開
Part2 排尿の問題に対する情報収集とアセスメント~排泄動作に影響する、運動機能と認知機能の情報の詳細
谷口 珠実
山梨大学大学院総合研究部医学域
看護学系 看護学講座
看護学科長、教授
谷口 珠実
山梨大学大学院総合研究部医学域
看護学系 看護学講座
看護学科長、教授
在宅療養の場で介護者から望まれるのは、要介護者ができるだけ自分でトイレに移動できて排泄できること、療養生活の継続のために排泄のトラブルが少ないことです。
療養者(要介護者)と介護者が訴えた問題になった状況に対して、どのようにアセスメントを進めるか説明します。問題に対する情報収集とアセスメントは一体になって初めて意味が生まれます。
情報収集は、療養者がトイレに行く動作や行為をケア者自ら観察できたことと、家族からの情報を併せて行います。
まず、①できている動作や行為をアセスメントします。このとき、観察する視点を図1に示します。運動機能やトイレへの移動移乗動作と、衣類や下着の着脱動作、座位保持、などが療養者自身で行えるか否かを観察します。排泄に必要な動作や行為が行えない場合には、住環境の見直しや手すりの設置、排泄用具の活用や動作のリハビリなどが必要になります。
そして、②認知機能の低下により、トイレの場所が不明瞭になる、尿意が訴えられない場合には、適切なタイミングで排尿を誘導することが必要になります。尿意を訴えることができるか、トイレの場所が理解できてトイレが正しく使用できるかも評価していきます。
さらに、③下部尿路機能として、蓄尿障害と排尿障害が生じているか否かという視点で情報を整理します。
図1 身体のアセスメント(排泄動作):問題なく「排泄」できるとは?
1)運動機能・認知機能のアセスメント
①排泄動作に必要な運動機能のアセスメントとして、観察、または介護者から情報を得る項目と内容
・トイレ、またはポータブルトイレまでの移動動作:自力、つかまり歩行、介助歩行かどうか
・衣類と下着を下ろす:立位保持、指先と上肢の動き、中腰でのバランス保持
・便器への移乗動作:ゆっくり座ることができるか、大腿四頭筋の筋力が低下して勢いでドスンと座ることはないか
・便器上で座位保持:座位が不安定な場合、いきめず便排出が困難になっていないか
・排泄後、後始末をする:ペーパーが準備できるか、陰部に手が届き適切に拭けているか
・衣類を着けて戻る:手すりなどを利用して座位からの立ち上がり動作が可能か、立ち上がり衣類を着けて整えることが可能か
・手洗い:感染予防のための手洗いが可能か
②排泄行為に必要な認知機能のアセスメントとして、観察、または介護者から情報を得る項目と内容
・尿意を感じたことを自覚できる、介助の必要があれば介護者に伝えられる
・トイレの場所がわかる:不適切な場所で排尿をしていないか、トイレの場所がわからずうろうろ探していないか
・トイレの使用方法がわかる:便座のふたを開ける、便座に着座する、使用後流すことが療養者自身でできるか、介助が必要か
・使用後、元の場所に戻ることができる
2)下部尿路機能のアセスメント
下部尿路機能のアセスメントを行い、蓄尿障害か排尿(尿排出)障害による問題の有無を評価します。
下部尿路機能をアセスメントするためには、問診、質問票、排尿日誌と24時間パッドテスト、残尿測定の情報を分析することが必要です。
©DEARCARE Co., Ltd.